6 黒鯛
河口から海に出ました。
どんどんと塩分濃度が濃くなって、もう底の方は、ほとんど塩水です。
「これが海の水かぁ〜
ほんとうに、しょっぱいや」
いきなり深場に行くのは、不安なので、岸に沿って沿岸を進むことにしました。
河口付近の沿岸の底は、ほとんど砂ばかりです。
アサリが並んで、歌を歌っています。
♪アサリサリサリ
海には潮の流れがあるよ
新月は大潮
中潮小潮長潮若潮またまた中潮
その後が満月の大潮だぁ
アサリサリサリ
満ち潮は ご馳走を運んで来るよ
干潮は 砂に潜ってお昼寝さ
甘太郎は、鳥の歌は聞いた事がありますが、水の外なので、よく聞こえませんでした。
アサリの歌は、水の中なので、よく聞こえます。
なんだか、ウキウキして先に進むと、小魚がいっぱい。
ご馳走です!
お腹いっぱい食べました。
ここで、甘太郎のご馳走を紹介しましょう。
イカナゴ、イワシ、タチウオは、その稚魚です。
人間も大好きな、シラスですね。
オキアミは、栄養価の高い小さなエビ。
ゴカイは、海のミミズです。
えっ!
日本海蚤?ノミですか?
甲殻類系のプランクトンだそうです。
甘太郎、浮かれてあんまり変なもの食べるなよ!
甘太郎達は、沿岸の浅瀬を進んでいます。
しばらく行くと、宇宙人のような大きな生き物に出会いました。
「ワレワレハ、エイダ。
チキュウハ、シンリャクシナイガ、アサリヲサガシテイル。
ミナカッタカ?」
アサリはエイの好物なのです。
「あっちで歌を歌っていたよ。」
甘太郎は教えてあげました。
「カタジケナイ…」
エイは礼を言ってそっちの方に去って行きました。
またしばらく行くと、今度はロボット掃除機のような生き物が、底を這っています。
一部の地方では天然記念物になっているカブトガニです。
「£%€$∥*!」
カブトガニの言葉は、わかりませんでした。
カニと名前はついていますが、クモやサソリの仲間なので、魚とは会話出来ないのかも知れません。
海には、ほんとうに珍しい生き物が沢山いるなぁ〜
と甘太郎は感心するのでした。
砂地の浜から少し進むと磯に変わり始めました。
おばさんと呼ぶと叱られそうで、お姉さんと呼ぶのには少し抵抗のあるお年頃の、チヌ(クロダイ)とグレ(メジナ)がいます。
「あら〜、あなたどこから来たの?見かけない子ねぇ?」
「山奥の川から来ました」
「ウッソー!マジ!信じられないわー!」
お姉さん達は、なにしてるんですか?
「アタシ達ぃ〜?
いまねぇ、カニ食べてんの。ねっ、グレちゃん。
そうよ、カニ美味しいわよ。
アンタも食べる?」
「なんだ、口に合わないの?
最近の子は、軟弱ねぇ〜
アタシ達は、なんでも食べるわよ!チヌちゃんなんて、スイカも食べるのよ。
そう言うグレちゃんだって、ミカン食べるじゃないの!」
スイカとミカンは、実際にチヌとグレ釣りの餌として存在しています
「そぉねぇ〜
柔らかいのが好きなんだったら、沖に見える島に行ってみればぁ〜
イワシやイカナゴの数が半端じゃないわよ。」
「そうね!それがいいわ。行ってらっしゃい!」
口を挟む余裕もなく、チヌとグレのお姉さんに、甘太郎は次に行く場所を決められてしまいました。
チヌ釣りには色んな餌があります。
トウモロコシはもちろんのこと、撒き餌にイカの油を混ぜるといいとか、団子にウイスキーを入れるといいとか、みんな好き勝手試しているみたい。
スイカでチヌが釣れると聞いて、スイカを持ってチヌ釣りに行きましたが、釣れませんでした。
その話をすると友人は
「チヌはパンストで釣れるんだ!」
などと言います。変態親父じゃないんだから