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だんだん150センチ

ソファーで目が覚める。5月だが、薄い毛布一枚では少し寒い。


ベーコンの焼ける匂いがする、、、、んんんんん???


チビ助が、エプロンをかけて台所から、ベーコンエッグを運んでいるところだった。パンケーキと、紅茶、、、、夢ではなかったか、、、


「え?・・・・この食材、、、どっから?」

「え?何もないだろうから、と、昨日持ち込みました。今日はお買い物に行きますね。近くに市場があるようですので。」

「・・・・その情報は、、、どこから?」

「朝早く、庭に水をやっておりましたら、近所の方々がお集まりになって、いろいろ教えてくださいました。」


え?


そう言うと、ふふっと笑って、席に着くように促された。

食前の御祈りが済むと、温かな朝食を頂く。


「え、と、、、もう、気持ちはわかったから、帰っていいよ?

最初から、君の父上への投資のつもりだし。担保に娘さんを預かるわけにはいかないよ。ね?」


「・・・・そんなわけにはまいりませんわ。もう、貴族籍は除籍の手続きを済ませましたし、、、もう、ここにいると決めてきましたので。」


こともなげにそう言うと、パンケーキを美味しそうに食べた。

俺は、、、飲みかけた紅茶で、むせてしまった、、、


「大丈夫でございますか?レオナルド様??あ、旦那様、のほうが呼び方としてはふさわしいでしょうか?」


「・・・・いや、、、俺は、そんな、、、17歳も下の嫁を貰う気はないし、、大体、結婚自体する気はないんだ!!な?帰ってくれよ、、、」

「あら、貴族社会の婚姻では、20や30の年の差はよくあることですが?庶民のお勉強が足りませんでしたでしょうか?17も年の差があると、法に触れたりするんですの?」

「・・・・いや、、、、そうじゃなくて、、、、」

「とりあえず、ご説明した通り、私は実家には戻れません。レオナルド様のお嫁さんに来たんですもの。ここを出て行けと言われれば、どこかで仕事と、住むところを探して、、、、」

「・・・・・」

「あら、では、とりあえず、レオナルド様の商会で働かせてください!」


いいことを思いついた、という、きらきらした笑顔、、、、勘弁して、、、


「今日は、実家から荷物が届くので、、、市場に買い出しにもいきますし、、、では、明日から!よろしくお願いいたします!!」

「・・・・・」


決めるな、、、、勝手に、、、、


仕事に行く時間になったので、さっと着換えて、玄関を出る。

と、、、近所のジジババが、好奇心に満ち満ちた目で、俺を見る。集まってくるな!


見るなああああ


いつもと変わらない素振りで、迎えに来た馬車に乗り込む。


深く椅子に座ると、ため息が出た、、、、カールが、今日の予定を読み上げる。


「変更が一つ、、、公爵家の当主が留守なので、今日の午後、必ず来るように、と、公爵夫人が。イリア国の宝石が見たいそうです。夫人の好みそうな大粒のものを20点ほど用意させてあります。時間がかかりそうなので、他の予定はキャンセルしました。」

