表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/15

157センチ

「ワインでいいか?」


リーが男に声を掛ける。

「・・・ああ、、、しかし、、従業員用なのにかなりなワインだな?」

「あ?、、、ああ、、クロエの命の恩人だもの。半端なものは出せないデショ?」


赤ワインと、チーズやナッツ、ドライフルーツなんかを出して、グラスに注ぐ。


「変なものは入っていないヨ、王太子殿下。」

「あ、、、ああ、、、ありがとう、栄国、次期宰相殿。」

「・・・・・」

「・・・・・」


「お前、見張ってたんだろ?タイミングいいはずだよね。」

「・・・見張っていたのは、相手のほうな。だんだん動き出すだろうから。

そういうお前も、フールに1年、イリアに1年、この春からブリアで、、、、何をこそこそ探っているんだ?この前は、ラーシに行っていただろう?

国元に帰って、愚鈍な次期皇帝を教育したほうがいいんじゃないのか?」

「こそこそなんかしてないヨ。国元に帰ったら自由なんかないから、今のうちに羽根をのばしてイル。社会勉強ってやつ?

愚鈍、、、、はひどいな。否定しないけど。おかげで、期限付きの自由だヨ。

お前こそ、、、、自分家のこと、ちゃんとしろよな。」

「はっ?」



*****


フィル、と名乗った男は、時折やってきては、うちの晩御飯を食べたり、リーと宿泊所の宴会に参加したりするようになった。胡散臭い者同士、意外と息が合うらしい。

昼間見たら、不健康そうな青白い顔をしている。


俺はクロエを助けてもらったのに、殴っちゃったから、、、、まあ、好きにさせている。クロエはせっせと4人分の晩御飯を作るようになった。怪我はさほどではなかったから。それでも、皿を洗ったりは手伝うことにしている。俺。


「フィルさんは、もっと食べたほうが良いわね。がりがりじゃないの??」

「・・・・・」

「こいつ、貧血気味なんだよね。時々、倒れそうになっているし。」

「まあまあ、、もっと食べなさい。大きくなれないわよ?」


4人の食卓はなにかとにぎやかだ。

宿泊所のダイニングから、リーが一つ椅子を持ち込んだ。


クロエは、、、俺が四六時中着いているわけにもいかないので、居ない時はリーかマッテオに着いてもらっている。っていうか、、、替わりがきくところには、この二人とカールに行ってもらっている。一緒に行けるところは、クロエを連れて行くことにしている。パオラが、ニコニコして見送ってくれる。まあ、、、、いい、、、



「あいつさ、、、、一服盛られてる。この前倒れた時、腹を触ったら、脾臓が腫れていた。なんていうの、、、毎日、少しづつ、、盛られてる。俺のブリア語で通じるか?」

「え?ああ、、、、」

「なるべくうちの飯を食うように言ってある。クロエの飯か、マキシの飯な。あと、水を大量に飲むように。」

「ああ、、、、なんだか、大変な環境にお住まいの方なんだな?」

「ああ。」


フィルとクロエが台所で皿を洗っているときに、リーが小声で言う。

これまた、、、面倒な奴になつかれたな。


「それからな、、、、いよいよフールは始まるみたいだな。」



*****


冬が近づく頃、フールの軍部が蜂起した。国王を監禁し、国土を押さえに走っている。国王派が反撃に出たので、国内は火の海らしい。

不幸にして、どちらもそれなりの装備をそろえているので、長引くだろう。

まあ、、、、武器商人は儲かるな。


国境を接するブリアも栄国も、唯一の陸路である山脈沿いの街道を閉鎖し、軍を配置した。イリアも、軍港に兵を集めた。飛び火は勘弁だ。

どちらにしろ、この時期、大雪が降るうちの国境は比較的安心。

国境を超えるとしたら、、、春だな。


せっせと高位貴族や将軍を懐柔しようと動いていたルビー商会は、王太子の指示で壊滅された。一人残らず処刑。少しでも、なびく素振りを見せた者は、領地も地位もはく奪され、処刑もしくは国外追放。かなり重い処分だった。

