第壱話 誘拐
やばい…泣きそうだ
昔こんな言葉を聞いたことがある
「人生、何が起こるかわからない。だからこそ面白いんだな」
残念ながら俺は今猛烈にこの言葉を否定したい 今俺が体験している出来事は、決して楽しくも面白くもないのだ
さて ここで問題といこう。ここはどこでしょう?
答えは簡単。俺は今現在、車の中にいる。しかも後部座席だ
それはさして問題にはならないだろう
しかし、家族で楽しいお出かけというわけでもなく、友人宅の車というわけでもない
見ず知らずのゴツイオヤジが運転する、助手席に見ず知らずの若いお姉さまが御乗車されている車に乗っているのだ
しかも、後ろ手と足を縛られている
何故こんなことになったのか?何故しばられているのか…まったくの謎だ
しかし、これだけは解る
つまり、簡単にいえば誘拐。難解に言えば刑法第なんたらかんたらに相当するわけだ
まったくもってわけがわからない
なんで俺が誘拐されるのか理解に苦しむ いいとこのボンボンではないし、身代金目的ならもっと他の奴をさらえよ…
なんで俺なんだ…俺何かしたか?と、思考のループにはまっていると、
「すまないな…別に乱暴するつもりはない ただ、君に用があったんだ」
と、ごつい男以後男が声を掛けてきた
俺のこの状態をみてよく乱暴するつもりはないといえるものだ
「本当にごめんなさいね 彼のいったことは本当よ あなたに危害を加えるつもりはないわ」
と、若いお姉さまからお声が うむ 信じよう と一瞬思った自分の脳みそに活を入れる
勇気をだして聞いてみる
「あの…これから俺はどうなるんですか?」
「あなたにはこれから私たちと一緒にきてもらいたいところがあるの すまないけど、ついてきてもらうわよ?」
いや…俺に拒否権なんかまったくないんですけど、、、
しかし、このお二人は俺に危害を加えようというのではないらしい。みたとこいい人そうだしな。そこは安心していいだろう。多分…
俺の中から不安要素がひとつ消えた
「でも、俺になんのようですか? 別に俺何もしていませんよ」
そう 俺にこうやって拉致らされる原因はひとつもない… とおもう
「それは、着いてから説明するわ」
とのお言葉 しかたない 静かに黙って静観してよう 余計なことを言えば何をされるかわかったものじゃない
しかし、何故こんなことになってしまったのだろうか…
あれは一時間ほど前にさかのぼる…
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誘拐された彼の名は椿 亮
今日、つまり誘拐された日に高校生になるのだ…。かし、誘拐された。不幸としか言いようがない
今朝、彼はいつもより早く起き、早く身支度をし、早く家をでた。本人によると、初日から遅刻ではしゃれにならないからだそうだ。彼は日ごろからよく遅刻をしていた。仕方がないだろう
しかし、彼はここでミスを犯した。家の近くに駐車している不審な黒塗りの車に気づかなかったのだ
まぁ、仮に気づいていたとして、彼には何もできなかっただろうが…
家の玄関をでてわずか300mほどのところで彼は誘拐された。あっけなく…抵抗する暇もなかったのだ。
そして現在に至る
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いったいどこまでいくのだろう?誘拐されてから結構時間がたったと思う。時間がたつごとに縛られた腕と足が無性に痛む 気を紛らわそうと、思考の海に沈むことを選択した
もう入学式は終わったんだろうな… そう思うと、無性に悲しくなってしまった
車は今どこを走っているのか それさえわからない 先程までは高速に乗っていたようなのだが、だいぶ遠くへきてしまったようだ
「そろそろ着くわ もう少しの辛抱だから、我慢してね 着いたら足のほうの縄はほどいてあげるから」
いきなり若い女性のほうから声がかかる
「やっと着くんですね? よかった…」
よかった 少なくともこの縄縛り(命名・俺)から開放されるようだ 少なくとも、両足は自由になるということだ
そのやり取りから5分ほどたち、車が止まった。
電波受信したので投稿してみました
読んでいただいてありがとうございます