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怪奇十三話  作者: 杉勝啓
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第二話 ある城の怪

今は昔


男がいました。


男の夢は一国一城の主になることでした。ある主君のもと、男はある国を滅ぼしました。主君はその国の領地、城を男に与えてくれました。男は夢を叶えたのです。


ですが、領地の民はなかなか男に懐きません。自分たちが滅ぼした前領主はなかなかに善政をしいていたらしいのです。領民たちは前領主を慕っているのです。男は領地経営に苦労していました。


ある夜のことです。男は子供の笑い声で目が覚めました。な、なんだ、、この城に子供などいないはずなのに。男は部屋の外に出ました。男が滅ぼした前領主の若君や姫君たちが集まって笑い合っています。子どもたちの姿が消えると次に現れたのは、前領主でした。さては恨んで迷ってでたか。男は刀に手をかけました。しかし、前領主は微笑んでいます。

「お茶でもいかがですか」

前領主の横には茶釜があり、茶の湧く音がしています。前領主は茶釜から茶をすくうと男に差し出しました。

男は恐る恐るうけとりました。

「恨んで、迷ってでたのではないのですか」

「まさか」

前領主は首をふりました。

「あなたに頼みがあってでてきたのです」

「頼み?」

「これを」

前領主が取り出したのは一枚の地図でした。

「この城は山城。不便でしょう。この地に新しい城を建ててもらいたい」

男は地図を見ました。なるほど、ここなら、都にも近く交通の便もよい。男は思いました。

「この城を破却して、ここに城下町を経営すれば、他国から人がよってきて、金を落として行ってくれます。また、商業が盛んになれば、農民たちからの年貢米に頼らずとも領地経営は行なえます。この地に移ってくれば税をしばらく免除するといえば人は集まりましょう」

「そのため、いささか、準備もしていました。この国にある湖に浮かぶ島に建築材を預けてあります。それを受け取ってください。湖の水運を利用したどこにも負けない都を造ること。それが私の夢でした。どうか、あなたに私の夢を叶えてほしい」

男はだまって聞いていましたが、疑問を前領主にぶつけました。

「それなら、なぜ、我が主君に敵対したのです。我が主君はあなたを認めていた。信頼していたといってもよい」

前領主は、また、微笑みました。

「あなたの主君は素晴らしい方だ。敬愛していました」

「では、なぜ・・・」

「血がたぎったのですよ。戦ってみたかった。倒したいと思った。いってみれば私のわがままです。そのために妻子、家臣、領民を巻き込んでしまった。なかでも領民にはすまない。もともと、この地は緑豊かな美しい土地でした。ですが、長年の戦さのため、疲弊してしまった。どうか、この地をよみがえらしてください」

前領主の姿は消えました。


夢を見ていたのだろうか。気がつけば男は寝所にいました。

夢ではない証拠に前領主が指し示した地図が手に握られています。

男は、前領主の助言どおりに、城下町経営をすすめていき、その地は大変栄えました。


おわり

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