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怪奇十三話  作者: 杉勝啓
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第八話 古内裏の怪

今は昔


女がいました。


女の父は朝廷からの支配を離れて、関東の地に王道楽土を築こうとし、親皇を名乗りました。しかし、それは朝廷に弓引く行為に他なりませんでした。父は謀叛人として、捕らえられ、処刑され、その首は三条河原に晒されました。女はそんな父の遺志を継ごうとしました。しかし、か弱い女の身では、どうすることもできませんでした。そんな女に妖かしのものが語りかけてきました。

女はその身と引き換えに妖かしの力を手に入れました。


女はかって、父が内裏としていた屋敷に住み、あらゆる厄災を起こしました。朝廷の手先となって父を捕らえた親戚の者を次々に取り殺しました。帝が住まう都には雷を落としました。


心を痛めた帝は陰陽師に占わせました。さまざまな厄災は父の遺志を継いだ女の仕業と分かりました。帝はある武士に女を討つように命じました。


関東の地についた武士はその土地になんともいえない禍々しさを感じました。田んぼでは稲を刈っている農民の姿が見えました。やせこけて、栄養状態も悪そうです。これも、その女の仕業か。武士は陰陽師に教えられた内裏に向かいました。

内裏に入ると大きながしゃ髑髏が襲ってきました。これは幻にすぎぬと陰陽師にもらった剣を振るとがしゃ髑髏は崩れましたが、また、合体して遅いかかってきます。がしゃ髑髏は崩れては合体して襲いかかってきます。これでは拉致があかないと判断した武士はがしゃ髑髏を、あやつっている本体を倒さねばと、目を凝らしました。そして、みつけました。がしゃ髑髏を操っている女を。武士は女に斬りかかリました。女はかろうじて避けたものの、屈強な武士の敵ではありませんでした。

「怪しげな術を使う悪い女。観念しろ」

「悪い。妾を悪い女と、いうか。ならば、朝廷におもねり、いたずらに民の疲弊を招いている者たちはどうなのじゃ。父は民のため、この地に王道楽土を築こうとしたのじゃ」 

「ああ、もう、妖かしの力もきえてゆく。所詮は生身の人間。うちおしや」

女の言葉が終わるか終わらぬかの間に内裏の屋敷は崩れ落ちてゆきました。


気がつくと武士は田んぼのあぜ道に倒れていました。

先ほどみた農夫たちが話しています。

「前のご領主様の時はよかったな。みな、飢えずに腹いっぱいくえた」

「今はこの米もおらたちの腹には入らないだろうな」

農夫たちの話を聞きながら、武士の耳に女の言葉がこだましました。

「朝廷におもねり、いたずらに民の疲弊を招いている者」

「父は民のため、この地に王道楽土を築こうとしたのじゃ」


おわり


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