150センチ
さんざん匂いをかがれ、、、、、、なんなの?大人は仕事しているんだよ??
やっと、晩飯。お祈りをして、食べる。
今日はキャベツと豚肉の煮込みと、キャベツのスープ、キャベツのコールスローサラダ、、、、なんでこんなにキャベツ?
「今日、市場に参りましたら、キャベツがたくさん売れ残って困っている、というおばあさまがいらして、買ったんです。たくさん。」
「・・・・・」
まあ、、、うまいからいいけど。
「あんまり沢山買ったので、運べなくて困っていると、ご近所の方々が運んでくださって、お礼に、キャベツをひとつづつ差し上げたんですの。」
「・・・・・」
どんだけ買ったの?
「そうしたら、みなさん!豚肉とか、ベーコンとか、ジャガイモとか、ニンジンとか、、、いろいろ持ってきてくださいましたの。うふふっ。みなさま、親切ですね?これも、旦那様の日頃の行いなんでしょ?」
「・・・・・」
いや、、、みんな、興味津々なだけだと思うぞ。
なんかお前、、、勘違いしてない?俺はお前の父親を助けた形になってるけど、、、ただの投資だから。かかった経費はちゃんと回収するから。別に、人格者、とかじゃないから。近所の人からも胡散臭い奴だと思われてるから、、、、
俺は、キャベツスープをお代わりした。ベーコンがいい仕事をしている。うん。
まあ、、、キャベツ位ならいい、、、問題は、、、この部屋いっぱいのチビ助の荷物じゃないだろうか?今日、、、どこで寝る気なの?
て、いうか、、、、やっぱり、今日も泊るんだね?
「荷物は最小限にしたんですけど、、、ちょっと多かったですね、、、でも、ほら、夏物とか、冬物とかのお洋服もいりますでしょ?なるべく、質素なものを持ってきたんですのよ?ただ、、、」
「?」
「ただ、、、貴金属とか、、、母親の形見とかは、今回の領民への補償に手放してしまって、、、え、、、と、、、持参金は用意できませんでした、、、、すみません。」
そこまで言うと、しゅんとしてしまった。
いや、、、それは賢明な判断だと思うぞ。
が、、、これでは荷物が邪魔過ぎるので、、、
「いや、、、金の心配はしなくていいが、、、、そうだ、チビ助、お前、荷物もって、俺の事務所に引っ越せばいいんだ。」
うんうん。なんで思いつかなかったんだろう。パオラもいるし。俺も、元の生活に戻れるし。子供の言うことだから、まあ、どうせそのうち飽きて帰るだろうし。どっちにしろ、嫁とか?ままごと遊びにつきあうのもな、、、
「ああ、そうですね?荷物は、シーズンごとに取りに行けばいいので、お願いしても?私も毎日仕事で伺うので、いる時に持ってくればいいんですね?さすがレオ様!ありがとうございます!」
ん?
「では、明日から、旦那様の出勤と一緒に事務所までご一緒して、、、午後はうちのこともあるので、少し早めに上がらせていただいて、、、お買い物とか、晩御飯とか、、、うふふっ、、、、、それから、レオ様?なんでソファーで寝ていらっしゃるのかしら?私、ちゃんとベットを半分開けてお待ちしてますのに。」
「・・・え?、、、、ああ、、、ソファーで寝るのが好きなんだ。」
「まあ!!!うふふっ」
なんか急に元気になって、ご飯をもりもり食べだした。
一杯食べて、早く寝ると背が伸びる、と、家庭教師が言ったらしい。
チビ助、、、、俺の言ったこと聞いてた?
ま、、、いいか、、、
*****
次の朝、例によってソファーで目が覚めると、朝食はオムレットとキャベツの酢漬けにソーセージ、丸いパンと、昨日の残りのキャベツスープ。
今朝も、美味しくいただく。
「あ、、、、これ、ほら、、、」
「?」
「食費に使え。要るものがあったら買えばいい。足りなかったら言え。」
小さい革袋に、一回飲みに行くくらいのお金を入れて渡す。
「まあ、、こんなに?」
いや、、、、お前、、高位貴族だろ?
