Episode 5 鴉と鳥籠
皆様お久しぶりですm(_ _)m
特に物語に関わることはないのですがでシルベさんの所持金を書いておきます。
・金貨582枚
・銀貨175枚
・銅貨221枚
・鉄貨5枚
日本円換算だと6,017,150円……うーん金持ち。
宵空を出てから数分、お姉さんに言われた通り露店通りの一つ向こうの通りへ到着する。露店通りほど人がいるわけではないが、それでもかなり賑やかな様相が展開されている。特段目を引く物があるようには見えないのにこの通りがここまで人を集めている理由は、服屋を探す過程で知ることが出来た。
ずばりそれは装備である。非常に多くの冒険者がこの街を活動拠点としているらしく、それ故に武器や防具といった類の品の需要が極めて高いのだとか。今日の本筋とは違うが気になって試しに入った武器屋のおっさんに教えてもらった。そのまま店を出るのは申し訳なかったので適当なナイフを2本ほど買った。値段は金貨2枚。実のところナイフは既に所持しているためいらないといえばいらなかったのだが、店内に扱い慣れた得物が他に無かったので仕方なくこれにした。特に質が良いというわけでもないので投擲用として使う事にしよう。
店を出た俺は服屋を求めて散策を再開する。両側の店の中を一つ一つ覗いてみるがなかなか見当たらない。服屋の場所はお姉さんの記憶違いなんじゃないかと少し疑心暗鬼になりながらも探し続ける。そうして暫くした後、通りの後半に差し掛かった辺りでついに目的の店を見つけることが出来た。
外観はモノトーンで現代的な配色であるもののデザインによってこの中世の様な空間に完全に溶け込んでいる。芸術についてあまり聡い方ではないのでよく分からないが、お洒落な感じがして良いと思う。
「いらっしゃいませー」
扉を開けて店内に入ると特徴のない声が響く。ああいった挨拶はここでも元の世界でも変わらないんだなと思いながら服を物色する。流石に品揃えまでは元の世界と同じではなかったようで、シンプルで装飾がなく、動き易さ重視した物がほとんどだった。この街は冒険者が多いため彼らに合わせた商品を展開しているのだろう。それ故に俺が今着ているようなワイシャツ等のフォーマルな服は数が少なかったが、幸いほぼ同じ見た目の服が3着見つかったのでまとめて購入した。ワイシャツとズボンを3着ずつ、それと下着も併せて金貨10枚だった。もう少し安く買えると思っていたのだが金はまだまだあるので良しとしよう。ただ、服を探している途中に店員から何度も女性用の衣類を勧められたのだけは解せないが。男だと言ったにも関わらずホットパンツを持ってこられた時は割と本気で困惑した。店を出る時もどこか不服そうな視線を向けられて気まずかったのでしばらく立ち寄らないようにしよう。
そういえばだがお姉さんはダメージジーンズだったりお洒落なタンクトップだったりと随分現代的な服装だったがそういった商品は売っていなかった。どこか他にそういった店があるのだろうか?別に行く訳ではないが戻ったら聞いてみよう。
服屋を出た俺は、次に本屋を目指して隣の通りへと向かう。路地裏を抜けて通りへと出ると先程までと様相が変化する。さっきの通りよりも大きく人数が減り、雰囲気も落ち着いたものになった。閑散としたその風景は宵空のある通りに近い。これならさっきまでより探すのは楽そうだ。
服屋探しの時と同じように一軒一軒建物を確認して回る。見た感じここは雑貨屋等がちらほら存在するが、大半が一軒家やアパート等の居住スペースだった。お陰で目当ての本屋を見つけるまでに時間はそう掛からなかった。
