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154センチ

二日酔いの頭を抱えて、寝返りを打つ。


クロエが帰ってくると心配するから、家に帰れ、と、家に送り届けられてしまった。

帰ってこないって、、、


暑くて、開けっ放しの窓からは、風が入る。チビ助が新しくつけたカーテンが揺れる。

せっかくの休みなので、、二度寝を決め込む。


風に乗ってふわりと、香水のにおいがする。

ああ、、、また、チビ助に怪しい匂い、とか言って、嗅ぎまくられるかな、、、、


ええ??


びっくりして、二度見する。


起き上がると、隣に女が寝ている。

必要以上に空いた襟元から、盛り上がる胸が見える。

けだるげに前髪をかきあげて、、、、かなりの美形だ。


え?誰?


「あらあ、、、うふふっ、、、、起きたの?昨日は楽しかったわね。」


化粧のにおいがきつい。あと、、香水、、、

・・・・なにか、、、楽しいことがあっただろうか?従業員みんなと、しんみり飲んでしまっただけだけど、、、、こんな女、連れて帰った記憶は、、、、ないな、、、誰?

だいたい、、、俺は酔っても女を連れ込んだりしない。


上半身を起こして、しだれかかってくる、、、

「もう、、、離れないわあ、、、」

え?何のことですか?

眼をウルウルさせて、ぷっくりした唇を半開きにしている女、、、朝だよ?



「ちょっと、お待ちいただけますか?お姉さん。」



バタンとドアを開けて入ってきたのは、、、、クロエ???なぜクロエ??



「私たち夫婦間でお話しなければならない事案が発生しているようなので、そのまま、お待ちくださいね?」


にっこり笑っている顔が怖いよ?クロエ、、、


「レオ!ちょっとこっちに来て座りなさい。」

「・・・・・」

俺はしぶしぶベットを出て、椅子に座る。急に呼び捨てだし、、、

立ったままのクロエが、やや俺を見下ろす形だ。


「で?どういう状況なのか、説明頂いても?」

「・・・・・」

「言い訳できないようなことを、してしまったのですか?」

「・・・いや、、していない、、、、目が覚めたら、知らない人がいた、、、、」

「あんなに、色っぽい恰好で?ですか?」

「本当に、、、身に覚えがない。」

「大体の殿方は、そのように言うのだ、と、先生もおっしゃっていました。奥さんが里帰りしているときの浮気の発生率はかなり高い、と。次は妊娠中らしいです。

それとも、、、、このような状況を求めて、先に帰ったんですか??そして、あの方はあなたの恋人ですか?それで、私を置いて帰った、と、、、そういうわけなんですね?」

「・・・・いや、ちょっと待て、、、おまえ、そもそも、婚約者どうした?

おまえだって、肝心なところを俺に伏せていただろう?どういうことだ?」

「は?婚約なんかとっくに解消しましたが???うちの経営が少し傾いたくらいで縁を切ろうなんて考えるようなところ、こっちから願い下げですわ!!!」


クロエは腰に両手をあてて怒っている。

俺は、、、膝に両手をついて、、、、怒られてる?


「だって、、、婚約解消されて、がっかりしていたと聞いたぞ?」


「は?解消にがっかりではなくて、、、王城の社交界デビューのダンスパーティーには行きたかったな、って思っただけです!!!若気の至り、です!!」


・・・・いや、、、十分若いだろ?


