表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
叛天能が多過ぎる!  作者: 時折ワラウ
1/1

ここが異世界

都内では低めの高校で不遇な生活をしていた高校生。


「いっそ、どこか別の世界に行けるなら……」


口癖はいつもそれだ。何も無いから嘆く。

だけどそれを改善しようとはしない。

テスト:追試もしないが平均点もない

運動:足を引っ張らないように着いていけるくらい

友人関係:2人、小学校からの付き合いなだけ


実習の授業では向いてないと堂々と言われる程に不器用で、騒いで追試しか取らない生徒よりも評価が悪かった。


そんな彼にも転機は訪れる。

才能が無いだけで率先して人を助けれる彼。

彼は単に自分より劣っている者達を助けて少し優越感に浸りたいだけだったが


「おばぁちゃん危ないですよ!!」


よろよろ運転で土手を走る年寄りが、バランスを崩して川の方へ落ちていくのが見えた。

気付けばその下敷きになり、遠くから聞こえる声も消えていった。




「冷たっ!え?」


顔面に水を掛けられ目を覚ます

彼が見渡すと、鎧に身を纏った3人組が見下ろしていた


「フラクタル、目を覚ましたみたいだぜ」


事態を把握出来ない彼は寝姿勢から胡座座りに。

彼らを見上げるように首を上に向ける。


「大丈夫か?まさか今どきオオトカゲに喰われるなんて災難な奴だな。金があるなら【大物喰<逆>】を取ってもらうんだな」


「まさか!そんなの森に行くなら絶対取るだろ」


「あの、すいません。なんの話ですか?」


「まさか【記憶強化<逆>】まであんのか?コイツ可哀想だな」


彼の前で3人はポカーンとする。だってこの世界の話をしているのに伝わらないのだ。


「僕は揷嘴(すはし)(かい )です。難しいですけど手編に数字の千と臼で揷、くちばしとかいて嘴。それと、言偏に灰で詼です」


「「「??」」」


「あれ、書いた方が早いですか?」


未だ定かな思考を許さない彼の脳みそは現状を受け入れていなかった


「は、はぁ?なんだ名前か?俺はフラクタルだ」


「だよな、名前だよな?【状況整理<悪化>】を反転させたフラクタルがそう言うのなら間違いないな。って事で俺はブラーだ」


「俺ちゃんは気軽にディストーションと呼んでくれ」


手を取り、起こされた詼は改めて周りを見渡す。

良く遊んだ近所の公園の森、とは似ても似つかない整備されていない森。


「あ、あー……ふぅ、ちょっと叫んで良いですか?」


「どうしたんだ?スハシカイ」


「よっしゃァァァァァァァ!!!!!!」


叫び声が反響し、鳥達が慌てて空へ逃げ出す。

朽木がへし折れ、大地にヒビが入る


「うっ、ストップだ!【不運】と【音感<逆>】でもあんのか!死ぬかと思った」


「あぁ、ズキズキするぜ」


「すいません、まさかこんな事になるとは」


「世間知らずも良いとこだ、やれやれとりあえず街までは送ってやるからあとは自分でどうにかしろよ?」


「あ、はい!ありがとうございます」


それから詼達は森を抜け街に向かうが、その道中は【不運】であり【災難】であった。


「俺、街に帰る間に死ぬって感じたの久々だぞ。お前【危機回避<逆>】でもあんの?」


「さっきから言ってるそのなんちゃらインバートとかってなんですか?」


「そんなことも知らんのか。いや、凄く自然な流れで話していたが国が違うとか無いか?見た目も違うし」


「だがこっから近隣国までは100ラゴン程かかるぞ」


「だよなぁ、一応聞くがスハシカイはどこの国出身なんだ?」


「日本ですけど、多分分かりませんよね?」


「ニホン、聞き覚えがないな。ブラーあるか?」


「ないぞ、ディストーションは……聞くまでもないな」


「大丈夫です!こういうの本で慣れてるんで」


「やめとけ、本の知識は当てにならん。【読解力<誤>】がついているなら尚更な」


「む、この世界はなんかこうスキルみたいなものがあるんですね!それならわかりますよ!ステータスとか叫ぶとなんか見えたり、しないです……あれ」


詼は恥ずかしさのあまり下を向く。


「まぁ何だ、疲れてるんだ。役所に連れていくから諸々の手続きをして貰え。そんな顔するな、俺らも手伝うからよ」


「ブラー、良い奴だな!」


「よーし!いざ役所へゴーゴー」


受付に連れられた。文字は幸い理解出来る。

ここまでは異世界通りと安堵する詼


「名前は、揷嘴詼と。これで、年齢は18歳。あとは職業は─────」


「終わったようだな、次はこっちだ。一応スキルも見てもらわないとな」


魔法の帽子を被ったザッ魔女っ子がいた。魔法陣の上に立ち、怪しい呪文を唱えていた。


「すいません、ブーリアンさん!今いいっすか」


声に驚き、ビクッと震えたあとヘナヘナと倒れ込む魔女っ子


「き、君たちぃ!いつも声掛けする時はゆったりしてくれって言ってるだろ!」


「あ、あぁすまんな。それでなんだが、スハシカイを見てもらいたい。まだこの国初めてでな、ブーリアンもうすぐ試験だろ?試しも含めて」


「え?良いんですか!!ってかなんですか?この少年は!」