「昨日、市場を観察しておりましたら、、、思ったよりみんな安くて。私たち二人でしょう?朝晩に、これからお昼にお弁当を作っても、薪代以外は、月に2万ガルドあれば大丈夫かと、、、これから、、、子供とか生まれれば、別かもですけれど、、、」
うふふっと、、、恐ろしいことをサラッと言って笑うな!!!13歳の小娘が!!!
スープをお代わりして、昨日買ってきたお菓子のことを思い出した。すっかり忘れるところだった。
ごそごそと、上着のポケットから、かわいくラッピングされたクッキーを取り出して、チビ助に渡す。
「昨日、、、ああー、、、もらったんだ。取引先の人に、、、」
「まあ!!バラの人??じゃあ、、、、お茶にしましょう?」
腹は一杯だが、紅茶ぐらいは飲める。
ソファーに並んで座って、買ってきたクッキーを二人でつまむ。普通に美味しい。
隣を見ると、ニコニコして食べている。そんなに喜ぶなら、また買ってきてやろう、と思う。何言ってんだ?俺、、、、
出かける用意をしていると、チビ助もエプロンを外して、髪をまとめている。それから、台所から、大きな包みを2つ持ってきた。・・・・ん?
「この格好でよろしいでしょうか?」
何が?
「初めて旦那様の仕事場にお伺いするので、、、もう少し、きちんとした格好のほうが良いでしょうかね?嫁ですし。あまり派手な格好でも、、、、どうかしら?」
淡いグリーンのワンピースに、三つ編みをくるりと後頭部で巻いた髪、、、顔が余計真ん丸に見えるぞ?・・・・ああ、、、まあ、、、何でもいいんじゃない?ホントに行くんだ、、、
迎えの馬車が来たので、チビ助に荷物を持たされて、玄関に出る。
近所のジジババが、掃除してるふりとかしながら、見学に出てきている。
・・・・なんだよ?
「皆様、おはようございます。今日から、午前中は旦那様のお仕事のお手伝いに行くので、留守中よろしくお願いいたしますね。」
にっこりと笑って、挨拶している。ジジババは、、、、なんともいえない笑いを浮かべている、、、、いいから、、、な??
馬車のドアを開けに降りたノアも、驚愕の顔。いいから、、、そっとしておいて、、
乗り込んだ馬車で、カールにも驚愕される、、、、あまり、表情を変えるやつではないんだがな、、、
「え、、、と、、、当主、今日の予定ですが、、、、」
そして、、、新しい日々が始まる。
ノアに、自宅の荷物を取りに戻って、商会の俺の私室に運んでおくように頼む。
「当主、またどっかで拾ってきたんですか?」
「女の子とは、、、珍しいですね。」
「・・・まあ、、、クロエ、だ。」
「クロエと申します。先日、レオナルド様に嫁してまいりました。皆様よろしくお願いいたしますね。クーとお呼びください。」
「・・・・・ええ???」
さらりとぶっ飛んだことを言うな!
クロエは、にこにこと、スカートをつまんで、みんなに礼をする。
「今日からお世話になります。これは、皆様で。」
と、でかい包みをカールに手渡す。もう一つは?
