165センチ
フールの復興は、まだしばらくかかるだろう。
今年の10月の大舞踏会は、戦勝記念パーティーになるらしい。かなり盛大にやるみたいだな。クロエの縫製部門が、むちゃくちゃ忙しそうだ。
閉ざしていた国境は解放されたので、イリアから宝石が入ってくるようになり、これまた忙しい。
・・・・そう、、、、今回の功績で、王太子が王位を継ぐことになったから。
まだ決まった婚約者がいない、、、まあ、、いままでさして注目されていなかった王太子、、、フィリップが、悪評をはねのけて、偉業を達成したので、ブリア国内は沸き立っている。
その彼に、小さい頃から一服盛り続けた継母、第2王子の母は、、、、王の引退とともに修道院行が決まった。今は監視下の元、離宮に移されたらしい。戴冠式をかねた大舞踏会までは今の地位。彼女の側近も早々に処分された。人質に連れてきたフール国の王女をかなりぞんざいに扱っていたらしい。
第2王子は、継承権を放棄し、臣下に下った。
もともと兄弟仲は良かったらしく、フールの復興のために、フール国の幼い国王の補佐役として、出発していった。
*****
「・・・それで、、、、何用でございますか?王太子殿下?」
王城に呼び出された俺は、今回ばかりは見当がつかない。
「うん、、他でもないんだけどね。フール国王の私財や、反体制派の貴族の財産、もちろん、あの武器を扱っていた商人の全財産、、、全て没収して、換金させた。結構な金額だった。
ブラウ商会には正規の金額を支払うから、請求書を上げてきてくれ。大変だったな。」
「・・・・ありがとうございます。」
「もちろん、、、、、こちらで回収した金属に関しては、そちらの仕入れに当たるから、引いてくれるんでしょ?」
「・・・・・ちぇ、、、、」
「それから、、、別枠で、いままでの私とソフィーの食費分、合わせて、ソフィーの教育関連費も上げてきて。今後は、月々払うからね。」
「・・・・ありがとうございます。」
「それで、ここからが本題なんだけど、、、、今回の君の功績を評価して、報奨金と爵位を授ける。領地付きだ。」
「・・・・・」
「10月の大舞踏会に来るように。招待状が届くから。そこで。」
「・・・・・」
「・・・めんどくさい、、、、とか、思ってるでしょ?」
「・・・・・あんまり高位だと、、、正直めんどくさい、、、、」
「ええ?そう?、、、、じゃあ、手始めに男爵位?でどう?また上げればいいし。」
「・・・・・」
「へええ、、、、でも、君のことだから、断るのかと思っていたよ、、、ふふん、、、何か考えてる?」
「・・・・・」
*****
フィルさんと一緒に帰って行くソフィーちゃんを玄関で見送る。
フィルさんの家は食事係が変わったらしく、家でもご飯が食べられるようになったみたいだけど、夕食はだいたいうちに来る。今日はまた、ソフィーちゃんがクッキーを焼いたから、フィルさんが喜んでいた。
星が出ている。
10月になると、夜風も肌寒いので、長袖のワンピースに、カーディガンを羽織った。
「見て見て!レオ、星がきれいよ?」
「ん、、、、、ああ、、、、」
二人で真っ暗な夜空に瞬く星を見上げた。
流れ星が、、、、私はあわてて、手を組んで祈る。
「何をお願いしたの?」
「うふふっ、、、、このままレオと幸せに暮らせますように。と、レオが長生きしてくれますように。だよ?あと、、、、、」
「お願いしすぎじゃない?」
「ええええ?そうかなあ、、」
あと、、、、16歳の誕生日には、ちゃんとしたキスが贈られますように、、、、
*****
その日は、ドレスや宝飾品の納品もひと段落して、ほっと一息。
今日は、フィルさんもソフィーちゃんも都合があってこれないらしいし。
レオも朝から出かけてしまった。
パオラさんに商館のレオの私室に呼ばれる。
「さあ、クロエ様もお着替えいたしましょう?」
「?」
「まずは、お風呂の準備が出来ていますから、、、、」
よくわからないまま、パオラさんとミラさんに磨き上げられる。
髪も、めったに使わないいいオイルが塗りこめられる。
髪を乾かしてもらっている間、ミラさんが爪の手入れまでしてくれる。
「?」
「当主が、今日のために、こっそり用意したドレスです!」
パオラさんが控室から運んだドレスは、、、、真っ白な上品なシルクで出来た、素敵なデザイン、、、、、え?