「じゃあ、残念だったな、俺のところにいても、王城の舞踏会の招待状は来ないから。実家に帰れ!」

「はああ??浮気現場を押さえられて、逆切れですか??ありえないんですけど?」

「は?」


クロエが、突然、俺の首に抱き着いたから、、、びっくりした。

やっぱり、ぷくぷくしているな、、、石鹸の匂いがする、、、

俺の首元に顔を埋めている。


「私は、、、レオがいなくて、寂しかったです。急いで帰ってきたんです、、、」

「・・・う、、、うん、、、」

「レオが、、、あの方を選ぶというなら、、、身を引きます、、、」

「・・・・・あのな、、、クロエ、、、、俺は、、孤児なんだよ?」

「それが?なにか?私は、レオが好きですよ?」

「お前の家とは身分も違うし、、、、家族なんてわかんないし、、、」


「・・・大丈夫ですよ。私たち、もう家族ですし。」


「それに、、、お前、担保物件なんだよ?完済したら、どっちみち返さなくちゃならないだろ?何年もお前を縛り付けるわけにはいかないし、、、だったら、、、返すのは早いほうが、、、、俺も、、、いい。」


・・・こんな生活に、慣れる前に、、、、


「まあ、、、レオ、、私は私の意志でここに戻ってきたのよ?お父様に言われたからじゃないわ、、、あのね、、、あなたを一人にするのが心配だったの、、、だから、どこにもいかないわよ?あなたが、、、、いらない、って言う以外は。」

「・・・・・」

「もう、、、私はいらない?」

「・・・・・」

「あのお姉さんと生きていくの?レオ?」

「・・・・・」

「どうなの?私は要らないの?」


「・・・・いります、、、、、」


いい匂いだなあ、、、、

思わず、、、クロエの背に手を回す。なんか、、、落ち着く匂いだと思う、、、

ふっくらしているから、抱き心地も良いし、、、、


「レオ、、、、、お酒臭い、、、」

「ああ、昨日みんなで飲んだんだ。あの、、、みんな、お前の帰りを待っているんだけど、、、、」

「・・・・レオは?」

「あ?」

「レオは、、、待っていてくれなかったんですか?そうですよね、、、、さっさと綺麗なお姉さんをベットに連れ込むくらいなんだもの、、、、、私が子供だからですか?」

「・・・・だから、、誤解だって、、、」

「誤解??いや、、、事実でしょ??現に、今、ここに、あなたの浮気相手がいらっしゃるでしょ???私だって、、、あと2年も待ってくれたら、、、あのくらいにはなりますから!!!背も伸びるし、、む、、、胸だって、、、、待てますか?」