もちろん、先頭で動いたのは将軍、その人。うまく、騙されたふりを続けたもんだ。

ここまで、、、、あっという間に抑え込んだ王太子の力量に、正直、驚く。


前評判はあまり良くなかった。

身体が弱く、寝込んでいる、、、、弟のほうが適任じゃないのか、、、、そんな噂だったから。




「当主、、、、王太子殿下より、、、、本日王城に上がるように、通達が来ています。」


何時もの朝のように、迎えに来た馬車にクロエと乗り込み、カールから今日の予定を聞く。12月になったらさすがに寒いねえ、なんて話してたのに、、、、


「え?」

「まあ、、、、レオ、、、処刑されないわよね?」


真顔で言うな、クロエ。


「私も行くわ。死ぬときは一緒よ!」


いや、、、、処刑前提はおかしいでしょ?俺、戦争関連の仕事してないし、、、ああ、、ラーシの金属か?だろうな。金は全額前払いで、そのまま加工させているから。

軽く、丈夫に、の加工がことのほか難しかったらしく、何度かサンプルが送られてきたが、リーが突っ返していた。いまいちだったらしい。


商館に着いて着替える。

着換えはいつもより力が入っていた。髪型も念入りに整えられる。


みんな情報を共有しているので、静かだ。内心ドキドキか?

ルビー商会の処分が早かったので。

いや、、、、うちは大丈夫。多分。


「お前、本当に一緒に行くの?」


俺の着替えが終わってから、さっさと自分も着替えたクロエに聞く。

「もちろんです。レオのことは私が守りますから!」

「・・・・・」

だから、、、真顔で言うな。

薄っすら、、、、緊張のためか顔が赤いぞ。

今日の冬用のワンピースも、よく似合っていて、、、、かわいいな。少し背が伸びたか?ヒールが高いからか?


ドアをノックして入ってきたのは、リー。正装している。まあ、カールの衣装だろうけど。

「お前も行く気?」

「ああ。こんな面白そうなこと、見逃せないデショ?」


結局、3人で馬車に乗り込む。

御者台のノアが緊張している。大丈夫だよ。多分、、、、




いつもより、警備が厳重な城門を過ぎ、書状を見せて通してもらう。


案内役に応接の間に通される。

座って待つように言われ、しばしくつろぐ。まあ、、、くつろげないけど。

クロエがさっきから俺の手を握って離さない。緊張しているんだろう。

リーは調度品なんかを眺めている。相変わらずだな、、、


王太子殿下が入室してきたので、立ち上がり、頭を下げる。

「いいよ、座って。」


同行してきたのは、将軍と、宰相を兼ねている公爵殿下。


「前置きはいいね。君を呼んだのは他でもない。ラーシで君が押さえている金属についてだ。」


やっぱりね、と思いながら、顔を上げる。


え?


驚いた俺の顔を見て、王太子がにっこりと笑う。


・・・・・お前、、、、


「フールの国内情勢については、もう知っているだろう?

早くて、来年の春にはブリアに攻めてくる。」

「・・・・いや、、、内乱で終わる可能性もありますでしょう?」

「ルビー商会が、ブリアに兵器を売りたがっていたのは知っているだろう?

ノリノリで買ってくれたと、フールの元締めに情報を流しておいた。いまは混乱しているから、情報のすり合わせもできないだろうからな。」

「・・・・・」


なんて、、、めんどくさいことを、、、、


「自分達で自国を荒らして、、食糧が足りなくなる。自滅、だな。その前に必ず、またそそのかされて、ブリアに入る。」

「・・・・・」

「戦は、必要最低限に留める。まあ、一歩でもこちらの国に入ったら、宣戦布告とみなすから。すぐに終わる。そこで、、、、」

「・・・私は、武器の提供は致しません。自国民が死ぬことに変わりはないでしょう?」

「・・・そうだな。だから、死なないための装備を作れ。急いで、1万。

正規軍はフル装備だが、非正規軍は農家の次男、三男とかだ。その者たちが死なないための装備、だ。これならお前の主義に反しないだろう?どうだ?」

「・・・・・」


「・・・嫁を助けてくれたお礼に、何でもする、って約束したよね?レオ?」

「・・・・・」


こいつ、、、、、、、


「本当に、すぐに収束するのですか?その後は?」

「国内で、疲労し切っている兵士は、そんなに怖いものではない。さんざん、国内で体力を消耗してほしい。フールはうちが治める。まあ、ゆくゆくは独立させるがな。

栄国の緩衝国として、しっかり働いてもらわなければならないから。

現国王は、もう処刑されただろうから、その子供を教育する。まだ7歳くらいのはずだ。」

「・・・・・」

「協力を、《《お願いする》》レオナルド。かかった経費はもちろん、フールからの賠償金で払うよ?」

「・・・・承知いたしました。」


・・・断れる人がいるんだろうか?

