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先輩、好きになってもいいですか。  作者: 雨宮ツムグ


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2/15

別れましょうの先輩

「お前また別れたの?」

「おー」

またとは失礼だな、と思いつつ、けれど事実なので反論はできない。

今朝起きたら『別れましょう』と彼女からメッセージが来ていて、『分かった』と返して、それで俺たちの関係は終わりだった。

「別れたくないとか思わないわけ?」

「相手に気がないなら、何しても無駄だしな」

「冷めてんねぇ」

そうかぁ?と頬杖をついて窓の外を見る。

次の講義まで時間があったから、食堂で友人の島田とだらだら話していた。

なんで俺が別れたこともう知ってんだよ、とは敢えて聞かなかった。

俺に今朝元カノとなった先輩を紹介したのは島田。

昨日の飲み会に、俺を誘ったのも島田だった。

顔が広い分、いろんな噂話も流れ着いて作るのだろう。

「好きってよく分かんねぇ」

「付き合ってたのに?」

「付き合ってたのに」

好きと言われたら、応えたいと思う。

気持ちをくれた分、返したいと思う。

付き合っている間はちゃんと俺も好きだと思う。

幸せにしたいし、楽しませたいから、デートプランだって色々考える。

浮気は微塵もしようと思わないし、メッセージもマメで、記念日だって忘れない。

それなのに、大抵三ヶ月で振られるのだ。

好きって言ったのはそっちなのに、と、毎回思わずにはいられない。

俺は良い彼氏をできていると思う。

実際その都度、彼女の友達には毎回扱いが理想的だと羨ましがられていたし。

けれど振られて、あっけなく終わる。

終わったら終わったで未練もなくて、だから毎回悩むのだ。

好きって、付き合うって、なんなのだろう、と。

「先輩」

声がして、振り返るとそこにはカモ『られて』いた方の男が立っていて。

「おー」

昨日ぶり、と声をかけて俺の隣の椅子を引いてやる。

「知り合い?」

「昨日の飲み会に来てた。お前カメラ売りつけてくる先輩知ってるか?」

「いや、知らない何それ」

「居たんだよ昨日。自分の更に先輩からの紹介だって言えば、このカメラが半額になるとか言ってた。んでその先輩に昨日カモられかけてたのが、こいつ」

「ちょ……」

なんですかその紹介、って苦笑いで隣で座る男を、俺と島田は揃って見る。

「名前なんだっけ」

「西宮です。西宮(にしみや) (りく)

「そっか、俺は内海(うつみ) 千尋(ちひろ)。よろしくな」

「……はい、よろしくお願いします」

……なんだ?

やたらとテンションが低いから不思議に思う。

昨日は結構話が盛り上がっていた気がする。

気がするというのは、正直あまり覚えていないからだ。

ハイボール一口で普通に酔って、結構フラフラだったから断片的な記憶しかない。

そういや昨日、俺どうやって帰ったんだ?

「俺は島田。ごめんな、カメラ売りつける人が居るとか全然把握してなかった」

「あ、いえいえ……」

「ちゃんと断れた?先輩なら言いにくかったろ」

「は、はい、先輩が……内海先輩が守ってくれたので」

「「はあ?」」

島田と声が被って、俺たちは顔を見合わせる。

島田はきっと俺の行動に驚いた声で、俺は守るって言い方がちょっと語弊があるなと思っての声だった。

「守るって、内海が?」

「はい……!」

「いやいや語弊がある、俺はただ……」

「しかも、嫌なら嫌って言えとアドバイスをくれて……俺、今日、ティッシュ配り断れたんです!」

「おお!」

なに盛り上がってんだよ。

む、としていると、島田が俺の肩を何度も叩いてくるから振り払う。

「内海そういうところあるよな〜!優しいんだよな〜!」

「うるせぇ」

「はい、とても優しいです……!」

「キラキラするな!」

守ったとかじゃない、そんなんじゃなくてただ、俺の中の正しさに反していただけで。

けれど俺の良いところエピソードが島田によって披露されはじめて、居心地の悪さが限界突破したから俺は食堂を出た。

西宮は最初俺を追いかけようとしていたけれど、結局エピソードの誘惑に抗えず、みたいな顔でその場に残っていたから、フン!と荒く息を吐いた。

別にどうだっていい。

追いかけてこねぇのかよなんて、これっぽちも思っちゃいない。


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