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まだ152センチ

飲み足りない、と、騒ぐリーを引きずって、宿舎まで帰る。

俺も飲み直しだ。タイを緩めて、上着を脱ぐ。


「公爵夫人とは、いい関係みたいダネ。」

「・・・ああ、、、顔も広いし、情報もくれる。」

「僕も、色々聞きだしてきたよ。ルビー商会。」

「・・・・・」

「上位貴族に、プレゼント攻撃しているみたいだぞ。宝石とか、、、」

「・・・・・」

「まずいね。あそこ、フール系の武器を扱う商社だろ?名前は変えているケド。ここまで巻き込まれたら、帰れなくなっちゃうヨ。」


リーは、自分のグラスに酒を注ぎながら言う。じゃあ、、早く帰れ。


「狙いは、イリアかな?ブリアをいきなりは狙わないとは思うけど。まあ、正常な判断ならね。」

「・・・この国の将軍は、きちんとした判断ができる人だ。何かあるかもな。」

「そおお?金でも握らせられたカモ。意外ともろいヨ。」

「・・・・・」

「お前が、クロエとのうわさを真っ向否定したのは正解ダナ。うやむやにすると、、、、あの子がお前の弱点になるからナ?本気なら、、、、気をつけろ?」

「・・・・・」

「でも、、、いい子だよネ、、、もちもちしてうまそうだし。」

「・・・・・」


俺もグラスの酒を空ける。

面倒ごとに巻き込まれたくない、、、、



*****


リーと明け方近くまで飲んで、薄っすら明るくなるころに、隣の自宅に帰り着いた。

テーブルに水差しとグラス。水を飲んで、、、寝ようと自分のベットに潜り込もうとして、、、猫みたいに丸まって寝ているクロエに驚く。

おい。


そっと、頭を撫でてみる。


ベットの端に腰かけて、いつの間にか当たり前のように綺麗に整えられた自分の部屋を眺める。

カーテン越しに、水差しに朝日が当たって、、、きれいだ。




*****


王城のカーテンの手配を、パオラさんとリーさんに丸投げして、レオが、私の父の領地に行くというので、一緒に出掛けます。


父に会うのは、3か月ぶりです。避暑を兼ねて、ミカエルと先生も領地にいらっしゃるようです。楽しみだわ!

事務棟に預けた着替えから、夏用のワンピースをカバンに詰めて、出発です!

レオとお出かけ!レオの親代わりの師匠様は厳しい方と聞いたけど、こんなに優しいレオに育ったんですもの、良い方に違いないわ!


それに、、、新婚旅行みたいじゃない?


北街道で王都を出ると、小麦畑の広がる平原を越え、次の宿場町で一泊。

庶民用のホテルのお部屋は、うちより少し小さい位かしら。一人部屋を一つと二人部屋を一つ取る。ノアは馬の手入れに行った。


「・・・おまえ、、一人部屋でいいだろう?こっちで俺とノアが泊まるから。」

「は?なぜですの?意味が解りませんわ?夫婦ですのに。」


カバンから着替えを出す。レオのカバンからも着替えを出して、ハンガーにかける。


「・・・・・」

「まだ夕食の時間に間がありますから、あちこちお店を見に行きましょう?」


渋るレオを引きずって、町に出る。


レオは手土産を用意してくれているようだけど、、、私も、仕事した分の給金があるので、それでお父様とミカエルと先生にお土産を買いたい。

あちこち見て、お父様にはクマの彫り物を。これは、北の国からのものかな。

ミカエルには子熊の彫り物。先生には、、、中くらいのクマの彫り物を買った。満足。


「悩むだけ悩んで、、、みんな、クマでいいのか?」


レオも欲しかったのかしら?


「お前も欲しいなら、買ってやるぞ?」

大きいクマと、中くらいのクマを自分用に買ってもらった。うふふ、、、


金物屋を覗いたりしている。鍋が欲しいのかしら?


