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四、

 私は、頭の中で整理した。両手を合わせると相手の苦しみを吸い取る能力に加えて、近くにいる人の心の叫びを聞き取ることができるようになった。この能力をどうしたら最大限に生かせるのだろう。今の仕事では、食べていくことはできるが、私の能力を生かし切る事ができない。五年間お世話になった占い師という肩書きも仕事も辞めよう。仕事を辞めて、街を歩き回るのはどうだろう。昨日の青年のように、街には心の叫びを上げている人がきっと大勢いるに違いない。私は特に趣味や好きなことはなかったので、割と貯金はある方だった。お金の心配はいらない。お金に困ったら、また働けばいい。私はとにかく人を救いたい。そう考えた私は、上司に辞表を出し、仕事を辞めた。それから私は、街を歩き回るようになった。私が歩き回る時間は主に夜から深夜。そのために、昼夜逆転の生活を余儀なくされたが、それは大した苦痛にはならなかった。


「あの、大丈夫ですか?」


こう声を掛けるだけで、涙をこぼす人が沢山いた。人は追い詰められるとこんなにも脆いのかと驚いたが、更に驚いたのがその苦しんでいる人達の悩みだった。死にたい程の悩みなのかというものばかりだった。人を救うのが好きだった私だけれど、そんな簡単に死にたいなんて思って欲しくなかった。生きている事にもっと感謝して、どんなことがあっても落ち込んだっていいから、死にたいなんて思って欲しくなかった。でも、人間とは一人一人キャパが違って、その一つの出来事で何も感じない人もいれば、死にたいとまで自分を追い詰めてしまう人もいることが分かった。私は、心の叫びを上げている人を探し当てては苦しみを吸い取り、その後この人達が幸せな人生を歩めるように願った。もう私の力を借りなくても生きていけるように。地道に活動を続けながら、私が救った人達の幸せを願いながら眠りにつくという日々が当たり前になっていた。


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