異世界転生して『俺 tueeeイケメンチート』になりましたが。
秋の桜子さまより扉絵をいただきました!
秋の桜子さまありがとうございます!
扉絵のキャラはこちらのキャラメーカーで作成。
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作成:秋の桜子 さま
「ごめんなさい!」
……何度この台詞を言われただろうか。
いや、実は覚えている。31度目だ。
────自分で言うのもなんだが俺は努力家だ。
元々のスペックやポテンシャルが高くない俺にとっては、努力だけが自らの価値を上げる唯一の方法。
それでも得れたのは才能のあるヤツが大した努力もせずに手に入れた地位と同レベルかそれ以下だった。
女子に関しても結局イケメンには敵わない。
ちょっと甘えてくるような女子は大概俺のことを都合のいい存在として捉えていた。それでも懲りずに期待をしては、この台詞が待っているのだった。
「ちきしょおぉぉぉぉぉぉ!!!」
俺は走った。
フラれて夕日に向かって走るとか、物凄く青春っぽいが、そんな青春など要らん。
彼女が欲しい。
走りに走った俺はいつの間にか繁華街に出ていた。
人混みの中尚走る俺。
努力家の俺は毎日筋トレを欠かさないので体力面では自信がある。
そのせいで……残念ながら体力がありすぎた。
こんな辛い日は、兎に角疲れて何も考えず眠ってしまいたかった。
なので人にぶつかるのも関係無く走り続けた。ぶつかった相手がなにやら叫んでいる声が聞こえてきても関係ない。
俺の哀しみはそんなモンではないのだ。
31連続ごめんなさいとか、桜木○道と俺位のモンだぞこの野郎!!!!
(ちきしょう……涙で前が見えないぜ……)
脳内のモノローグに更に哀しくなってしまった俺。
鳴り響くは『ゴールデンボンバー/女々しくて』。(サビの部分しか知らんけど)
ゴールデンボンバーっぽい人達が脳内で何故かタオルをブンブン回す中 (※実はよくわかってない為なにかと混ざっている)、また俺は人とぶつかった。
──サクッ。
突如、腹に異物感。
そのまま前のめりに倒れた。
……ゴールデンボンバーは確か4人位で、一人しか白塗りはいなかった筈だ。
なのに俺の脳内には無数の白い顔の人達がブンブンタオルを振り回していた。
そしてなんか違う人に変換されている。
「これは……芸人の……」
あれ?……誰だっけ?
顔を白塗りにする芸人の名前が思い出せなくて、おもわずひとりごちる。
「……アレが現世での辞世の句(※誤用)になるとは思わなんだ」
どうやら俺は死んだようだ。
頭のオカシイ奴に刺されて。
目の前には俺の言葉に「それなw」と軽く返すキラキラしたなにか。明確な形はない。
しかし「それなw」ってなんだよ?
神様とかじゃないんかい。もうちょっとそれらしくしてくれ。
「神様? そらちょっと違うけどまぁいいや、人に話しても理解できんし、精々崇め奉れ。 そんなことよりどうする?」
なんか俺は人とぶつかりながら走った際に、数々の他人の命を救ったらしかった。
それは良い悪いで量れることでもなく、イレギュラー的な出来事。
俺にとっても、目の前のヤツにとっても。
落下物に頭を強打し死ぬはずだった人。
カーブでトラックの車輪に巻き込まれ事故るはずだった人。
それから頭のオカシイ奴に刺されて死ぬ筈だった人達。
そいつを止めるために頑張っちゃって、刺されながら刃物を奪う勇敢なサラリーマン。
トータル10数人。
おぉう……。
ご褒美に付加価値付きで異世界に転生させてくれるそうだ。
実際のところは辻褄あわせであり、『異世界』と言うのもこちら側の一方的な表現で、正しくはないようだが。
「『俺強イケメンチート』……とか、アリすか?」
「りょ」
「りょ」とか軽ッ!!!