鍋なら、国内産より、フールの金物のほうがちょっと質がいい。加工技術の問題?

買うなら、フール産にしてね?と、声を掛けたら、びっくりされてしまった。考え事?

「ほら、フールの鍋はね、ポコポコ叩いてあって、軽いのよ。でも、十分丈夫よ。普通は重いでしょ?持つのが大変だから、買うなら、こっちにしてね?それにしても、、、、随分高くなったわね?」

「おや、お嬢ちゃん、鍋かい?そうだね、お父さんに買ってもらうなら、少しばかり高いが、こっちのほうが、持つには軽いよ?」

「あら、店主。お父様ではないわ。私の旦那様よ?」

「・・・・ああ、、、あ、、、ごめんね、、、」

「それにしても、随分と高くなったわね?」

「そうなんだ、ここ半年くらいかなあ、、、あんまりフールから入ってこなくなってなあ、、、、今が買い時かもよ?」

「あら。商売上手ね?」


店主と話している間も、鍋を持って考え事しているレオ。欲しいの?買うの?


結局、ぽこぽこ打ってあるフール産の片手鍋を一つ買った。

色々使い勝手が良さそうだ。



*****


領地に着いて、よくよく考えたら、公的にはもう私は領主の娘ではなく、取引先の連れ合い、という立ち位置だ。レオが、、、連れ合い、と、思ってくれているかどうかは別として。


レオの一歩後ろを歩く。


レオとお父様の挨拶が済んで、、、

「・・・ハウル侯爵様、、、この度は、お世話になります。」

と、挨拶した私を、父もレオも何とも言えない顔で見返した。


「まあ、いい、、、、俺は師匠に挨拶に行ってくるから、お前は積もる話でもしていろ。な?」

ぽんぽんと頭を撫でられてしまった。


父の私室で、ミカエルと先生が待っていてくれた。お久しぶり!と、言ってもまだ

三か月くらいなんですけどもね、、、色々ありましたから、、、

「本当に、少し大きくなったね、クロエ、、、元気そうだ。」

「はい、、、皆さんも、、、」


私たちは三か月分の話をした。

クマの彫り物も渡した。


*****


二日滞在すると、レオは仕事が残っているから、と、私を置いて王都に帰ってしまった。気を使われているんだろうな。


レオの師匠に挨拶したり、柵の修理の補助をしたり、馬に乗って放牧場を見に行ったり、、、たった二日間だったけど、一緒に居られて楽しかった。ここでだだをこねると、子ども扱いされると思って、ちょっと我慢した。


豚は思ったより大きくなっていた。8か月くらいで出荷できるそうなので、この秋には売り上げになる。次の子豚が生まれてくる、、、、しかも、一頭あたり半年に一度、10も子供を産むらしい!すごいわね!鼠算ならぬ、子豚算だわ!!


領地内ではフールから来た技術者が先頭になって、豚の加工所の建設も進んでいる。

ベーコンとか、ハムとか、、、

従来の乳加工品、チーズとかバターとかも並行して新しい加工所を作り、領民を雇い入れていくらしい、、、、、すごいわ!!

養豚を提案してくれた先生ももちろんすごいけど、効率よく生産・加工まで進めてくれたレオも、彼の師匠も!!!


