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「ちょっと待て。何を言いだすかと思えば、それなら俺だって、リラ以外は考えられないから。ジュードまで参戦してきたとなれば、今まで周りに合わせていたけど、我慢なんてやめるよ。俺は誰にでも優しく接するリラのことがずっと好きだったんだ。俺とのことで他の令嬢から何か言われたり傷つけられたりしたら困ると思っていたけど、だったら全力でリラのことを守ればいいよね。今、そう決めたから」

「え?」


 守るって相手が間違ってない?

 ロドニー様はジェニファーのことが好きなんじゃ……でも、身体を前のめりにして私のことを見ている。


「待ってください。私だって、みなさんよりは格下になりますけど、リラを想う気持ちなら誰にも負けません。誰にも媚びない自然体のリラが好きなんです。リラが男性から迫られることに怯えているのを知ってたので、気持ちを考えて押すのは控えてましたけど、みなさんがそのつもりなら、今からやめます」

「え? だから名前が……」


 ジュード様につられてロドニー様とマイク様も愛の告白をしている。

 何故か私に。


 オロオロして挙動不審になっていると、となりにいたスタン君も私を見ていたので、彼と目が合った。


「今日はジェニファーの様子がおかしいと思ったら、そういうことだったのか」


 この流れで、どういうこと? よくわからなくて、スタン君の説明を待ってみた。


「僕もリラのことがずっと好きだったんだ」

「え?」


 スタン君まで? なんでこんな事態になっちゃってるの?


「リラだから好きで、どこがどう好きかなんて説明できないけど、僕はただずっとそばにいたいと思っている。なのに、リラの性格を理解しているコーディさんや、みんなが動き出したのなら振られるとか関係性が壊れるのが怖いなんて言ってないで、覚悟を決めろってことなんだろ。なあ、ジェニファー?」


 ジェニファーに確認をするスタン君。それにこくりと頷いた彼女。


 やっぱり、スタン君たちの告白の相手は私で合ってるみたいだけど……。


「リラには、まだ好きな男がいないと思っていて安心していたけど、コーディ殿が出てくるとは迂闊だったよ」

「私は誰にも君を渡したくないんです。だから、これからはちゃんと男として見てくませんか」

「コーディさんが、リラのことを可愛がっていたことは知っていたけど、まさかそんな目で見ているなんて」

「あら? リラはいい子だもの。おかしな話ではないでしょう」

「それはそうだな」


 真剣な表情の三人。それとジェニファーが私をからかっているとは思えない。


「では私も気持ちを伝えよう」


 ジュード様も?


「その前にこれは返しておく」


 ジュード様は私に髪飾りを手渡した。と思ったらそのままジェニファーの方へ近づいて跪き、その手を取る。


「私はジェニファーのことが好きだ。だからいずれ結婚してほしいと思っている」

「「「え?」」」


 今日は驚いてばかりだけど、みんなもそうみたいで、何度も声が重なる。


「ちょっと待て? なんでジェニファーなんだよ?」

「リラじゃなかったんですか?」

「ってことは、ジュード様もジェニファーとグルだったってこと?」


 みんなの言葉を聞いて、不敵な微笑みを返すジュード様。

 この状況からして、ジュード様の相手はジェニファーで間違いないらしい。


「外野がうるさいな。こんな状況での求婚は不満もあるだろうから、ちゃんとした場で改めてするつもりだ。だからそれは安心してくれ。君のすべてを愛している。今はそれだけ伝えておきたかっただけだ」


 気持ちをストレートに伝えられたジェニファーは、頬を真っ赤に染めながらも固まってしまった。虚を突かれたのは他のみんなも同じ。

 いきなりの告白を目の当たりにして唖然としているかと思ったら。


「リラ、気持ちを伝えたからには、俺のことを真剣に考えてくれないかな」

「なんで私なんかを……」

「可愛いし、出しゃばらないし、人の悪口を言っているところをみたことがなくて、令嬢たちとのやり取りをみてれば性格がいいのもわかる。それに俺は、追いかけられて、しつこくされるのが好きじゃないんだよ。物静かで出しゃばりじゃなくて、リラほど引き付けられる子はいないよ」


 ロドニー様がそんなふうに想ってくれていたなんて。なのに私はあの人と重ねて苦手だと思ってしまってごめんなさい。

 だけど、誰にでも優しいロドニー様に対して心が痛くなったことは一度もない。むしろ、他の女の子たちの応援をしていた。追いかけないのもしつこくしないのも、私にそういった気持ちがないからだと思う。


「君のことをずっと見守っていました。私は理屈っぽいって言われることが多くて、でも、リラは難しい説明でもそれを理解しようと真剣に聞いてくれましたよね。普段は控えめなのに、たまに見せる満面の笑みが愛おしくて、ずっと好きだったんです」


 マイク様の気持ちには驚くしかない。

 勉強を教わることがあっても、それ以外は特に会話もしたことがなかった。ふと視線が合うことはあったけど、一緒にいることが多ければそんなことがあっても不思議ではないと思っていた。

 満面の笑みっていうのは、女の子たちとおしゃべりしていた時のこと?

 今まで、研究会の仲間ってくらいの認識しかなかったんかった。それは特別に思ったことが一度もなかったってことで、本当にごめんなさい。


 私の隣に座っていたスタン君もこっちを見ていることに気がついて緊張が走る。


 あれ? 私、緊張してるの?


「まさか、その髪飾りをもらった時にコーディさんの気持ちを受け入れちゃったとか? いや、そんなわけないよな。だったら、リラは普通でいられるわけないから絶対に顔に出るし。もしかしたらその髪飾りには別に特別な意味はなかったってことか? でも、すごく高価そうだし。リラの誕生日でもないし、コーディさんは本気なのか? 向こうも僕の気持ちは知っているはずだから、まさか、焦っているのか? だったらやっぱり本気なんだよな?」


 スタン君も混乱しているのか、独り言が口からだだ洩れしている。


 横から声が聞こえてきたので、チラッと彼の顔を見たら、目が合ってしまった。だから、戸惑っている顔を隠すためすぐに下を向く。


「これからもずっとリラのそばにいたいのに……」


 スタン君の独り言が聞こえて恥ずかしい。


 今の言葉で気がついたけど、彼は私が人の輪から外れてしまった時、何も言わずに隣にいた。それはいつもだったから、私は一人ぼっちとか寂しいとか思ったことがない。スタン君も私と同じで、前に出ないタイプだからだと思っていたけど、もしかしたらそれは違っていたの?


 その態度があまりにも自然だったから、彼の優しさがわかりにくいだけだったのかもしれない。


「あの、この髪飾りはコーディお兄様から直接いただいたわけではないので、考えすぎだと思います」


 たぶん、コーディお兄様が私のことをそんなふうに想っているわけがないと思う。今までそんなそぶりなんて一度もされたことはないし。


「リラは僕たちの気持ちにもまったく気づいてなかったんだから、その勘は当てにならないと思う。実際コーディさんはリラのことをとても可愛がっているんだから」

「そうだろうね」

「そうですね」


 三人に言われてしまうと反論できない。


「そうかもしれませんけど……突然すぎて頭が混乱しているので……すみません」


 彼らが熱のこもった視線を向けて私を見つめていることがわかったから、誰の顔を見ることができなくなってしまった。


 みんなから目を逸らしたけど、それでも緊張して心臓はバクバクいっているし、全身に力が入っていて、髪飾りを握りしめている手が痛い。


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