「もう一つは、旦那様のお昼ごはんです。ふふっ。」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
いたたまれない、、、
私室に上がると、パオラが着替えを用意して待っていた。
「あらあらあらあら、、、、まあ!!」
「・・・・・」
「事務棟付きの女中のパオラです。よろしくお願いいたしますね?」
「レオナルド様に嫁してまいりました、クロエ、と申します。よろしくお願いいたします。」
「あらあら、まあまあまああ、、、、、じゃあ、今日から着替えの手伝いは、クロエ様にお願いしても?」
「はい。たまわりました。あの、、、パオラ様?私のことは、クーとお呼びください。」
「・・・え、、、でも、、、当主様の大事な方を、、、、」
勝手に話を大きくするな!!!なんでもいいから、、、
着換えは結局、チビ助の仕事になった。
着換えた普段着をハンガーにかけながら、、、
「それで、、お着替え以外にも私に仕事をくださいな。」
「・・・・」
「掃除でも、洗濯でも、、、事務仕事でも、なんでもやりますよ?」
「・・・・」
事務室に下りて、カールに、マッテオがこの前拾ってきたイリアの孤児を連れてくるように言う。
うちは、拾ってきた子は、基本、拾ったやつが自分で面倒を見る。もちろん、持ち逃げされて失踪したり、ちょうどよく養子にもらわれたり、しばらくして独立したり、そうそう、商店の婿にいった子もいたな、、、いろいろだ。必然、クロエの面倒は俺が見ることになる、、、
みんなで、もっさもっさと、クロエの大きな弁当を開けて、サンドイッチを食べているところだった。お前ら、、、、、
間もなく、マッテオと倉庫仕事をしていたらしい、7歳くらいの子供が連れてこられる。
「ほら、当主様に挨拶は?」
「・・・・・」
「え、と、こいつまだ、ブリア語に慣れていなくて、、、」
「こいつにブリア語を教えろ。挨拶や、簡単な計算も。できるか?」
『初めまして、クロエです。クーって呼んでね?お名前は?』
クロエが、しゃがんで、流暢なイリア語で話しかける。年が近いから、警戒しなくてちょうどいいだろう。
『フェデリコ、、、』
『そう、フェデイって呼んでもいいかな?お姉ちゃんと勉強しようね。』
何日かすると、フェデイの顔が明るくなってきたようだ。
挨拶も、きちんとできる。商売の基本だからな。
今日も、クロエと机に向かっている。
イリア語は話せる、と、言っても、孤児。教育は受けていないので、読み、書きは出来ない。いきなりブリア語は大変だろうと、まずはイリア語の読み書き。ブリア語とイリア語は元々の語原が一緒だから、イリア語ができるようになると、ブリア語もすぐだ。自分の名前が書けた!と喜んでいる。
勉強は、事務室の空いた机でやっている。時々、中庭に出て、色々なものを指して、言葉を教えているようだ。空。青い。お天気がいい。暖かい。木。葉っぱ。緑。家。窓、、、、、今は、イリア語とブリア語を交互に話しかけている。
数は、その概念から。1.2.3....足し算、引き算、、、算数のほうが得意な子供みたいだ。
俺は?ちゃんと仕事してる。
たまに覗いているだけ。
「俺も、クロエ先生がよかったなあ!!」
イーサンがこぼしている。お前は、、、ブリア国生まれだろう???
「俺なんか、フール語覚えるとき、当主に、鬼のように怒られた。」
「俺も、、、ブリア語覚えるとき、当主に、体で覚えさせられた、、、」
おい、ノア、、、
「うん、うん、、、俺も、、、こんな先生なら、、、俺なんか、カール先生だった。」
「うへええ、、、厳しそう、、、」
マッテオまで、、、まあ、カールの教え方は無駄がなくて厳しい。確かに、、、
みんなで微笑ましく眺めている。ま、、、平和で何より。
俺なんか、、、師匠と姉貴だった。厳しいなんてもんじゃなかった、、、、俺も、クロエ先生が良かったな、、、、
しばらくすると、クロエはうちのスタッフに可愛がられ、、、昼飯で餌付けし、、、パオラは娘のようにかわいがった。
フェデイも、前のようにおどおどした態度から、年相応の元気さを取り戻した。
イーサンが帳簿を教えたいと言ってきた。いいんじゃない?
チビ助は、午後になると、パオラの手伝いをしたり、帳簿の検算や、倉庫の掃除なんかをしているらしい。3時になると、ノアの馬車が空いていれば馬車で、空いていなければ乗合馬車で、、、市場経由で家に帰って行く。俺の家、だけどね?
俺もソファー暮らしは続くと年のせいで、、、きついので、もう一度、言った。
「なあ、お前、もうそろそろ、事務棟に引っ越さないか?俺、、いつまでソファー暮らし?な?」
「あら、、、、そうですわよねえ、、、、レオ様が、そんなに恥ずかしがり屋さんだなんて思わなくて、、、申し訳ありません、、、、一緒のベットで私は構わないんですよ?
でも、、レオ様の腰を痛めるといけませんしねえ、、、、」
よし。いい子だ。