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3、魔力

 エイダが森で暮らし始めて16年が過ぎた。

その日は占い師の老女ダーラが森の家にやって来ていた。ダーラは魔術指導と魔力のコントロールの訓練のため、時々エイダが住む森の家に顔を出していた。


「エイダ様、魔力の調整は順調ですか?」

 ダーラがエイダに尋ねると、エイダは答えた。

「はい。今も魔力を外に出さず、内に込めるよう気をつけています」

 その答えに、ダーラは満足そうに頷いた。

「そのようですね。今、魔力は感じられません」


 ダーラは椅子に腰掛け、話を続けた。

「エイダ様の魔力は強力なので、その力を隠しておかないと何かとトラブルに巻き込まれる危険性が高いです。良い心がけです」

「ありがとう。ダーラの教え方が上手だったから、魔力を隠せるようになったのよ」

 エイダは微笑んだ。

「あと二年もしたら、お屋敷に帰れますよ」


 ダーラはそう言うと、新しい水晶玉をのぞき込んだ。

「はじめてエイダ様の未来を覗いたときは、その魔力に負けて水晶玉が壊れてしまったものです」

「そうでしたか」

 エイダは申し訳なさそうに俯いた。


「今は……そうですね。エイダ様の未来は暗くは無いことが見えます」

「良かった」

「ですが、エイダ様の魔力の強さゆえ、はっきりと未来を見ることは出来ません」

 エイダはため息をついた。


「私も年を取りました。もうエイダ様にお教えすることもないでしょう」

「ダーラ? 急に何を言うのですか?」

 ダーラは優しい微笑みを浮かべた。

「魔力を完全にコントロール出来るようになれば、災いも避けられるでしょう」

「はい、ダーラ」

 エイダは頷いた。


「私の役目は終わりました。もう、命も残りすくないでしょう。あとは一人で頑張ってください、エイダ様」

「そんな寂しいことをおっしゃらないでください、ダーラ」

 涙ぐむエイダの頭を、ダーラは優しく撫でた。

「お屋敷に帰ったら、令嬢としての立ち居振る舞いに気をつけるのですよ」

「ええ、分かっています」


 ダーラは静かに立ち上がり家を出た。


「ケイシー、ダーラとはもう会えないの?」

「私にはなんとも言えません……」

 ダーラが戻ることは、もうなかった。


 そして二年が経ち、エイダはマクミラン家へ帰ることとなった。


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