……とか思ってたら、次の瞬間にはもう転生してた。
うん、崇め奉ろう。神様バンザーイ☆
俺が転生した世界はとってもわかりやすくテンプレ的ファンタジー世界というか……超有名ゲームとか、超有名小説サイトの超有名書籍化作品みたいな感じだった。
ちなみに超有名小説サイトは、揺りかごから墓場まで皆が読み手として、あるいは作家として小説を気儘に楽しめる素敵なサイトだ。
しかも無料。優しさに溢れている。
あれ?俺は誰に何説明してんだろ……?
……ま、いいや。
俺は『光源氏か俺か』位の輝かんばかりの見目麗しさと全属性対応型魔法能力を備え、少なくとも通常の(人間の)3倍は身体能力も高い。
前世の記憶を取り戻した10歳の俺は叫んだ。
「完璧だ────!!!!!!」
そこからは元々努力家の俺は研鑽を積みまくり、齢16になる頃には15メートル級の竜を倒せるまでに成長を遂げた。
素材になりそうなモノは売っ払い、肉は村の皆に分けてあげると、喜んだ皆はBBQ的な祭を開いてくれた。
ただ肉を焼いて食いたいだけの気もするが。
「うーんこれからどうしようかなぁ……」
上手に焼けた肉を頬張りながら悩む。
「タケル」
幼馴染みの三つ編みソバカスっ子、マミナが俺に声を掛けた。
マミナは村で一番可愛い女子だが、所詮片田舎の小さな村……垢抜けない娘だ。
おまけに滅法気が強く、俺のことは虫以下の扱いである。
竜を倒せる様になるまでは煩悩は封印していたが……これからは……ムフ♥(あ○ち充風に)
「ちょっと! 聞いてるの?!」
マミナの怒声で我に返る。
聞いてなかったが、『冒険者になるのか』と聞いたらしかった。その前に叩かれたが。チートでも普通に痛い。
「まぁね、でもお前に関係ないだろ?」
「関係あるわよ!」
マミナは少し間を空けて、涙目で言った。
「……幼馴染みじゃない」
──ドキーン♥
わかりやすく狼狽える俺。
ツンデレ?ツンデレだったの?マミナたん!
ツンデレ幼馴染み……それは漢の 浪漫。
どうしよう、めっちゃ可愛く見えてきた。(単純)
「マミナ……」
もう冒険者なんてやめちゃおっかな!
始まりの村で暮らすのも良いよね!!
ドキドキしながらマミナの手を握ろうとすると蹴りを喰らう。
まさかの足技。
「あっ! ごめん、反射的に!!」
マミナはご丁寧に俺の座っている横に線を引くと、それを挟んで隣に座る。
「この線からこっち来ないでね」と宣いながら。
「だって心配じゃない、ほら……こういう言い方もなにかなって思うけど……」
マミナはモジモジしている。
告白フラグキタ──────!!!
しかし、その予想は手酷く裏切られる。
「アンタマジキモいし」
………………は?
今、なんと仰いました?
オタオタしながらマミナはフォローを試みる。
「いやっ、格好いいと思うのよ?! 何でもできるし見た目もシュッとしてるし!! でも……こう……」
「…………こう?」
──ゴクリ。
自分の嚥下音がやたらうるさい。
「……生理的に嫌悪感を感じるのよね」(キリッ)
何一つフォローになってねえぇぇぇえぇぇぇ!!!!
そういえばギルドのお姉さんも、武器屋の若奥様も、にこにこしながらも俺には何故か距離を取っていた!!
「そんな馬鹿なァァァァァ!!」
「あっ! タケル?!」
竜を倒したというのに、その日は泣きながら家に帰った。
どうやら俺は異世界転生によって『俺 tueeeイケメンチート』になったにも関わらず、何故か生理的に女子から嫌悪される体質になっていた様である。
あのクソ神を一瞬でも崇め奉った自分が憎い。