表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

短編

本命チョコは校門を出てから

作者: 牧田紗矢乃
掲載日:2021/02/06

「男のためにチョコを用意するなんて面倒」


 そう言っていたユカが、放課後に小さな箱を制服のベストの中に隠して教室を出ていった。

 ああは言ってもユカも女の子なんだ。

 裏切られたような、何とも言えない空虚な気持ちで窓の外を見る。


 私が知らないだけで、何人もの子が今日、二月十四日にチョコレートと共に想いを届けているのだろう。


 ユカがチョコを渡しに行ったのは、たぶん三組の武内くんのところ。

 なんだかんだ言ってユカの目線はしばしば彼を追いかけていたから。


 私がぼーっと考え事をしているとユカが帰ってきた。

 私たちは特に言葉を交わすこともなく、いつものようにカバンを持って教室を出た。




 今日はユカの口数が少ない。

 テンションも心なしか低いような気がするし。


「こうやって帰れるのもあと半月だね」


 私が切り出すと、ユカは気の抜けたような声で返事をした。

 ユカはどうでもいいのだ。


 高校を卒業してもお互いの連絡先は知っているし、会おうと思えばいつでも会える。

 本気でそう思っているのだろう。

 そんな保障は、どこにもないのに。


 あの角を曲がれば「また明日」と言って別の方向へ歩いて行く。

 明日も明後日も、同じように日々が続ていくと信じて。

 そのお気楽さが今日はなぜか許せなかった。


「ユカ!」

「……あ、うん。ごめん」


 私が小突くと、やっとこちらを見てくれた。

 腹いせに聞いてやることにした。


「告白、ダメだったの?」

「バレた?」


 憑き物が落ちたように笑うと、ユカはカバンの中から小さな箱を取り出した。


「受け取ってすらもらえなかった。彼女いるんだって」

「ふーん? じゃあそれ私がもらうわ」


 言いながらユカの手から箱を強奪する。

 そして、代わりにモルゾフの紙袋を押し付けた。


「これ……」

「チョコだよ」

「本命⁉ 誰に⁉ 友チョコだって用意しないって言ってたじゃん」


 私、嘘はついてないよ。

 友チョコ()用意してないんだ。


 ……なんて言えやしないから。


「また明日」


 ぎゃーぎゃー騒ぐユカを尻目に私は角を曲がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