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異世界日本奮闘記  作者: 暁海洋介
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第二章一話 新世界の現況

 お久しぶりです。海軍士官です。お気に入りが18件、PVが8800アクセス、ユニークが1800アクセスを達成しました。感謝してもしきれません! ありがとうございます。それでは、本編をどうぞ。


――移転歴2年10月 ポルトマーレ港駅――

 この日、ポルトマーレの港に近くに出来た駅は活気に満ちていた。

「本日をもって国鉄本線ポルトマーレ~アルカミ―シュロス間の正式開業といたします」

 提案者であるみずきの宣言とともにテープカットが行われ、一番列車が動き出し、横浜から大宮ぐらいの距離があるポルトマーレ~アルカミ―シュロス間の鉄道が正式開業した。もっとも、本線と言いながら、開業を急いだため、全線が単線ののんびりしたものとなった。だが、開業式典は、前市長であるみずきや国王であるアンソニーのほか、駐マグチッタ日本大使の古田をはじめとした諸外国の国賓も列席した盛大なものとなった。その後、アルカミ―シュロス~モンテオーロ間を結ぶ北本線が出来ると、この区間は南本線となり、その需要が大きくなっていくにつれて複線化や支線の建設、便数の増大などマグチッタの物流を支えていくことになる。


――同時期 イストニア合衆国――

 首都ウェリントンの大統領官邸では半年前の戦争で開戦以来4カ月でレガルシアを下した日本との国交が本格化を始めたことを機に首脳会談が行われた。会談では、日本とイストニアの交易に関する話し合いが行われ、対レガルシアについても軍隊解体後のレガルシアについての協議を行うこととなった。また、情報提供の見返りとしての援助品の供給についてもしばらくは続くため、それについての協議も行われた。

 このイストニアはかつてはレガルシアの一部であったが、その当時から両者は仲が悪く、産業革命時に競って技術革新を進めていくうちに凄惨な南北戦争を経験して両国に分かれた経緯がある。そのため、両国は何度も衝突を続けてきたが、この世界に転移した後、レガルシアは植民地を失った焦りから海軍を派遣し、新たな植民地を求めて動き出したのに対し、こっちにしばらく踏んでこないものと考えて静観を決め込んでいた。しかし、レガルシアが日本にボロボロにされていく過程で日本が誤って領空侵犯したのをきっかけに謝罪してきた日本と国交を樹立する方向で動くことにした。つまり、早い話がレガルシアと同類扱いされたくなかったから動いただけである。レガルシア対策で技術援助を願い出て日本を困惑させたが、日本としては国産技術が売れるのならと危険国家抑止の大義名分のもと、会談後、同国への輸出が急速に増えていくことになる。


――同じころ レガルシア共和国――

 帝国ではなく共和国として再出発し、日本とミッドランドの監視下にあるレガルシアでは親日路線を進む政権に切り替わり、復興支援を受けるため旧帝政時代の影響力を削ぎ落とすことに躍起になっていた。日本の圧倒的な軍事力の前に、恐怖を植え付けられたレガルシア国民は日本を怒らせれば国がなくなると記憶し、圧政が終わりを告げた今、国内再編が進んでいる。帝政派の人間は国外へ脱出したらしいが国民はそれを気に留める暇もなく、復興に向けてあえいでいた。

 また、帝政崩壊で国内における独立問題が再燃した。これは今まで大陸中にあった小国を力で併呑してきたので、確かに大きくはなったが日本に負けてしめつける力がなくなったために各地で蜂起が起きたのである。イストニアもレガルシアに圧力を受け続けていた小国たちが反レガルシアで一致団結して各国の自治を認める合衆国制度を採用した結果できたので、この問題がいずれ別な形で噴出する可能性はあったが、当面はこのレガルシア分裂問題をどうするかで日本とミッドランド、イストニアは対応に迫られることとなった。


――移転歴3年1月――

 日本の佐世保海軍工廠及び横須賀海軍工廠(在日米軍から返還されたのを維持費は自衛軍が持ち、実際の建造などは民間に委託する形とした)では、鳳翔とタラワ級強襲揚陸艦しもきた(元タラワ)の工事が行われていた。鳳翔は次期空母就役までの間、現役を続けられるよう、横須賀で以前受けたバルジ装着などをした延命工事以来の改修工事となる耐用年数延長工事を実施され、しもきたは将来の次期空母建造のためのデータ取り目的でスキージャンプ空母への改装工事を佐世保で行うことになった。両艦は工事が終わった後、それぞれ、呉と横須賀に配備され、次期空母の建造に貴重なデータを提供した。

 一方、マグチッタでは、立憲君主制への移行が進みつつあった。議会は、衆議院・貴族院の二院制となり、生き残った王室派の貴族と平民からそれぞれ選挙で当選した議員が議会を運営し、公選制首相を首班とする内閣府を設ける形で政治を行う方式になり、編成途上の陸海空軍はその指揮下に置かれた。同時に、貴族による領邦制からミッドランドにならった州制を導入。すでに頻発していた貴族によるテロ騒ぎで鎮圧された貴族が相次いで没落。領邦制が崩壊しつつあったため、中央政府の力を強くして国をまとめる方式に改めたのだ。合わせて、憲法が作成され、その施行が間近に迫っていた。


