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二、

 私がこの能力に気付いたのは、高校にも行くことができずにインチキ占い師をしていた頃だった。占いの勉強なんてしたこともなかったし、占いに興味を持ったこともなかった。ただ、人の役に立つのが好きだった私は、家の近くのショッピングモールに占い師が集まる階があるのを思い出して、迷わず求人に応募した。当時十五歳だった私は歳を誤魔化すために、これでもかという程の化粧をして面接に行った。面接では身分証明書を提示するように言われることもなく、高卒の十九歳という嘘は簡単に通用した。


【あなたを苦しみから解放します】


という看板を立てて始めた占いの館は、占いをするというよりも、足を運んでくれた方の悩みや愚痴を聞くというものだった。話を聞いただけで、


「気持ちが軽くなりました」

「なんだか体が軽くなった」


と言われ、私は人の役に立てて嬉しいと感じて、その仕事をずっと続けていた。そんなある日、いつものように営業していると、顔面蒼白な若い女性が入って来て、


「もう死にたいんです」


と私に泣きついた。


「苦しみから解放してくれるんですよね?早く解放してください。助けてください。お願いします」


彼女は私にすがりついてこんなに泣いている人を見たことがないというぐらいに泣き喚いた。私は困惑した。どうしたら彼女を救えるのだろうか。どうしたらいいのか分からずにいた私だったが、気が付くと言葉を発していた。


「両手を私の両手にピッタリ合わせてください」


なぜこんなことを言ったのかは分からない。分からないが、そうすれば彼女を救うことができる気がしたのだ。私にすがりついて泣いていた彼女は、もうどんな方法でもいいから自分の事を救ってほしかったようで、すぐに私の言う通りに両手を合わせた。私は静かに目を閉じて、全神経を手に集中させた。すると、あんなに泣き喚いていた彼女が泣き止んだ。手がだんだん熱くなってくる。私は集中を続ける。


「はぁっ、はぁっ」


私は息が切れて目を開けた。すると彼女の表情はとても穏やかになっていた。


「大丈夫ですか?」


今度は逆に彼女が私を心配していた。私は一体何をしたのだろうか。すると彼女は続けた。


「あなたの合わせてくれた手は、まるで私の苦しみを吸い取っていくようでした。手がどんどん温かくなって、そうなるにつれて、私の心はどんどん軽くなりました。実は昨日、結婚の約束までして同棲していた彼氏と喧嘩して私何を考えたのか追い出してしまったんです。後悔して何度も連絡したけど、もう連絡もつかなくて。自分を責めて責めて、死にたいとまで考えてしまってフラフラ歩いていたらここに辿り着いて、あなたに救われました」


「そうだったんですか」


私は彼女の話の前半部分を聞いて混乱していたので、後半部分はほとんど頭に入って来なかったけれど、私のおかげで彼女が助かったのだけは理解した。


「私、前に進めそうな気がします。本当にありがとうございました。あなたの手には、きっと人を助ける力が宿っているんですね」


彼女はそう言うと、代金を置いて出て行った。私は、エリア担当に体調が悪くなったから今日は帰ると伝えて店を閉め、急いで家へ帰った。家へ帰るとベッドに倒れこみ、さっき起きた出来事について考え始めた。


「私の手には、人を救う力がある…?」


独り言を口にして、その日は疲れ切ったのか夕方からご飯も食べずに眠りについた。

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