表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/13

十一、

 私はついに起き上がることさえ困難になり、食べ物も体が受け付けなくなっていた。毎日同じ天井を見上げて、どうしてこんなことになったのか、考え続けた。検査しても原因が分からなかったのだから、考えても仕方なかったのだが、もうそれぐらいしか考えることがなかったのだ。


「私の人生なにか間違ってたのかな…」


少し弱気になると、すぐに涙が出るようになっていた。私の体は段々とやせ細り、例えるなら。まさに骨と皮。先生も看護師さんも私を直視するのが辛そうだった。


 ある日の夜中、私は急に息苦しくなった。すぐにナースコールのボタンを押して、助けてくださいともうかすれた声しか出なくなっていたが、懸命に訴えた。すぐに看護師さんが来てくれたが、慌てて、


「先生を呼んできます!」


と言って、どこかへ行ってしまった。まだ死にたくない。私にはまだ助けなければいけない人が沢山いる。きっと私の力を必要としている人が沢山いる。そんな人たちをもっともっと救っていかなければならないのに。


「私はまだ死ねないのよ!」


声にならない声で叫んだ。すると、先生が走って駆けつけて来て、私は集中治療室へと運ばれた。ピーッ、ピーッ、ピーッ。私の心臓はまだ動いている。良かった。安堵した。そしてそのまま深い眠りについた。


先生は言った。


「午前三時四十六分です」


私は深い眠りについたのではなかった。ついに私は、命を落としてしまったのだ。私は私を見つめていた。死んだ瞬間から、私はふわふわと浮いていた。先生たちが泣き崩れるのをぼーっと見つめていた。そう、私は成仏できなかったのだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