――5月 日本――

「何を作ろっかな? っと、そう言えば依頼があったわね。えーっと、また錬成鋼? 何に使うんだろ? まあ、何でもいっか。日本の依頼の報酬は多いし、作れっていってるものがいちいち面白いのよね。こんな仕事ならいくらでも歓迎だわ」

 西東京にあるマグチッタ大使館のすぐ近くにあるレイチェルのアトリエは日本国内でも一番の知名度を誇る錬金術工房になっていた。日本と接触し、約三年。その間に、マグチッタから日本にやってきた錬金術師たちは確実に日本の産業界に重要な影響を与えていた。

 実は、この時、前年にレイチェルは東北地方の山々を探索した際に見つけた石を用いた錬成鋼を作ったのだが、これが耐久性に優れており、さまざまな製品に応用が利くため新素材として重宝されたので、レイチェルはもう一度これを作るように依頼されていた。


「あー、でも、これはいいかな。他の材料調査があるからそっちを優先したいな。確かにお金にはなるけど造るのは簡単だし、アクラさんにお願いしよっと。あの人なら量も純度も私より上のものを用意できるし、あたしより要領がいいから大丈夫でしょ」

 アクラというのは、つい最近彼女が知り合った同業者である。もともとは貴族お抱えの有力な錬金術師だったが、その貴族がアクラの反対を押し切って政府にたてついたため没落し、職を失っていたのだが、みずきの勧めで日本に来て、レイチェルの工房で働くようになった。もともとが貴族お抱えであったので腕はみずきにしごかれたレイチェルとほぼ同じくらいであるので、日本国内を巡って練金素材となりうるものが無いか調査することをマグチッタ本国というよりはみずきから依頼されているレイチェルの相棒として彼女の負担を大幅に減らす大活躍をしている。余談だが、のちに、アクラの弟子が同じくレイチェルの下で働くようになると、京浜工業地帯の一角に工房を増設した結果、レイチェルの工房は材料や技術の研究を一手に引き受け、新工房はアクラが主体となって工場の役割を担う形となり、一種の会社のようになっていった。


 話を戻す。依頼にあった錬成鋼を造るには、マグチッタ産の錬成剤、質のいい木と清流にころがっている小石が必要である。そのため、日本側から提供された資料をもとにレイチェルは依頼の傍ら、木材や日本中の名水と呼ばれる水がとれる川の玉砂利を収集していた。ちなみに、錬成剤は魔術的な要素が絡むのでマグチッタでしか作れない。とはいえ、錬成鋼は日本にとっては魅力的な製品である。なにせ、鋼材なのに原材料が清流の石と木材なので、入手が容易なのだ。使う木材と石の材質次第で性質が変わるので上手くいけば代用鋼材になる。実際、マグチッタは自国資源の大半が金銀銅ばかりで鉄などがほとんど出なかったにもかかわらず、アリスたちが日本へ向かうために使った蒸気船のようなものを作ることが出来たのは、大規模な森林地帯がいくつか存在し、さらに各地を流れる川の水が清流と呼べるきれいな水だったからである。 

 後日、そういった理由から、レイチェルはアクラが代わりに依頼をこなしてくれることになったので錬成鋼を彼女に任せ、岐阜へ向かった。銘木である木曽ヒノキを取りに行くためである。これまでは、東北地方の木を主に調べてきていたが、一区切りついたので次の調査先をどうするかと考えていたときに目に留まったのがここだったからだ。

 現地調査の後、試製品を作るため、ヒノキ材を頂いた彼女はアトリエに戻るや、すぐに試作を始めた。ちなみに、今回使用する小石は飛騨川で採取した玉砂利である。彼女の経験則上、木材の産地に近いところで採れた石を使った方が好結果をもたらしやすいからだ。出来た鋼材は素材研究をやっている研究所へへ持ち込まれて一通り調べられた後、レシピとともに各アトリエへ報告される。

 今回は、集積回路用素材に最適な素材だと判断された。試作品の報告が出るや、さっそくそれを用いた試作品が製造され、実験が行われる。


 実験の結果は……

「なあ、ムーアの法則はどうなったんだ?」

「知るか。というか、これ、大発見だぞ。代用鋼材の試作品だっていうが、木曽ヒノキでとんでもない高性能スパコンが作れるとか聞いてないぞ!」


 実験の結果、コンピュータの処理能力が飛躍的に上がり、科学分野をはじめとしたさまざまな場所でヒノキを使用したコンピュータが使われるようになり、日本に計り知れない影響を与えることになる一方、個人用のパソコンにまで使用されたため木曽ヒノキの管理問題が浮上した。このように、錬成鋼は、日本経済に計り知れない効果を与えるが、同時に日本の林業の暗い現実が浮かび上がらせていくことになる。

 いかがでしたでしょうか。まだ、本章の構成部分は制作中です。この次の章以降の準備もまだまだ続いています。したがって以前のようなスピードで投稿するのは難しいですが、完結まで投げ出さずにやっていくのでこれからもよろしくお願いします。

 それでは、次話でまたお会いしましょう。

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