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異世界日本奮闘記  作者: 暁海洋介
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二話 国産空母と海獣事件

 お久しぶりです。海軍士官です。相変わらず、文章が下手でごめんなさい。それから、12,000PVアクセス、2,600ユニークアクセスを達成しました。ありがとうございます。あと、お気に入りが26件も頂けるなんてありがたいです。今後も、少しでも文章を良くできるよう頑張っていきますのでよろしくお願いします。

――移転歴3年 7月――

 レイチェルが新素材を発見して騒がれているころ、佐世保で次期空母のためのテストベット艦への改装工事を受けていた旧タラワことしもきたが、工事終了を受けて運用試験を開始した。艦載機の多くは、もともとの所属機だったが、その中には試験中の国産ハリアー、ハリアーJや、スキージャンプ発進対応E-2も含まれていて、運用試験を通じて、2年後に製造開始が予定される量産機にデータをフィードバックしていくことになる。


――移転歴5年7月 横須賀――

「やっと起工か。感慨深いな。私がまだ若いころは自力で空母を建造することになるなんて夢のまた夢だったというのに」

 建造現場を見にきた老人がつぶやく。

 しもきたの試験結果を受けて、国産初の正規空母、扶桑が起工した。完成すれば、排水量5万3千t、全長288m、全幅58m、艦載機数約50機、スキージャンプとアングルドデッキを装備する大型空母が登場することになる。しかも、この空母は揚陸艦としての機能を兼ねており、有事の際にはあらゆる作戦の中核を担う多目的艦として活躍することが予想されている。また、本艦が起工する少し前の3月には国産艦載機の先行量産が始まり、日本は本格的に軍備を自前で整え始めた。


――8月27日 沖縄沖 マグチッタ行き大型タンカー「日照丸」――

「ぎゃあああ。早く逃げろ! 全速で避退しろ!」

 ソナーに映る巨大な影が自船に近づいてくるのを見て船長はヒステリックに叫ぶ。川崎を出てマグチッタへ向かういつもの航路を進んでいる途中で遭遇したこいつはさっきからものすごい勢いで追いかけてくる。全速25ノットを発揮しているのに逃げられそうもない。


「もう駄目だ。間に合わない!」

 ソナー員の絶叫ともいえる報告の直後、船は闇に包まれた――


――同日 首相官邸――

「それで、現在は?」

「日照丸からのsos信号を受信して現場海域へ海軍機が向かいましたが、現場海域には日照丸はおろか、か、その痕跡が認められませんでした」

「わかった。とにかく、付近を航行中の各船舶へ現況を報告して近づかないように言ってくれ。それと哨戒機を増やして捜索範囲の拡大と強化を図ってくれ。護衛艦にも出動要請を出す」

「わかりました。そのように伝えておきます」

 日照丸のsosから数時間後、夜の首相官邸に重苦しい空気が流れる。通常の転覆事故なら燃料の重油などが漏れていたり、破片が見つかったりするはずなのだが、救命ボートもそういった痕跡もない今回の事故に不安が広がる。

 畑中がふと何かを思いついて口に出す。

「まさかと思うが、マグチッタから報告のあった例の海獣か?」

「そんなまさか。確かに、転移する数年前に現在は秋津島となっている島で目撃例があったきりですよ?」

 ありえないという表情で閣僚の一人が言う。

「なんの痕跡も残さずに商船が消えることなんて出来るか?」

「それもそうですな」

「とにかく、海軍の哨戒機と護衛艦が頼りだ。なるべく早く着くように急がせろ」


 しかし、その後、捜索は2週間近く続いたものの、何の痕跡も見つけることは出来なかった。


――9月16日――

 雨が降り続く中、海軍の虎の子のイージス艦こんごうは横須賀へ向かう途中だった。

「今日も一日暇だな」

「だが、気を抜くなよ。日照丸事件があってから2週間しかたっとらんのだからな」

「了解です」

 しかし、しばらくしてもうすぐ浦賀水道だという地点でソナー員が異変を感じる。

「? ソナーより艦長。後方より大きな影が急速接近」

「何だと!?」

「艦長! 後方を行くタンカーが!?」

 見張り員の叫びは悲痛だった。後方を行くタンカーが突然、横から現れた何かによって一瞬で真っ二つにされ、海中へ没した。

「まさか!? 日照丸もこいつの仕業か!? 総員対潜戦闘配置! 急げ!」

「了解!」

 艦内が慌ただしくなる。横須賀総監部への連絡も行われ、増援を求める。

「配置つきました!」

「よし、アスロックを使う。ソナー! さっきの奴は?」

「深度300を南西に移動中。距離8000」

「追いかけて仕留めよう。反転、針路2-1-0」

「ようそろー。とーりーか―じ、一杯! 針路2-1-0」

 左へと舵が切られ、巨大な影のある方向へ針路を向けたこんごうは、速度を上げて距離を離されないように追尾を続ける。余談だが、対レガルシア戦で、専守防衛という考え方は行きすぎると近代戦において取り返しのつかない被害が出ることを身をもって知った日本は自分から殴ろうとまでは考えないにせよ、やられたらすぐやり返せるよう、交戦規定をはじめ多くの面で軍を動かしやすくするための法整備が行われ、防衛予算も若干ながら増額している。


「アンノウン、現在、距離2万」

「だいぶ離れたな。足止めに何発か食らわせよう。アスロック発射用意」

「アイ・サー。アスロック用意」

 艦前部のVLSのうちの3か所のふたが開く。

「撃ち方はじめ」

「撃ち方はじめ」

 意思を持つ矢が放たれ、ソナーの影がある方向へと飛翔していく。やがて、それはドラッグシュートで減速し、着水した。着水した後、魚雷が影のいる場所に向かって猛スピードで潜っていく。

