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欠けている月  作者: 彩月
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清美は、こうと決めたら最後までやり通すようなタイプの人間だ。

今までもそういうことがあって、そんなときは隆弘が何を言っても無駄であった。

来年は、もう大学四年になり、そろそろ就職活動のことも視野にいれる頃であるが、清美は大学院に行くと言っている。やはり、研究者向きなのかもしれない。

ゼミでは、心理学を専攻している。経済学部に在籍している隆弘が清美と関わりを持つようになったのは、サークルでの飲み会だった。

そのサークルは、

「映画研究会」

という、名前は立派そうだがその実体は映画を観ては飲んで騒ぐという、お遊び的なサークルだった。今ではあまり出入りしていないが、飲み会では同じ学年ということもあって、いろいろな話をした。

特に清美は人を見抜くのが得意で、隆弘はよく驚かされたものだった。

飲み会で、清美からおすすめの映画を聞かれ、女の子向けならこれかな、いや暗い映画が好きならあれか、それともB級映画なら……とあれこれ考えていたら、笑いながら言われたのだ。

「おすすめは、なんて聞かれたらとにかく自分の一番好きなやつ一個だけ言ってくれればいいのよ。今、私に合いそうな映画を頭の中で探してくれたでしょう?隆弘は人の期待に100パーセント応えようとするよね」

まさにそのとおりだったので、隆弘は一瞬どう反応していいやら困ったものだった。

でも、それが嫌味もなくすとんと心の中に落ち着き、清美の言葉をもっと聞いていたいと思い始めていた。

隆弘と清美が好きな映画

「ライフ・イズ・ビューティフル」

のリバイバルを観に行った日の夜、思い切って隆弘から告白をした。

そのときも、散々どう言おうか悩んだ挙句出た言葉は

「付き合う?」

の一言で、清美はまた声を出さずに笑った。それで十分通じた。

清美は滅多なことでは感情をむき出しにすることはなかった。笑ったり、怒ったりするときも自分でその度合いを調節できるくらいに余裕が感じられた。

それは、隆弘にとって何か物足りないような、切ないような焦燥感を持つものだった。

そして、清美は今まで一度も隆弘

「好き」

ということをいっていないのだ。

言わせようと試みたことはあったが、その度に失敗に終わった。それでも、清美は優しく、隆弘は辛抱強く信じてきた。

今度のは、越えられるだろうか?

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