柳瀬 晴子
はるこのはなし。
私には友達がいない。
天涯孤独というわけではない。
結婚式に呼びたいような、呼ばれたいような。
所謂「親友」と呼べる人間がいない。
学生時代に何かやらかしたとか、大喧嘩したとか
そういうわけではないし学生の頃は普通に友達は多い方だったと思う。
土日の忙しさから解放された退勤後の夜、缶ビールを片手にベランダに出て夜風を浴びながらふと考える。
この先ずっと独りなのだろうか。
結婚式に呼べる友人もいなくて(予定ないけど)
大怪我して入院しても誰も面会に来てもらえなくて(したくないけど)
お葬式で泣いてくれる人もいなくて(まだ死にたくないけど)
急にゾッとした。
慌ててスマホを手に取り連絡先を開く。
両親、妹、親戚、職場の人達、いつ通っていたか思い出せない歯医者
何故登録したのか思い出せない近所のパン屋、学生時代に働いていた実家から徒歩30秒のコンビニ
ふざけて当時好きだった芸能人の名前で登録された知っているような知らないような番号
アラサーにもなってこんなふざけた連絡先ばかりのスマホをそっと閉じ、ベランダからぶん投げたい衝動を大人なので我慢する。
このままでは両親が他界してしまったら本格的に孤独になってしまう。
少しだけ残っていた缶ビールを一気に飲み干し、数ヶ月に一度程度しかログインしないインステを開く。