表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界日本奮闘記  作者: 暁海洋介
13/16

第三話 新国家出現

 お久しぶりです。海軍士官です。大学の学祭でサークルの仕事が多忙を極めたため、更新がしばらく出来なかったのをここでお詫びいたします。

 なお、今回は新話を書くにあたり、にしな先生にご協力いただきました。したがって、本話では、にしな先生の案をベースに自分の言葉に書き換えるなどの処置をしております。にしな先生、アドヴァイスや案の作成ありがとうございます。

-―移転歴22年5月-―

訓練のため、ミッドランドの練習艦隊は国を遠く離れた大陸の西側にまでやって来ていた。気象情報では本日、北の方で強い低気圧が有り、荒れるとのことなので、それを避けて航行していた。

 ところが、突然急に風雨が強まったかと思うと、一転してそれが消え、雲一つ無い晴天となった。不審に思ってヘリに周辺を捜索させたところ、北方80kmほどの位置に、それまで存在しなかった大きな島を発見、自分たちが、新たな転移現象に遭遇したことを悟った。


「我が艦隊の北、50マイルに新島発見せり。指示を乞う!」

 ただちに本国へと急報を入れる艦隊。すぐに返信がきて、「対応を協議するので、待機せよ」と命じられた。ところが、すでにヘリが発見されていたらしく、島の方角から、30分ほどでジェット機が、3時間ほどで、十隻ほどの駆逐艦が現れる。


「まずいぞ。包囲される。各艦、警戒を怠るな」

 練習艦隊ゆえに鈍足の艦を連れており、逃げようが無くてすぐ包囲されてしまうミッドランド練習艦隊。意思疎通を試みるも信号の形式が違うため、無線も発光信号も通じない。

 近距離の無線電話は通じたので対話を試みるが、転移現象そのものを知らない相手側は、ミッドランド側の言うことがさっぱり理解出来ない。

 結局、短艇で無理矢理乗り込んで来たのは、彼らミッドランド人によく似た風貌の人間たちだった……。


――1週間後――

 練習艦隊事件であわや、レガルシアの再来登場の危機に見舞われたミッドランド政府は、なんとかこぎつけることが出来た新しく転移してきた勢力との交渉に臨もうとしていた。

 会議室のドアが開き、アルカナ共和国のジョナサン・コールドウェル外務大臣が、随員たちを従えて姿を現す。そのコールドウェルが、日本側の使節団に目をやって、一瞬いぶかしげな表情を見せた。『どういうことだ』と橋本も内心いぶかしんだが、相手に悟られぬよう、顔には出さない。

ミッドランドのシュナイダー外務大臣が、立ち上がって挨拶する。


「先日お目にかかりました、ミッドランド共和国外務大臣、ヴォルフガング・シュナイダーです。本日は、我が国の同盟国たる日本国からの使節団を紹介させていただきます。」

「初めてお目にかかります。日本国外務大臣、ケイイチ・ハシモトです。」

 橋本も立ち上がって挨拶する。ところが、コールドウェルはそれには答えず、驚愕の表情を浮かべると、ゆっくりとシュナイダーに向き直った。


「……シュナイダー殿、これはどういうことですかな」

「どういうこと、とは?」


 シュナイダーが、いぶかしげな表情で問い返す。

「先日伺った話では、ニホン国とは、貴国の同盟国であり、この世界で最も進んだ文明と技術力を持ち、国力の点でも軍事力の点でも、この世界最強の国家である、とのことでした」

「その通りですが……。」

「…では、はっきり伺いましょう。そのような国の外交使節が、なぜ黄色人種なのです?」

「そう言われましても……。我が日本国は、元々黄色人種の国ですが……」

「な!!」


 橋本の発言に、コールドウェルは一瞬絶句し―――次いでその顔に、怒りの表情が浮かべた。

「ふ……ふざけないでいただきたい!」

「ふざけてなどおりませんが……。」

「今の発言の、どこがふざけてないのです!」

「おっしゃる意味が、解りませんが?」

 憤るコールドウェルにシュナイダーと橋本は困惑した表情を浮かべる。


「ふざけているとしか思えませんぞ! 我々を、愚弄しないでいただきたい!」

「とんでもない! このような席で、愚弄などするはずが無いではありませんか!」

「正式な外交の席で、有り得ないことを言う! それでも愚弄していないと言うのですか!」

「有り得ないこと……とは?」

 コールドウェルは顔を紅潮させ、 シュナイダーの質問に答えた。

「有色人種の国が、世界最高の文明と技術を持ち、世界最強国家の地位に着いているですと?! そのようなこと、有り得ないではありませんか! ふざけないでいただきたい!」


「な……。」


 今度は、シュナイダーが絶句する。


「……なぜ、有り得ないのですかな?」

 そこまで言われては、さすがに橋本も黙っていられなかった。それに対し、コールドウェルは彼をキッと睨みつける。


「有色人種は、白人よりはるかに能力的に劣るはずだ! ゆえに、そのようなことは有り得ない! 出て行け! 貴様のような有色人種など、本来、我々と同席する資格は無いはずだ! この部屋に、居る資格は無いはずだ!」