 だが、最初の一撃では、影の進行は止まったものの、正体を現さなかった。その後も、姿を確認するべく、浮上を促すためにアスロックが何発も放たれ、短魚雷の飽和攻撃も行われた。それでもなかなか姿を現さない。

「なんで、現れんのだ。これだけ魚雷が命中しているというのに」

「横須賀より護衛艦3隻が到着しました。本艦を旗艦として臨時に小艦隊を編成せよとの命令が来ています」

「分かった。ただちに、各艦に対潜戦闘を発令せよ。各艦の対潜兵器をもって飽和攻撃を仕掛ける」

「了解」

 現場にいら立ちが出始める中、横須賀から応援に駆け付けた護衛艦3隻が到着した。こんごう主導の下、さらに飽和攻撃をかけるが、やはり、効果が無い。

「艦長。もしや、皮膚が厚いのでは。信管を鈍くして様子を見た方がいいと思います」

「……ふむ。そもそも効果がなさそうにも思えるが、有効な手が無い以上それしかないか。とにかく、やってみてくれ」

「了解」

 ただちに、各艦に信号が送られ、できるだけ信管を鈍くして再度攻撃をかける。しばらく、飽和攻撃が続いた後、成果は出た。

 ドーン! アスロックが命中したらしく地響きのような音がした後、影は急速に大きくなって海面から顔を出した。

「ウソだろ!? クジラっぽいけど、でかすぎるだろ!」

 見張り員の一人が叫ぶ。海面に現れたのはクジラっぽいが、その大きさはタンカーのそれより圧倒的にでかい。背中の一部から出血を起こしているのか、黒みがかった液体が垂れている。

「主砲! 撃ち方はじめ!」

 まるでマシンガンのように127mm砲弾が放たれ、追い討ちをかけるかのように対艦ミサイルが放たれたが、効果は薄い。業を煮やした討伐艦隊が、最近、旧米軍から譲渡されて使用を開始したトマホークを持ちだして、やっと海獣が弱り始める。最終的にP-3CやF-1までやってきて対艦ミサイルや徹甲爆弾をぶち込みまくって攻撃し、部隊の弾薬が尽きかかる寸前で海獣はぐったりして動かなくなった。

「撃ち方やめ! 対潜戦闘及び、水上戦闘用具収め!」

 各艦艦長の命令の後、主砲は艦首側を向き、ミサイル発射管の蓋が閉まる。こんごうは、後始末と調査のため、僚艦とともに、えい航作業を行うこととなった。なお、調査の行われた和歌山県では動物愛護団体が抗議に来たが、商船乗りたちの命を軽視したような発言をして逆襲を受け、抗議は失敗に終わった。件の海獣は、出血多量で到着時にはすでに死んでいた。500m近い巨体が特徴の海獣は、解剖が行われた。その過程で、体内から原形をとどめた日照丸の姿が発見され、乗組員は無事に救助された。


「それで、例の海獣の調査はどうだ? 長官」

 畑中に問われ、科学技術庁長官が答える。

「……結論から言いますと、クジラの一種ということになります。遺伝子を調べた結果、地球のクジラと似ていました。ただ、笑えないのはこんごうからの報告で判明したこいつの泳ぐ速度が40ノット近いことです。大型タンカーを丸飲みできる巨体を持っているのにこんな速度で迫られちゃ、たまりませんよ。現に丸飲みされた日照丸だけでなく、もう一隻が体当たりを受けて沈没しています。早急に専用航路を設け、商船の安全を確保。それから航路監視用の部隊を編成する必要があります」

「……やはりそうなるか。それで、丸飲みされた日照丸の方はどうなんだ?」

「……ほぼ、原形を保ったままです。乗員も衝撃で負傷したり、海獣の体内に長期間いたことによるストレスや精神疾患、高温環境下にあったことが原因の脱水症状がある以外には何も。とにかく、死人が出なかっただけマシと考えるべきでしょう」

 海獣の胃の中に自分が閉じ込められる想像をして、畑中をはじめとした閣僚たちはげんなりした表情になる。

「……そうかもしれん。とにかく、被害にあった乗員のケアには万全を期しておいてくれ」

「しかし、魔獣がほんとに出現するとは……。そのうち、例のマグリット制限水域の調査もしないといけなくなりましたね」

「ああ。これまではあの周辺の水域を通過した時だけ被害が出ていたのに、今は近海にまで来るようになった。そのうちにマグチッタと同じように本土に上陸してくるかもしれん。その前に、生態系の調査も兼ねて、いつかは調べた方がいいかもしれんな」

 この海獣事件のあと、巨大な翼竜の出現などもたびたび確認され、自衛軍はそれら魔獣(マグチッタ側の資料などからそう呼ばれる)の対策に追われるようになり、軍備の増強に一役買うことになる。

 なお、新たな調査先として上がったマグリット水域はマグチッタの東にある暗礁地帯のことである。たくさんの魔獣が生息しているために、古代の魔術遺跡だということで、マグチッタも日本も調査したいが、現在のところ、マグチッタは調査隊を守る力が無く、日本は護るための部隊が抽出できないだけでなく、経済的理由から二の足を踏んでおり、この水域の調査は日本がこの世界に来て半世紀が経ったころまで待たねばならなかった。

 ちょっと、海獣ネタをぶち込んで遊んでみました。とはいえ、このネタは、最終的にこの話が向かうゴールへ辿り着くためのきっかけとして重要だったりします。

 さて、次回は時間がだいぶ進んだところから始まります。お楽しみに。

 それでは、また次話でお会いしましょう。


p.s.12/10/07 指摘を受け、空母の排水量及び海獣事件の修正を行いました。

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