ふっと笑ったフィルは、最初にあった頃より、随分と顔色が良くなった。



帰りの馬車では、ノアが俺たちの帰還を泣いて喜んでくれた。心配かけたね?


・・・しかし、春まであと4か月?1万の装備??

何を、、、


隣でおとなしくしているクロエの額に縦皺がよっている。


「・・・・スコップ、ですわね?」


「は?」

「こうです。みんな見てくださいね。」

執務室に戻って、みんなに取り囲まれているときに、クロエが、絵をかきだした。

それは、、、、まんま作業用のスコップを逆さまにしたものに、ほんの少し曲げられた金属板が取り付けられたもの。・・・・・盾、か?

「そう。盾です。今から鎧兜の用意は無理でしょう?あと4か月しかありません。

で、手っ取り早く、盾です。」

「しかし、、、なんでスコップ?」

「持ち手代わりになるから。と、、、戦争はすぐ終わると聞きました。その後は?フールの復興でしょう?・・・・ただ、、、、その前に、、、、フールの戦死者を弔わなければ、復興は始まりません。疫病も蔓延するかもですし、、、、で、スコップ。」

「はあああ、、、、なるほどね。」

「そうだなあ、そのまま農作業にも使えるし。スコップ外したら、重ねて持ち帰りやすいしな。うん。外した奴を何かに使えないかな?」

「今作っている加工鉄板の、弓矢に対する強度を確認しないとな。」

「あまり重くてもな、、、、非戦闘員は歩きだろうから、、、」

「スコップの柄に、丈夫で軽い木材を探さなくちゃな、、、、あとは、動かないように固定するのに、、、、」


みんなが、クロエの提案を受けて、改良点や問題点について話し出した。

決まり、かな。


「じゃあ、みんな、よろしく頼むよ。期限は4か月。引き渡しは、、、そうだな、進軍するときについでにラーシに寄ってもらおう。」

「そりゃいいですね。帰りも寄ってもらって下さい。金属回収して、鍬でも作ってフールに売りましょう。」

「そうだな、鍬でも、鍋でも、生活に必要なものを作ろう。」

リーはなんだか楽しそうに笑ってみている。


行動は早かった。


キャラバン隊のみんなはハウル領の師匠のところに、、、、あのあと、そのまま居座っている、、、豚の出荷の手伝いに行っていたので、帰りにそのままラーシに向かうように指示。もちろん、、、師匠にも事情を説明する手紙を送った。


事務方からも何人かラーシ領に送る。

足りない資金は、イーサンに言って持ち出させた。

作業の段取りは、隊長に任せておけばいいだろう。




王太子殿下に、詳細を報告しようかと思った頃、、、、、ふつーーーーに、フィルが晩飯に現れた。


「あら、フィルさん、お久しぶりです。今日は、ハウル領から豚肉の塊が届いたので、ポークソテーですよお。はい、レオもリーさんも席についてください。」


クロエも、ふつーーーーに晩飯を出している。


「ご近所の皆様にもおすそ分けしたんですよ。パオラさんたちにも置いてきました。宿泊所の皆さんがいないので、余ってしまうので、、、ハムとベーコンを作りますね。

今度のお休みに、レオ、手伝ってね?よろしく。」

「・・・うん。」


ポークソテーはかなり美味かった。

ハウル家のいい産業になりそうだ。


フィルが珍しく、赤ワインを持参したので、3人で飲む。

「・・・大丈夫か?このワイン?」

リーがなかなか口をつけない。

「普通に美味いよ?」

「ああ、大丈夫だよ。家から持ってきたものじゃないから。」

「・・・・・それもどうなの?」


これもまた、ハウル領から送られてきたチーズを盛り付けて運んできたクロエが、


「私ね、、、、先日、意外な場所で、フィルさんにそっくりな人に会ったんですよ?」

「・・・・・」

「・・・・・」


















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