「いらっしゃい」
店に入るとしゃがれた声で出迎えられる。僅かに埃と古びた紙の匂いに包まれた本棚達の奥、カウンターに座る声の主である店主らしき爺さんに話しかける。
「すみません、子供に文字を覚えさせるのに丁度良い本ありませんか?それと魔法に関する本も」
「はいよ、ちょっとそこで待ってな」
おじいさんはゆっくりと椅子から立ち上がり、曲がった腰をさすりながら本を探して歩き始めた。
「それにしてもお客さんなんて久しぶりだねぇ。ギルドに図書館が出来てから客足がめっきり途絶えてね、今ではすっかり伽藍堂だよ」
図書館もあるのか。文字に慣れたら行ってみるのもいいな。まあ暫くはここに通う事になるだろうが。
「待たせたね、この本でいいかな?」
少し思考を別のところにやっている間に店主の爺さんが戻ってきた。その手には二冊の本が乗せられている。薄い方を手に取ってパラパラとめくると見開き1ページ毎に大きなイラストと少量の文字が書かれている。表紙を閉じ、もう一冊の方を受け取って中を確認すると、大量の文字と共に所々円形の魔法陣らしき図が載っている。どちらも内容に大きな間違いは無さそうだ。
「ありがとうございます。読み終わったらまた来ます」
「待ってるよ」
代金として銀貨4枚を支払って店を出る。魔導書なんてものを買っておいて4000円程度で済んでいることに驚きだがこの世界だと意外とそんなものなのか?そんな疑問は一度隅に置いて帰路に就く。本屋の通りを出て武器屋の通り、露店通りを横目に見ながら宵空へと歩を進める。
暫く歩いて宵空のある宿屋の通りへと到着する。こうして歩いてみると思うがこのレーヴルという街は見かけよりかなり大きい。山の上から見下ろしたときは本屋の通りから宿屋の通りまでより少し大きい程度に見えたが実際は宿屋の通りと本屋の通りの先にいくつもの通りが並んでいるのが分かる。一体どこまで続いているのかとても気になる。今度端まで行ってみよう。
本と服の他に新たな興味を抱えて自室へと戻る。鍵を受け取るときにお姉さんから服についてニヤニヤしながら聞かれたので適当に流した。彼女に何か聞くのは止した方が良さそうだ。
部屋に入って荷物をテーブルに置き、そこから絵本を手に取ってベッドに腰掛ける。帰ってきて早速だが文字の勉強に取り掛かる。まずはパラパラとページを流し見して絵から内容を把握する。終わりまで行くと今度は文字と合わせて初めから読み直す。文字列のまとまりと絵の内容から対応するものを探していく。何度も読み返して少しずつ全体を頭に流し込んでいき、そうして読んだ回数が2桁を過ぎた辺りで違和感を覚え、3桁に差し掛かる手前で確信に変わった。
「まとまりが…ない?」
それどころか一つとして同一の形状をした文字が存在しない。どれも溶けて歪んだものばかりで識別すらできない。これでは文字として成立していない。それだけではない。読み返すたびに少しずつ文字や絵が変形している。最初の方は覚えきれていないだけかと思っていたが、回数を重ねる毎に違和感が増していき今回でついに絵が明確に変化したのを確認できた。本を開く度にAIがし直しているような感じが近いだろうか。そういえば、最初に露店通りで見た旗にも似たような文字が…それに朝見たメニュー表にも……。文字であるからこの街で広く使われているのは当たり前なのだが、街の人々はこれをどうやって認識している?変形している事に違和感を持っていないのか?