 そう叫び、シュナイダーに向き直る。

「シュナイダー殿! 今すぐ、このけがらわしい有色人種を追い出していただきたい! そして我々に、真実を話していただきたい!」

「とんでもありません! 同盟国からの正式の外交使節を追い出すなど、できるわけがありませんよ。」

「何ですと!」

 シュナイダーの冷静な対応に、コールドウェルの顔に改めて驚愕の色が浮かび―――その表情が、当惑のそれへと変わる。

 かみ合わない会話に、さすがに何か、おかしいと気づいたらしい。

「………つまり、先ほどからの話は、すべて真実だとおっしゃるのですか?」

「そうです、日本国はまぎれもなく、この世界最高の文明と技術力を持つ、この世界最強の国であり―――そして、黄色人種の国です。」

「………それはつまり、この世界の有色人種は、白人と同等の能力を持っている、ということになりますぞ?!」

「そうです。『この世に、個人間の資質の差は有っても、人種間・民族間の資質の差などは無い』。それがこの世界における、一般的な見解です。」

「信じられません! 少なくとも、我々の世界の有色人種は、白人よりはるかに、能力的に劣っていました!」

「それは、あなたがたの偏見です。偏見でなければ錯覚です。」

 橋本が、かすかな冷笑を浮かべて答える。

「何だと!」

「我が国が元有った世界でも、かつて『白人の優位性』とやらが信じられていました。しかし、後の時代になって、それは『広い意味での、教育の差』に過ぎなかったことが、証明されましたよ。」

 橋本の一言にコールドウェルは怒声を浴びせる。

「…冗談ではない! そんなことが有ってたまるか!」

「―――では、仮に百歩譲って、あなたがたが元居た世界では、あなたがたの言う通りだったとしましょう。しかし、あなたがたは忘れていませんか? ここが、別の世界だということを。」


「―――何が言いたい?」

 コールドウェルは睨みつけながらも橋本の言葉を待つ。

「あなたがたの世界の常識が、別の世界で通用しないのは、むしろ当たり前なのです。そうは思いませんか?」

 それを言われた時の、コールドウェルの顔は、まったく見物だった。ハンマーで頭をぶん殴られたような顔、とは、このようなのを言うのだろう。

橋本の顔に、勝利の笑みが浮かぶ。

「納得していただけましたか?―――さて、改めて交渉に入るわけですが―――その前に、していただきたいことが有ります。」

「……何を?」

「決まっているでしょう。先程からの暴言の数々を、我々に『正式に』謝罪していただきたい。」

「な―――何だとぉ?!」


 平静を取り戻したかに見えたコールドウェルの顔が、その言葉に再び真っ赤になった。

「今ここで、正式に、かつ公式に謝罪していただけるなら、先程までの暴言は、水に流すと約束しましょう。」

「ふふふふふ、ふざけるなっ! この私に、有色人種に頭を下げろと言うのか!」

「当たり前でしょう。あなたが、我々の立場ならどうです? あんな暴言を吐いた相手を、あなたならどうします? 本来なら重大な国際問題ですよ?」


 外交官として致命的なまでに冷静さを失ってしまったコールドウェルはまたも暴言を吐く。

「白人が有色人種に頭を下げるなど有り得ん! そもそも、貴様ら有色人種に、『白人に何かを求める』権利など有り得ん!」

「ほう? それはつまり、我が国を対等の相手として認めるつもりは無い、ということですな?」

「当たり前だ! 我々白人が、有色人種を対等の相手と認めるなど有り得ん! そもそも有色人種が、白人と対等になるなど有り得ん! 貴様ら有色人種に、我々と対等になる資格など有り得ん! そのようなことを、神が許すなど有り得ん! 今すぐ認めろ! 自分たちが、劣等人種だと! 自分たちの国が、劣等国だと! そして我々に、絶対服従するのだ! 我々白人に、すべてを差し出すのだ!」


「……それでは、貴国とは、外交など成り立ちませんな。」

 この程度の暴言で動じるようでは、外交官など務まらない。露骨な冷笑を浮かべつつ、橋本は交渉中止を告げた。

「当然だ! 『白人と対等になろうとする』有色人種など、こっちから御免こうむる!」


 そう言って、シュナイダーに向き直るコールドウェル。

「さあ、シュナイダー殿! この無礼な有色人種を、さっさと追い出していただきたい!」

「……残念ですが、出て行くのはあなたの方です。コールドウェル殿。」

「何だと?!」

「我がミッドランドと貴国の交渉も、中止だということですよ。さあ、この者を丁重にお送りなさい」

 シュナイダーの合図に、隅に控えていた警護の兵が、コールドウェルと随員たちの腕を掴み、出口へと引きずって行く。

「あ、あなたは、貴国は、我が国より有色人種国家を選ぶと言うのかっ!」

「貴国が、我が国の立場ならどうです? 二十年来の同盟国と、つい先日接触したばかりの国と、どちらか一方を、選ばねばならないとしたら?」

「き、きっと後悔しますぞ!」

「残念ながら、後悔するのは、おそらくあなたと貴国の方です。コールドウェル殿。」

喚き散らすコールドウェルが連行されていくのを、そう言ってシュナイダーは見送った―――。

この2日後、帰国したコールドウェルは、自らの失敗を湖塗するため、『ニホン国とは、黄色人種の国であったこと』、『ミッドランド共和国は、黄色人種国家であるニホン国を、自国より優れた国だと認め、同盟国として優遇していること』を、前面に押し出して報告する。

 そして結果的に、祖国と自らの首を絞めることになるが―――それはまた、別の話である。

 さて、皆さんに報告したいことがあります。実は、本作、なんといつの間にか約2万5千アクセスのPVアクセス数、お気に入り登録数に至っては53を達成しました。ありがとうございます。

 これも、にしな先生をはじめ、読者の皆さんのおかげです。今後ともよろしくお願いします。

 さて、次話ですが、日本海軍、戦後初の正規空母の退役の話を中心にお送りする予定です。それでは、また次話でお会いしましょう。

p.s 12/11/09

 誤字があるとの指摘を受けましたので修正しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