「・・・ああ、、、」

「夕方は、商工会で会議と懇親会です。どうされますか?」

「・・・・マッテオが帰ってきてたよね?あいつに行かせて。」

「はい。」

「ハウル家の、、、子供たちについて、少し調べて。」

「はい。なにか、、、問題が?」

「いや、、、、まあ、、頼むよ、、」


馬車は王都に入り、三階建てのレンガ作りの大きな屋敷に着く。

ブラウ商会、控えめな表札が門に見える。

1階は応接室と事務室と執務室。奥は倉庫。

2階は自分の私室。奥には来客用の宿泊室。何部屋かは、すでに倉庫化している。キッチンとダイニング。

3階は使用人の部屋。


ここまで商会を大きくするのに、12年かかった。

18で師匠から独立して、、、、


「風呂に入って着替える。」


風呂に入って、商売用に着替える。

高価なものを売るのに、きちんとした服装と振る舞いが出来ない奴は馬鹿だ。と、よくうちの師匠に叱られたもんだ。

あんまり高価な服装は、これから会う貴族連中に非難される。

程よーーーく、高価すぎず、安過ぎず。舐められないように。しかも、一つ二つは、次の商売につなげられるものを、、、、


商会付きの女中のパオラが、脱いだ洋服を見て首をかしげている。シャツにスラックス、ジャケット、、、いつもの、行き帰りに着る普段着だ。


「当主、、、このシャツ、、、」

「あ?」

髪を上げながら、返事をする。

「・・・・アイロンが当ててありますねえ、、、、」

「・・・あ?」

「ふっ、、、ついに、、、30にして、当主様も年貢の納め時?」

「は?」


パオラが用意した衣装を着る。

カフスボタンをはめる。今日は、青のサファイア。タイに合わせたようだ。タイは、栄国から先日届いたばかりのきれいな青のシルク。滑らかさが、見るだけでわかる。

上着は目立たず。ただし、生地は良い。ラペルピンは控えめなサファイアの小鳥が付いている。


パオラはフールにキャラバン隊を率いて行ったときに拾った。今、馬番と屋敷の管理をしてくれている息子のノアと一緒に。

パオラのセンスは、、、ずば抜けていい。衣料品も扱うので、彼女のセンスは重宝だ。

ぱっと見は、、、普通のおばちゃんだがな、、、、


俺は、ありふれた茶髪に茶色い目、、、実は普段着のほうが好きだけどね。


午前中は、各所から上がってきた書類や手紙に目を通す。


フールの俺の師匠からも、注文の承諾と見積書が届いていた。

さすがに的確。値段も相応。運賃が少しまけてあるのは、帰り荷に東部で小麦を買い付けて帰るかららしい。匂いが心配だ、と、ある。ふふっ。


早速、送金の手続きを金庫番のイーサンに頼む。

さて、、、

午後からの公爵夫人にご購入いただく宝飾品を確認する。

大粒の石で揃えた、と言っていたが、、、大粒のダイアモンドのネックレスと揃いのイヤリング。夫人の瞳の色に合わせたエメラルドのもの。大粒のピンクパール。イリア原産の大粒サファイア、、、、変わったところでは、琥珀のピンブローチ。これはどうかな?地味に見える。値段はいいが、、、、

派手なルビー、、、このあたりかな。


商売用の白の手袋を忘れずに、ジャケットの胸ポケットに入れる。


簡単な昼飯を用意してもらって、食べながら、他の書類に目を通していたら、カールが書類を持って入ってきた。


「朝に承ったハウル家のお子様たちの調査書です。」

「ああ、、、」


調査書に目を通す。

ハウル侯爵家。家の事情は聴いていた通り。

父 当主 32歳

母 10年前に逝去。・・・ああ、弟を産んですぐになくなったのか、、、

長女 クロエ・ハウル 13歳 先日貴族籍を除籍、、、、、まじか、、、

嫡男 ミカエル・ハウル 10歳


・・・しかも、、、、俺と父親、、そんなに年変わらないし、、、、なんか、、ショック、、


「・・・はああああああ、、、、、」


俺のため息に、カールが飛び上がるほど驚いている。

「な、、、なにか、、、不手際が??」

「・・・いや、、、」



さて、気を取り直して、公爵邸に向かう。

もちろん、カールもついてくるが、執事の格好だ。


いつものように、人払いされた応接室に通される。

カールに、ドアの外に控えているように言う。

公爵夫人は、40歳くらい。完熟、って感じ?

白い肌に、赤くふっくらした唇。潤んだ、色の薄い青い瞳、、、バラの花の香水が夫人の体臭ととろけあって、、、、、、、

成人している子供が3人もいるようには見えない、妖艶さだ。


挨拶して、ソファーを勧められる。席について、カバンを広げる。宝石が、光を集める。


上着の胸ポケットから、白い手袋を出して、はめる。


「夫人のために、、私が何点か見繕ってまいりました。ご覧いただいても?」


にこりと笑うと、、、夫人が、俺の隣にするりと座る。


はああああああ、、、、、またですか?まあ、いつものことなんだけどね??


姿勢を崩さない俺に、しだれかかるように、、、、



*****

俺は、公爵家とのいい関係を壊さないように、危ない橋は渡らない。

誘われているのは十分承知だが、、、、もう一押しで落ちるんじゃないか、あたりで席を立つ。毎度ありがとうございます。今日もいい商売が出来ました。


何時も連れてきているカールにも、意味深なまなざしを送っているので、今度はカールにやらせようかな、、、、あいつはブリアの南部で拾ったが、出は北の国。琥珀が取れるあたりだ。銀髪にアイスブルーの目、、、ぞくっとするような冷たい目を向ける時があって、、、その辺が女に好まれるらしい。今日の執事服も妙に似合う。


「どうでしたか?」

帰りの馬車で、タイを緩めて、だらしなく座る俺に、カールが聞いてきた。

「ああ、ピンクパール一式と、あの派手なルビー一式。シルクの反物。俺の今日のタイと同じ色味で良いそうだ。注文しておいてくれ。あと、、意外だが、琥珀もお買い上げだ。」

「意外?ではございませんよ。ふっ。売れると思っておりました。」

「は?いやあ、、、あの人には地味だろう?」

「・・・・当主の瞳に、よく似た色味を用意したので、、、、」


・・・おまえら、、、俺を売るつもりか、、、、



*****

残り香がまとわりついて、消えない。こんな日は、街に繰り出して酒を飲みたいところだが、、、、置いてきたチビ助が心配なので、、、早々に帰ることにする。いや、、、もういないかもしれないし、、、確認もしなくちゃだし、、、、


さっさと余所行きから、普段着に着替えて帰ろうとすると、、、パオラが、楽しそうに笑う。

「あら、まあ、お早いお帰りで!珍しい!うふふ、、、家に待っている人がいるのは、いいものですよねえ、、、」

「・・・・・」

「なにか、、、そうねえ、お菓子とか、お花とか、買って帰られたほうがいいですよ。気が利かない男だと思われますからねえ、、、」

「・・・・・」


まだ、、、子供だから、、、花より、、菓子かな?

途中で馬車を止めてもらって、王都で有名な菓子を、、、、俺、なにやってんの???


早めに帰ったが、明かりがいるくらいの夕刻にはなってしまった。


自宅の窓に、明かりが見える、、、、まだ、いるんだ、、、、


御者台に座るノアが、不思議そうに、俺と、俺の自宅の窓を交互に見る。




「おかえりなさいませ」


夕食の準備が出来た、ほんのり温かな部屋で、チビ助が俺を迎える。



「んんん?レオ様?なにか、、、怪しげな匂いがいたしますね?」


え?


「バラ、、、の香水?ふーーーーん、、、」


え?










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