ここは恐らく異世界、訳の分からないような事象が大量にあっても不思議ではないが、これにはどこか引っかかる。ただの勘でしかないがここについて詳しく調べる必要がありそうだ。もしかすると俺が手にしたのは自由ではなく、どこか不穏なものである可能性だってあるのだから。
そうと決まればまずは調査……の前に現状の確認だ。今日までに起こった出来事について確認してみよう。詳しくは1~4話をチェック!……唐突に頭に何か浮かんできたが訳が分からないので無視をする。
まずは昨日、カルト団体を襲撃したのが事の発端だ。構成員を皆殺しにして教祖らしき男の部屋を物色していた時にあの魔法陣を見つけた。あれが一番怪しいが転移してしまってもう確認することができないので考えるのは後回しにする。
魔法陣に触れた後、気づけば山の中へと転移していた。あの時は驚いたし少し焦ったが、道中に盗賊がいたおかげで随分助かった。しかし近くに街があったり金策が転がっていたりかなり俺にとって都合がいいような気もする。それに街のサイズ感にも違和感を感じているため一度山へ確認しに戻ってみるのもいいだろう。
そして山を下りて街へとやってきたわけだが、これ以降は文字以外で特に何か気になる事があったわけではない。となるとすぐに調べられるのは転移地点と街くらいか。とりあえず街の全体をもう一度確認したいし一度山へ向かおう。その他気になる事があれば随時確かめていく形で問題ないだろう。
纏まったようで山へと向かうこと以外何も決まっていないがまあいいだろう。方針が決まったので行動を開始する……とは言っても来た道を戻っていくだけなので何も大変なことではないのだが。再びお姉さんに鍵を渡し外へと出る。どうやら本の解読にかなり時間がかかっていたようで、街はすっかり夕日に溶けてしまっていた。この橙に染まった風景の美しさに見惚れて足が止まってしまうが、確認のために門の方へと向かう。見つけた違和感が思い違いであるのか、この街に不穏なものがないか。この街へ来てまだ日が浅いが、俺はこの街がかなり好きだ。故に、ここで俺が何も憂うことなく暮らせるのか確かめる為の行動をしなくてはならない。
そんなことを考えながら所々で止まりそうになる足を動かして門まで辿り着く。出る時に一応門番のおっさんに声を掛けた方が良いかと思って壁際を見るがおっさんはいない。さすがに四六時中あそこで寝ているわけではなさそうだ。詰所を確認しようと確認しようと門を跨いだその時
「…?」
門の手前にいる。何が起こった?確かに俺は詰所を確認しに門の外へ出たが……引き戻されたのか?試しにもう一度門の外へ出てみる。体が門を潜り抜けた瞬間にまた、門の手前にいる。どういうことだ?今度は門ではなく隣の壁から外へ出てみる。軽く助走をつけて発条のように飛び跳ね、壁を越えた瞬間、門の手前にいる。この街は武器屋の通りを挟んで門が構えられているため、今度は反対側の門から外出を試みる。通りを抜けて最初と同じように門を潜ると、門の手前にいる。
…つまりこれはあれだ。閉じ込められている。確かに俺はこの街は嫌いじゃないし定住するのも大歓迎ではあるが流石に出られないのは困る。
なんて洋画風に気取って言ってみるが実際は大問題である。これは流石に不思議な自然現象の範疇ではないだろう。明らかに意図的に内部の人間を外へ出さないようにしている。ここは冒険者の街だ。きっと多くの人々が毎日ここや反対の門を出入りする。なのに誰もこれに気づかないなんて事があり得るのか?そんな訳がない。だとすればなんだ?文字の体を成していない文字にも、街の外に出る事を阻む何かにも「気づかない」「気にしない」理由は一体何なんだ……?
「……違う」
ふと、一つの仮説に辿り着く。もしかして「逆」なのか?もしもこれまで考えていた事象の矢印が間違っていたとしたら。これまでの筋道が全部逆向きであるとしたのならば。そうであるのならば。これまでの現象にも説明をつけることができるのではないだろうか。仮説通りに物を考えた場合、俺のするべきことはただひとつとなる。それはつまり……。
「…脱出だ」
どうやらここに俺の求めた自由と平穏は無さそうだ。
最後まで読んでくださりありがとうございます!やっとイベントを起こすことができました……危ねぇもう少しで昼飯の〇儀になるところだった(꒪ཫ꒪; )
新話はまたしばらく先になりそうですがなるべく早く投稿しますのでどうか気長にお待ちくださいm(_ _)m




