表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/15

152センチ

今日は午後から、王城のセレモニーホールのカーテンの入札がある。

決まれば大きい。

うちの商会は、、、今一歩のところで御用達、まで行かないんだが、公爵家が後押ししてくれるので、参加権は取った。物には自信があるから。舐められないようなきちんとした装いで向かいたい。


カールが用意した見積書を再確認する。サンプルも見直す。

このサンプルは、あの胡散臭い男も誉めてくれていた。悪い気はしない。


そうしている間に、クロエが俺の髪に櫛を入れる。鼻歌を歌っている、、、

椅子に座っている俺と、同じくらいの目線だ。


書類をしまって、来ている手紙を開封して読む。

大体は、、、資金援助しろ、だの、新製品が出来たので見に来てくれだの、、、、


「え?」


何通目かの手紙に、驚く。フールにいる師匠から。


【お前に頼まれていた牛と豚は出発させたから、あと、2週間。飼育担当者は2名。ブリア語が使える。

フールの軍部の動きが不審。秘密裏に武器を集めている商人がいるから、お前のとこも気をつけろ。金物加工から目を離すな。いよいよ危なくなったら、ブリアにみんなで引っ越すから。よろしく。30人くらいかな。今回は避暑を兼ねて、様子見がてら、少し遅れてブリアに入る。】


「あら、ではだんだんつきますね?」


お前、、、フール語読めたの?肩越しに声がする。


「30名くらいでしたら、うちの領主館にお住まいになればよろしのでは?無駄に広いですから。落ち着くまで、いくら滞在していただいても。レオ様の、大事な方なのでしょう?」

・・・・いい考えかも。どうせ、あの人のことだから、商売はどこでも動かすだろうし。でも、俺のテリトリーに入り込むのは勘弁してほしい。


しかし、、、、軍部がきな臭いとか、、、師匠が言うなら、近々何かしら起きるの確定だな。ブリアに飛び火しないことを祈ろう。金物、、、か、、、ラーシ領を押さえておくか、、、鍋でも大量に発注する??ま、師匠と話してからでいいか、、、、ラーシで、鍋、と、メモをしておく。


フールの国王は、平和主義なおとなしい方だったから、、、国もまあまあ、、よく治まっていたし、、


「じゃあ、クロエ、お願いしたい。経費は心配ないからな。ハウル侯爵には、、、」

「私が書簡を送っておきますわ。レオ様はお忙しいんでしょ?」


こともなげにそう言うと、はーい、いい男が完成しましたあ、、と、、、俺の肩をポンポンっと叩いた。



*****


【お父様へ


皆さまお元気でお過ごしでしょうか?


春に頼んでいた子牛や子豚が、あと10日ほどで到着の予定です。


飼育指導の方が2名来てくださいます。帰り荷で、小麦を買い付ける予定だそうですので、荷馬車を入れ替えて差し上げてください。匂いが抜けないでしょうから。


後ほど、旦那様の親代わりの師匠様も様子を見にいらっしゃるそうです。

お付きの方も含め、総勢30名ほどになるかと。

避暑を兼ねて、長期の御滞在になるようですので、領主館の用意をお願いいたします。滞在中の経費については、ご心配なく。


だんだんと暑くなってまいりましたね。

お体御大事に。


旦那様が、師匠様にご挨拶に伺いたいとおっしゃっておりましたので、私もご同行できればいいなと、、、、

それでは、先生やミカエルにもよろしくお伝えくださいませ。


                           クロエ】



*****

6月末には無事に、師匠たちの商隊がハウル領に入った。


追って、師匠たち御一同もハウル領に入った。

そのままただ滞在するわけにもいかないので、畜舎の建設や、柵の修理や、、、、色々手伝うことにしたようだ。事務管理は、あちらにもエキスパートが揃っているので、うちから出さなくてもよくなった。

小麦を買い付ける班は、東部のユーハン領に向かった。心配していた荷台は、ハウル家のものと入れ替えてくれたようだ。


そのうち、顔を出しに行こうと思う。



*****

王城に詰めていたカールが、帰ってきた。


「当主、王城のカーテンの受注、取れました。秋の舞踏会まで間に合わせるように、と。」

「・・・10月末か?間に合うか?」

「はい。急がせます。」

「頼む。手配は任せた。」

「はい。それで、、、、」

「ん?」

「公爵家夫人が、、、、」

「ああ、、、、お礼に伺うか、、いつだ?」

「今日の、夕方からのサロンに来てほしいそうです。いかがいたしますか?」

「・・・・行くしか、ないんだろう?サロンは何人呼ばれているんだ?」

「侯爵家以上の奥方、今回は10名ほど。深紅のバラを手配いたしました。金目のものは、他の方に誤解を与えてしまいそうなので、、、フールの30年物のワインを、何本か。」

「まあ、妥当な線かな。お前も、正装しろ。少し遅れて行こう。」

「・・・・・」


サロンとか言っても、ご婦人方の噂話の井戸端会議、みたいなもんだ。

俺みたいな平民がのこのこ行けるところではないんだが、、、まあ、、しょうがないか、、

クロエに言って、支度を用意してもらう。こいつも、程よく、を、よく知っている。13の小娘だけどね。


「・・・そういうわけだから、今日の夜は遅いから、ちゃんと鍵かけろ。リーに気をつけろ。晩飯を渡したら、勝手口も閉めろよ??寝ていていいからな?」

「はいはい」

「なんなら、、パオラを連れていくか?」

「大丈夫ですよ!子供じゃないんですから。」


・・・子供じゃないか、、、



夕方、馬車に乗り込むと、カールの場所に、、、リーが正装して乗り込んできた。

ナニヤッテルノ???

