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  作者: 宮嶋 健吾
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穴 2

 ドアを開けると男が立っていた。男はサングラスをしており、無表情で何を考えているか想像がつかなかった。

「時間だ」男はそう言って部屋の中に入って来てソファに腰掛けた。暗かったので電気をつけると吊り下げられた電球に男が照らされ薄明かりはまるで取調室のようだった。やけに静かで気まずい空気が流れていたのでテレビをつけた。朝の地方ワイドショーでローカルタレントが話題のスイーツについてコメントしていた。

「消せ。お前シャワーでも浴びるつもりか」

「朝起きたらすぐテレビをつける癖なんだ」

「いいから消せ」男は言葉を遮るように言った。再び気まずい空気が流れ無言の尋問にあっているようだった。脱ぎ散らかされた洋服をリュックに詰め始めた。

「サリンジャーか」ベッドの上に残された本を見て男は言った。

「ライ麦畑でつかまえては名作だよ」

「後世にこれほど伝えられていると言う点ではな。捻くれ者は俺は苦手だ」その本は古本屋で買ったもので一枚一枚のページは赤茶けていて裏側には百円というシールが貼られていた。

「こんな日本の片隅にいる人間にまで知られているということはたいそう窮屈だろうな」

「幸せなことなんじゃないか?いずれにしても何もなしていない人間が考えることではない」果たして幸せなことだろうか。男が言った言葉は全く予期していなかったがこれ以上議論する気にもなれないのでリュックの奥の方に本を仕舞い込んだ。準備が終わり男に連れ立って廊下へ出た。

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