御言葉に甘えて、3週間くらい滞在し、侯爵家の馬車で帰りは送ってもらうことにする。

カバンにしまった《《番の》》クマを時々取り出して眺める。

パオラさんがいるから、着替えも、食事も心配ないんだろうけど、、、、、


なんだか、、、、落ち着かないし、、、


無理を言って、1週間目で王都に送ってもらうことにする。


*****


ハウル領から帰って、たまった仕事を片づける。

カーテンの進捗状況を確認。リーが滞りなく進めていてくれた。


「いい具合だよーーー間にあうよ。ホント、良い生地だヨネ。色味も雰囲気もいい。

僕も後から注文するかも。その時はヨロシクね。」

「家のカーテンには重いぞ?」

「まあ、使い道はいろいろさ。あ、、、、そう言えば、オマエの机にあった注文入れといたから。ラーシに、鍋。」

「は?、、、、、何個頼んだ?」

「2万個。」

「・・・・・」


こいつ、、、


俺は、旅行用のカバンにしまった片手鍋を思い出して、リーに見せる。

「どう思う?」

「・・・・ああ、いいね。フールの加工だろう?あの国はこういう加工技術が高いよね。この加工が、ラーシで出来るのか?」

「たぶんできない。が、やらせる。」

「ほお、、、、、」

「お前、ちょっと行ってこい。ラーシまで。どうせ暇だろう。製品にする前で止めて置け。」

「はいはい。意外と人使い荒いねえ。鍋は預かっていいのカ?クーの鍋じゃないのか?」

「・・・大丈夫。すぐにでも行ってくれ。」



ハウル侯爵には伝えてきた。


もともと投資のつもりなので、もちろんつぎ込んだ資金は回収するが、、、担保として娘を寄こすなんてこと考えなくていい、と。


使用人たちに聞いたら、伯爵家嫡男との縁談もあったらしい。


この春、突然の災害に見舞われてしまったので、婚約が解消されていたが、この調子だと、、、返済も早まりそうだし。再度、縁組されるだろう。


だから、まあ、、、、あのチビ助はもう帰ってこない。鍋の心配もいらない。

預かった荷物も返さなくちゃな。貴族籍はなんとでもなるだろう。



「当主お帰りーーー!あれ、クーは?」


何人目だ、、、俺の顔を見て、みんな、同じ質問をしてくるな!!!


「実家に帰った。もう来ない。」


その度に、同じ返事をする。


「え?ケンカしたの?」


ちがーーーーう!!


家の近所のジジババまで、同じ質問をしてくる。めんどくさいので、、、しばらくは事務棟に泊まっている。


そのうち、みんな忘れてしまうさ。

俺も、、、忙しいし。


「あら、クロエ様は?」

パオラまで、、、、

「ケンカしたんですか?仕事はいいですから、早く迎えに行ってきてください。クロエ様、待っていますわよ?」

「・・・・・」


あのなあ、、、、



久し振りに、みんなを連れて花街に飲みに出掛ける。

そうそう、、まさに独身貴族だね、、、平民だけど。


「みんな、好きなだけ飲め。気に入った女がいたら、いいぞ。俺のおごりだ。」


いつもなら、おおーーーっと盛り上がるセリフのはずなんだけど、、、なんか、みんな、どうしたの?奢り、だよ?


「・・・・いえ、おれは、、、今日はいいです。飲むだけで。」

「俺も、、、当主、、、元気出してくださいね。」

「クーのことだから、、、きっと帰ってきてくれますよ。そんな子じゃないから。」

「そうですよ、当主。ヤケになるのは早いですよ!」


え?何の話??


「フェデイが寂しがってなあ、、、早く帰ってきてくれないかなあ、、、」


だから、、、帰って来ないんだよ?


リーだけが、両手に美女を抱えて、酒を飲んでいる。相変わらず、マイペースだな、お前、、、


「帰ってくるに、一万ガルド。ふふっ」


リー、、、うちは賭け事禁止だから。


「おお、俺も、帰ってくるにかけるぞ。1万。」

「そうですよね?僕も帰ってくるにかけます。1万。」


・・・・お前たち、賭け事は、、、、一方通行では成立しないんだよ?


「・・・じゃあ、、帰ってこないに10万ガルド。あいつ、ああ見えて、実は侯爵令嬢なんだ。実家に送って行ったから、もう帰っては来ないんだよ。伯爵家の息子と結婚するんだ。悪いな。」


「ええ??当主、捨てられちゃったんですか?」


「それで、、、、家に帰るのがつらいんですね、、、、」


おい、、、、、












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