「絹は、リーさんがどこからか持ってきました。とても良い生地です。」
リーさん、帰ってたんだ、、、、、
「宝飾品は、イリアに注文していたものが届きました。」
「・・・・・」
「チョーカーリボンは、、、、ふふっ、、、、琥珀色ですね。ドレスの裾の刺繍と同じ色です。」
パオラさんがとてもうれしそうに着付けていく。
「・・・・・あんなに幼かったクロエ様が、、、、もうすっかり、レディですね、、、」
さすが、パオラさん!サイズがピッタリです!
これは、、、、誕生日プレゼント??レオから??やだ、嬉しい!
化粧を施され、髪も、大人っぽくアップにされた。
散りばめられた髪飾りは、、、ダイア??え?このイヤリングもダイア??
ヒールのある靴を履かせてもらって、姿見まで進む。
「ああ、、、、クロエ様、、、本当にお綺麗です!」
パオラさんが涙ぐんでいる、、、、
鏡に映ったのは、、、、16歳になった私、、、、
背は伸びた。胸も少しは大きくなった。今は、寄せて上げているので、大きく見えるみたい、、、、
考えていることが読まれたのか、、、、パオラさんが言う。
「クロエ様、、、比較するのがミラの胸なのでピンと来ないかもしれませんが、、、、その、、、、クロエ様の胸は、大きいほうですよ?」
「え????」
「そうですよ?クロエ様。あんなに子供子供していたのにねえ、、、、、張り合わなくてよかったわ、、、」
ミラがつぶやく。
少し、照れて顔が赤らむ。
「さあさ、馬車を待たせておりますから、、、出発ですよ。」
どこに?
レオが、レストランでも取ってくれたのかしら?うふふっ
商館にいたみんなも、玄関まで見送りに出てくれた。
綺麗だよ、、、、さすが当主、こうも化けるとは、、、とか、、、あんなにお子ちゃまだったのに、、、とか、、みんな言いたい放題だ。思わずにやにやしちゃうわ。
少し浮かれてしまったかも、、、、さすがに、出がけにパオラさんがロンググローブをつけてくれた辺りで、、、、違和感が、、、、
私たち平民が行くレストランで、、、、どんなに高級でも、ロンググローブは、、、そう言われれば、、、、今日来ているのはイブニングドレスだ、、、、、え?
「当主がご一緒できないので、私が会場までエスコートいたしますね。」
そう言ったカールさんも、、正装、、、
何が、どうなっているのかしら?
御者台に座るノア君まで、、、しかも、、、今日の馬車は、余所行き用、、、
誕生日のサプライズ??
*****
到着したのは王城だった。王城??
カールさんは、いつもと変わらず、表情が読めない。
ここまで来て、、、、私は最悪の想像をした。
まさか、レオ、、、?
馬車が渋滞している。そう、今日の大舞踏会はかなり盛大らしいから。戦勝宣言と、王位の継承を兼ねて。ここに、私が入れるわけはないのに、、、、
ノア君が差し出した招待状を見て、うちの馬車は、違う通路を案内され、あっけなく着いた。カールさんに連れられて、ホールに向かう。そして、、、
【ハウル侯爵家 クロエ嬢】
読み上げられた名前に、、、愕然とする、、、、
「ああ、クロエ!綺麗になって!デビューおめでとう!」
「本当に、お姉さま、綺麗!」
「お嬢様、お綺麗になられて、、、、、、無理言って帰ってきてよかったわ。」
久し振りに会った家族、、それはそれで、むろん嬉しい、、、、デビュー??
「まあ、お父様、先生、ご結婚おめでとうございます。」
頭が真っ白になる。
私は、、、ついに、レオに捨てられたのかしら?