「はああ???」

「・・・だから、、、2年待ってくれますか?早く大人になりますから、、、」

「・・・別に、、、、、」

「え?」

「そんなに急いで大人にならなくてもいい、、、な?」

「だって、、、、そしたらまた、お姉さんと、、、、、」

「だから、、、」


「ハイハイ、夫婦げんかのところ、失礼するヨ。お帰りクー。」


勝手口から入り込んだリーが、二人の夫婦喧嘩を呆れて見ながら寝転がっていたお姉さんをあっという間に拘束した。

「あんた、何すんのさ!!離しなさいよ!」

「この人、ちょっと預かって、事情を聴いてくるから。まあ、二人は続けてヨ!じゃあねえ」


ぽかんと、去っていく二人を眺める。

窓から入る風が、香水の残り香を運んでくる。


「え、、、と、、、」

俺にしがみついた自分に気が付いたクロエが、首まで真っ赤だ。


「・・・お帰り、クロエ。」

「・・・はい。ただいま帰りました。お水飲みますか?」

「うん。」



こうして俺はかなりあっけなく、17歳も年下の小娘に陥落した。


しかも、、、たった3か月で、、、



同時に、、、あと2年間、修行僧のような生活を送ることが決定した。

賭けにも負けた。それもまあ、、、、いいかな。



*****

家には食料が無かったので、市場に買い物に行った。昼飯は一緒に市場の近くのカフェで食べた。


近所のジジババに、クロエがお土産を配りに行った。

「あらあ、クーちゃん、お帰りー」

笑い声が聞こえる。


見知らぬお姉さんが寝ていたシーツは、クロエが引きはがして洗っている。あれは絶対にまだ怒っている。洗い方が、、、、


ソファーでゴロゴロしているうちに、寝てしまった。

なんだか、、、、もう何年も、こんな生活だった気がするのが不思議だ。たった3か月なんだけどね、、、


「あら、ごめんなさい、、、おこしちゃった?」

夕方になったのか、風が少し涼しい。クロエが俺に薄いタオルケットを掛けてくれたところだった。

「晩御飯が出来たら起こすからね。もう少し寝ていていいわよ。」


窓際に、クロエが、旅の途中で買った木彫りのクマを飾った。

大きいのと、中くらいの奴。

夏用のカーテンが、ふわりと二頭のクマを撫でている。


やっと、自分の家に帰ってきた、ってこの感じは、、、なんとなく不思議で、くすぐったい。

もともと、、、自分の家なんだけどね、、、



*****


「それでな、あのお姉さんだがな、、」

「・・・・・」

晩御飯の時間にやってきたリーが切り出す。台所にいるクロエに聞こえないような小声だ。

「お前を誘惑して、骨抜きにしてくるように金を積まれたらしいな。隙をつかれたなあ、、、まあ、綺麗だし、肉感的だし、、、相手にするには良いよな。

ルビー商会あたりじゃない?直接ではないみたいだけど。考えることがかわいいよね。刺客とかならまだしもネ?」

「・・・・・」

「ルビー商会もラーシ領を押さえたくて画策していた。そこに、なじみのお前が鍋を2万個も発注したから、それ以外の大口注文は取れなくなった。鍋、、、大成功。」

「ああ、、、、で、どうする?あの女?」

「戻してもなあ、、、、面倒だし、ヤッチャウ?」

「いやいやいやいや、、、、殺すなよ、、、」

「そう?じゃあ、、、どうする?」

「・・・パオラにでも預けて、一から躾けてもらうかなあ。」

「甘くない?まあ、お前らしいか。パオラさん、優しい顔してるけど、、、結構厳しいからねえ。事務棟に閉じ込めて置けばお相手とも接触できないし。まあ、いいんじゃない?でも、、、、、クーは納得する?お前の浮気相手を身近に置きたいなんてさ、、、、」

「う、、、浮気相手じゃないから!・・・・お前から、言って?な?」

「おいおい、レオ、なのに、子犬みたいだな。ハハハハハ!!」


台所から晩御飯を運んできたクロエが、リーの笑い声につられて笑う。


「なあに?楽しいお話?」


「ああ、あのお姉さん、商会で働くことになったんだヨ。パオラさんに躾けてもらうカラ。クーちゃんもよろしくネ?」

「・・・・・まあ、、、、ほんと、、、、思ったより楽しいお話ね、、、、、」

「・・・・・」

おい、リー、、、、、

「だろ?まあ、ホントのこと言うと、刺客みたいなもんなんだ。返すと、お姉さんの身が危ないカラ。」

「・・・・・返さなくても、、、、、危ないと思うけど???」


俺を睨むな、、、クロエ、、、


「ああ、今回は未遂みたいだヨ?レオとはいたしていないってさ。これから誘惑して、骨抜きにする予定だったみたいだヨ?」

「・・・・骨、、、、ぬき、、、」

「昨日、花街に飲みに行っても、こいつ、ぼーーーーとしていたから。女、買ってないし。まあ、今回は信じてあげてよ。」

「今回、、、、は、、、?」

「んんん?」

「ねえ、リーさん、骨抜き、って、どうやったらいいんですか?殿方は骨抜きになりたいんですの?まずは、なにから、どうすれば???」

「ハハハハハ!!大丈夫!こいつもう、骨抜き済み。思ったより早かったね。いいと思うよ。」

「はい?」

「・・・・リー!」

「はいはい。さ、ご飯にしよう!冷めちゃうヨ!!」


鶏肉のソテーにトマトソース掛け。トマトのスープ。トマトが安かったから。

リーの帰りがけに、お姉さん用の晩御飯を持たせる。























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