「だからその見て欲しいって言ったやつだよ」


「あ、どうも。スハシ・カイです」


「ブーリアンだよ!偉大なる魔女インピィダンスの直系にして孫!」


「それで、ブーリアンさんは僕の何を見るんだ」


「それ即ちスキル(叛天能 )だよ!君には幾つあるかな」


「それじゃ、俺らは受付の方で待ってるからな」


フラクタル達は詼を後にして戻って行った


「これは俗に言う適正魔力検査ですね!」


盛り上がる詼と、その様子に調子をあげるブーリアン


「ちっ、ちっ、ちっ!甘いだよ!魔力なんて見れば分かるものさ。だけどスキルは魔女にしか見れない、正確には魔女に与えられた役目なのだよ」


「役目?すいません、あんまり詳しくなくって」


「なら特別に教えるだよ。この国は女神に歯向かい、そのせいで本来貰えるはずの加護、通称スキル(天能 )とは逆の性質を持つスキルを与えられたんだよ」


「何したんだよ、昔の人達」


「詳しくは王様に聞いてねー。じゃ、始めるだよ。魔法陣の真ん中に座ってね」


詼は言われるがまま魔法陣の真ん中に座った。


「私の名前を告げる。天能を賜り人々の叛天能を消す恩寵の使・ブーリアンである。その力を今・新たにこの地に足を運びし者へ使う事・女神パージに希う・解析叛天能───アナリシス・オールハック」


魔法陣が詼を包むように上昇し、頭上で弾け

その弾けた粒子が光の文字として天に浮かぶ。


「あ、えぇ。ミスったかもしれないだよ!にげー」


ブーリアンに突き飛ばされ部屋の外に転がる。

それと同時に部屋から大量の文字が溢れ出る


「うぁぁ?!」


「こうなったら仕方ないだよ。地の神より貰いし天能をここで使います、土壁よ我等の軌跡を塞げ」


後ろに向かって詠唱をするブーリアンだが、何故か逃げる先に壁が産まれた。


「ブーリアンさん!これじゃ僕らあれに飲まれますよ?!」


「嘘、なんで失敗するだよ!あぁどうすれば」


失敗のショックからか膝と手を地面につき動かないブーリアンを庇うように詼は覆い被さる。


「失礼しますよ!」


詼の背中に激痛が走る。文字が追い付いたのだ。


「ぐっ、何だこれ」


苦悶を零す詼とは裏腹にまだショックから立ち直って居ないブーリアン


「いや、まじでどうすんだよこれ!」


「うぅ……失敗しただよ師匠、また修行の日々は堪えるだよ……」


「とりあえずブーリアンさん、落ち着いてください!」


軋む様な激痛を耐えながらブーリアンを気にかける詼。

だが、未だに状況は変わらない。


「もうやけだよ!風の神よ!ぜーんぶぶっ飛ばしちゃえ!」


ブーリアンを中心に起きた風は溢れ出る文字と共に詼を吹き飛ばす。


「うわっ?!」


廊下は何事も無かったかのように静まり返り、土壁もボロボロと崩れ始めた。


「あれ、今度は成功しただよ。ってあああ!大変だよ!」


その後駆け付けた職員達により詼は医務室に運ばれた。


「叛天能をここまで所持するなんて医者を長くしているが聞いた事ないねぇ。あんたの切除は推定6000ナスリアコインかかる」


「ナスリアコイン?それってどれくらいなんですか」


「時期にもよるけど狩りをして、無傷で帰って来て。尚且つ成果物がしっかりある状態が60年続けば払えるねぇ。何せナスリアコインは叛天能を消す為に教会から与えられた免罪符みたいな物だから、一つ一つが高価なんだよ」


「ひぇー、払えないぞ!そんな金額」


「まぁまぁ、直ぐに取らないと死ぬ物なら今頃死んでるから。中には取らずに一生を終えた人もいるんですよ」


「そうなのか。なら良いのかな?ありがとうございます」


一礼し医務室を出るとブーリアンに遭遇する詼


「あの!ごめんなさいだよ……ほんとに私が未熟で」


「いや、いいよ。幸い怪我もないみたいだし。それに誰がやったてアレは抑えれないと思うよ」


「そうかな?本当にそう思うかい?少年よ」


耳の後ろで声がした。詼はばっ!と振り返るが誰もいない。


「どうしました?なんの気配もないだよ」


「誰かが今後ろから囁いてきた気がするんだ」


「そんな芸当出来る人なんて師匠しか居ないだよ。でも、今は出張してるから」


「まぁ、その出張が終わったから戻ってきた訳だけど。ブーリアン、楽しい楽しい訓練の日々をもう一度体験してもらうよ」


ニコニコと現れた右目に眼帯を付けた女性。

ブーリアンとは対照的にスラーっとし、魔女と言うより何か別のおぞましい物に見えた。


「君は、いや!言わなくても分かるとも。異国民だね?」


「あ、はい」


「見た所、叛天能がおかしいくらいに有るようだ。全て無料で取り除く事が出来るけどどうするかい?」


甘い問いかけ、詼の顎を持ち上げながらブーリアンの師匠は微笑む


「ダメだよ!師匠の無料は───」


ブーリアンは急に口ごもる。


「それで、どうするかい?」


「頼みます!」


「では宜しい!2人とも付いてきなさい。黄金の鳥の異名を持つ私がしっかりみっちり指南してあげよう」


「あぁ、だから言っただよ……」


「え?えぇぇ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