表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日から先輩の為に  作者: 有里 悠
第1章先輩の為に
1/2

プロローグ

 ジリリリリリリリrr――――


 部屋の中で耳障りな音が鳴り響く。ここ何年も聞き続けてきた音。

 どれだけ生活に慣れても、この音だけはどれだけたっても慣れることはない。


 「まあ、慣れたら慣れたで起きれなくなるから困るんだけどね」


 目を覚ますと、普段と違う見慣れない天井が目の前にあった。

 それも当然。つい昨日引っ越してきたところだからだ。

 引っ越しと転校が続いていることを不憫に思った両親が高校生活の間はそういうことがないようにと一人で住む部屋を取ってくれたのだ。不安がないといえば嘘になるが学生にとって一人暮らしは嬉しいものだ。

 この部屋(マンションの1室)のことは何も聞いてないけど、新築なのかピン穴1つない真っ白な壁が広がるこの部屋は贅沢と言っていい。


 ――カチッ


 鳴り続けていた目覚ましを止めて起き上がる。

 今日から高校生活が始まる。そう長いこと引越しの余韻を噛み締めていては、遅刻してしまう。

 とは言っても引越ししてからの登校初日。いつもよりかなり時間に余裕を持って起きてきた。昨日買ってきた食パンを焼いてゆっくりテレビを見ていても十分間に合う。


 ということで、いつもどおりテレビをつけてパンを焼く。

 テレビの中では女性アナウンサーが難しい内容の原稿読み上げている。

 このニュース番組、お堅いトピックが多くて中高生で見ている人は少ないらしいが、俺はこの番組を見続けている。

 『続いてのニュースです。け、経営不振の続いていたアメリカ最大手のZMゼータ・モーターズは日本の企じょ、企業高円寺インダストリーズが買収することで合意しました。それに伴いーー』

 不純な動機だが、この女性アナウンサーがたまに噛んだりしているのを見るのが何ともいえないのだ。


 「おっと、いけね」


 アナウンサーに見蕩れてパンが焼けているのに忘れてしまっていた。


 冷えて固くなったパンをかじりながらテレビ内の時計を見ると――

 「マジかよ」

 デジタル時計は『7:52』を示していた。

 学校までは歩いて20分。

 今すぐ出れば間に合うが早起きした意味が無くなり胸が痛い。


 がっくりと重くなった体を動かして、靴をくため玄関に行く。

 扉を開けて外に出る。

 鍵を閉めてからまだ部屋の前に表札を貼っていなかったことに気付くと、かばんから新品の表札を取り出し扉の横に貼りつける。

 苗字だけじゃなく、名前も入れた正真正銘自分だけの表札。

 貼ってから少し離れて、ずれていないか確認する。


 『和道かずみ和仁かずと


 そして誰にも聞こえない声で呟いた。

 「行ってきます」


 新たな生活の期待と不安はひとまず胸にしまい、初日から遅刻のないように急ぎ足で学校に向かうの。

 

 俺は小走りで学校に駆けていく。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