実家に、、、戻された?
父親にエスコートを代わって、カールさんは下がった。
かなり大勢の人が集まっている。
ちらほら、白いドレスの娘がいる。今日、デビューなんだろう、、、、
国王の話が始まり、場内は静まり返る。
今回のフール国での戦勝宣言。及び、この機に王位を第一王子であるフィリップ王太子に譲る、、、戴冠式も引き続き行われた。
王冠を頂いた新国王フィリップ様は、今回の戦況を報告し、功績のあったものに、褒賞を授けた。
将軍を始めとし、沢山の人たちが、壇上に呼ばれる。
何人目かに、、、、レオが呼ばれた。レオ?なんでレオ?
爵位と領地、褒賞金、、、
「この者は、私の信用する友人である。爵位は本人の希望で男爵位だが、侯爵位以上の価値があるものとする。みな、無礼の無い様に。」
余計なこと言いやがって、みたいな顔をしている。ふふっ、、、、
今日のレオは、素敵だ。いつも、くたびれたおじさんみたいに家のソファーで寝転がっている人と同一人物には見えない。
黒の上着には金の刺繍が入って、タイはブルー。お気に入りの青いサファイヤの小鳥のラペルピンを付けている。髪はかきあげている。
壇上から降りてきたレオを見て、ご令嬢達が頬を染めてざわついている。そうでしょ?いい男よね?うふふっ、、、、
でも、いつの間に王太子殿下とお友達になったのかしら?
分からないことも多いけど、自分のことのように嬉しい。
その後も褒賞は続き、、、ようやく舞踏会の開催時間になった。
前国王陛下は早々に皇后陛下と一緒に退出され、、、新国王には決まった方がいらっしゃらないので、大公家がダンスをする。そして、、、ダンスの輪が広がった。
「お父様も、先生と踊っていらして?」
もじもじしていた父が、先生をダンスに誘う。先生は笑いながら手を取った。
「クロエじゃないか」
駆け寄って、話しかけてきたのは、、、誰でしたっけ?
「僕だよ、、、婚約者の顔を忘れたのかい?きれいになったね。父が勝手に婚約を白紙にしたんだけど、僕はずっとクロエのことを想っていた。忘れたことはないよ。」
・・・・?手紙一つ頂いたことはありませんが?
しかも私は、あなたのことを思い出したこともございませんが?名前も思い出せませんの。顔を赤くしてなれなれしく話しかけるのはおやめください。
私の手を取ろうと、手を伸ばした令息を遮るように、ミカエルが隣に立つ。
「なれなれしくするのはおやめいただけませんか?どこのご令息かは存じ上げませんが。」
・・・・か、、、かっこいいわ、ミカエル!
だが、、、知らないご令息たちに囲まれてしまった、、、、
「初めまして、クロエ様、どうか私と一曲、、、」
名乗りを上げてきたのも、それなりの地位の方々で、、、
ご令嬢方が人垣を作って、どなたかを囲んで、こちらに向かって進んでくる。キャーキャー騒がしい。何かしら? 綺麗な令嬢がたくさんだ。
人垣を割って、まっすぐ私のもとに進んでくるのは、、、、レオ?
ドキドキした。外野のざわめきも聞こえなくなってしまった。だって、、、、
「ハウル侯爵家クロエ嬢?私と一曲踊っていただけますか?」
「・・・・まあ、、、、ええ、、何曲でも!」
私たちはふわりと踊る。お互いの姿を瞳に映して。
2曲続けて踊って、バルコニーに出る。
レオが跪いて、私の手を取る。え?
「私と、、、結婚していただけますか?」
ホントに、、、、どっきりだわ、、、、
びっくりして見開いた目から、涙がポロポロこぼれる。
「・・・・もちろんです。」
抱き寄せられて、婚約指輪の上に、金色の結婚指輪をはめてくれる。
私も、、、、差し出されたレオの分を取り、レオの婚約指輪の上にそっとはめる。
バルコニーの端っこで、私は初めて、レオにちゃんとしたキスを貰った。