「カールが、腹がいたいというので、代わったんだヨ。サロン?いいねえ」


カール、、、、行きたくないのは、俺もだ、、、覚えてろ、、、


「大丈夫!うまくやるよ!クーに晩飯は要らないと言ってきたカラ。お前、俺とクーが一緒にいるの心配なんだろ?フフフ、、、カールの支度が、サイズピッタリで良かったな。久しぶりにいい酒が飲めるナ!」


いや、お前、宿泊所に置いてある酒、飲んでるでしょ?いいやつだよ、あれ。

それに、、、クーとか、、、なんなの?


まあ、、、いいか、、、あの人たち、退屈してるから、リーみたいないい男は歓迎されるだろう。長い黒髪を後ろに緩く縛っている。色気もある。俺にとっては胡散臭いだけだけど、、、エキゾチック?ミステリアス?、、、カールは、、、いつもご婦人方にかわいがられているし、、、



開催時間から、ほんの少し遅れて行くのがコツ。深紅のバラは、かなりの本数が、上品にラッピングされている。一歩遅れて、ワインを持ったリーが続く。




*****


眠れませんわ、、、、


レオはまた、あのバラの香りの人といるのかしら?

匂いが移るくらい近くに。

大人の人なんだろうなあ、、、当然、、、


私も早く大きくなって、、、、レオの隣に立ってもおかしくないように、、、


帰ってきたときに、真っ暗な部屋では嫌でしょうから、ランプを小さくつけておきますね。

明日の朝は、また御寝坊ですね?


なんだか、、頭に来たので、レオのベットに潜り込みます。

洗いたての枕カバーですが、レオの匂いがします。


早く帰ってこないかな、、、、、



*****


「あら、レオナルド、いらっしゃい。」


出迎えてくれた公爵夫人は、肩を出したブルーのドレス。胸がこぼれそうで危ない。

「まあ、素敵なバラ、、、、ありがとう。」

「いえ、公爵夫人の前では、くすんでしまいますね、、、」

「ふふっ、今日はまた、、、変わった毛並みの従者を連れてきたのね?」

「・・・ええ、リーと言います。お見知りおきを。」


控えていたリーが、公爵夫人に綺麗な礼をする。こいつ、、、なにもの?


リーが持ってきたワインとシャンパンを、執事に渡す。

銘柄を見て、眼をむいている。ああ、いい感じだね。


あちこち挨拶に連れまわされてから、ソファーに座る。

先ほどのワインが饗される。

「あら、いい年のワインね。さすがだわ。」

「お褒め頂き、恐縮です。此度は、お世話になりました。」

リーは、ご婦人方と歓談中だ。楽しそうで何より。


夫人のあふれそうな胸が、手に取ったグラスごと近づく。

「将軍がね、ルビー商会を押しているらしくて、このサロンにも呼ぶように、旦那様にお願いしたらしいわよ。」

「・・・・・」

「今回はお断りしましたが、、、、、本気みたいね、、、何かしら?」

「・・・・・」

「あまり、、、良い趣味の商会ではないでしょ?なんだか、、、将軍らしくもないし、、、気になって、、、、」

「・・・・・」

「あなたも、気を付けたほうがよくってよ。あの人も爵位持ちだから、、、」

「・・・・・」

表情を崩さず、ニコニコして聞く。はたから見たら、世間話しているようにしか見えないだろう。実際、他のご婦人方は、リーを囲んで、にぎやかにやっている。



「そう、、、、そう言えば、面白いことを聞いたわ。」

夫人が声のトーンを替える。聞こえてもいい話になるようだ。


「レオナルド、、、あなた、ついに結婚したんですって??」


ワインをのどに詰まらせそうだ、、、ごほり、と、息を吐く。


「貴方を狙っている人は多かったのよ?愛人にしてもいい、パトロンになってもいい、ってね?」

「・・・・・・」

「しかも、奥方はまだ、幼児だって噂よ?ホントなの?幼児はまずいわよね??」


やめてください、、、夫人、、、、


「あなた、、、だめよ、幼児相手に《《おいた》》は、、、」

「違います、、、都合があって、知人から預かっているだけです。本当です。紛らわしい言い方はおやめください、、、、」

「あら、、、そうなの?」

「はい、、、」


気が付くと、ピンクのドレスのご婦人の腰に手をまわしたリーが、にやにやしながら俺を見ている。お前、、、、笑いごとか、、、


まあ、やっぱり、なんて、声が聞こえる。勘弁してほしい、、、

公爵夫人が扇子越しに楽しそうに笑っている。





















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