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怪奇十三話  作者: 杉勝啓
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第九話 牡丹燈籠

今は昔


女がいました。


女は裕福な大店の娘でしたが、生来、身体が弱く、また、継母との折り合いも悪かったので、乳母と二人で寮に住んでいました。


ある燈籠祭りの日、女は美しい男に出会いました。男は町方の同心でした。女はその同心に恋をしましたが、引っ込み思案な女は恋しくてもそれを男に告げることもできないまま、恋がれ死にしてしまいました。仕えてくれていた乳母も間もなく、世を去りました。


そんなこととはつゆ知らない同心はある町娘と恋仲になり、祝言をあげることになりました。祝言の日も近づいたある夜のこと。いつもの見廻りの帰り道、うずくまって苦しそうにしている娘に出会いました。

連れの女が言いました。

「もし、どうかお嬢様をお助けくださいませんか」

「どうかされましたか」

「はい。お嬢様の持病のしゃくが。恐れ入りますが、どうか、お嬢様を背負って家まで送ってもらえませんか」

同心は親切な質でしたので、娘を背負い歩き始めました。

連れの女が持っている牡丹の花のは描かれた燈籠の火が妖しく燃えています。そして。どうしたことでしょう。同心は、気づいていませんが、同心が背負っているのは骸骨なのです。骸骨でも高価なかんざしをつけ、着物を着ています。


家につくと同心は家に招き入れられ、酒を振る舞われました。それほど多くは飲んでないはずなのに同心は意識が朦朧としてきました。気づけばある布団の上で全裸で寝ています。胸には顔をうずめるように助けた娘が、これまた、全裸でいます。

「わ、私はなんということを、、、」

「お気になさらないでください。私もまだ嫁入前、いらぬ噂になっても困ります。これっきりにいたしましょう」


その日、同心はどうやって家に帰ってきたのかもわかりませんでしたが、抱いた女の感触が忘れられずにいました。なぜか同心はまた、娘の家にやってくるのでした。

「あれっきりと思っていましたのに。でも、おいでくださってうれしゅうございます」

娘はニッコリ微笑みました。

そんな夜が続きました。同心は結婚を約束した娘には悪いと思いつつ、その娘に惹かれてゆきました。


そして、とうとう、その結婚を約束した娘に別れを告げたのです。

娘は嫁ぐ日を指折りかぞえて、まっていたのに、突然の分かれに戸惑うばかりです。また、同心の窶れ方が、ただごとではない様子も気になりました。


ある夜、娘は同心の後をつけました。同心が入っていったのは荒れ果てた屋敷でした。娘も遅れて入っていきました。そして、娘が見たものは骸骨と抱き合う同心の姿でした。


あかあかと牡丹の花の絵が描かれた燈籠がその姿を照らしていました。


おわり



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