か弱そうな男子生徒
いつもそうだった。
人の顔色ばかり伺って、自分の言いたいことは胸の
奥の、奥の、奥にしまい込む。
周りがが嫌がれば自分も嫌がって、
好きになれば自分も好きになる。
取り敢えず
「うん、そうだよね」
って合わせる。でも心の中じゃ悪態ばかり。
あぁ、いつからだろうか
今日も周りの人らが知っている自分を創り出して
「おはよう、行ってくるね」
と言えば始まる
非刺激性の一日
私が通っている高校は、海を高い位置から望める
田舎の中の進学校。
進学校プラス校則ユルユルで何かと話題。
髪染め、ピアス、私服でも可。なんでもありにしては
高学歴な奴らが集うこの学校は他校の生徒からしたら
憧れの的だろうな。
私自身も未だにビビる。
ほら、今横を通り過ぎて行った赤い頭髪で
ピアス開けまくりの人。
あの人は3年生で学年トップを誇る人物。
校内じゃ有名人だ。
市内でも有名人で、頭脳明晰、容姿端麗、運動神経抜群、
実は富豪の子息ではないかとの噂あり。
「スゴすぎる……」
めちゃくちゃ甘ったるい香水の匂いするし、腹立つ。
それに比べて私は頭はいい方だと思っているが、
かと言って金持ちだと言われれたらそうでも無いし、
容姿端麗かと言われればそんなもんじゃない。
周りのヤツらからよく言われるのは
『八方美人』『ご都合主義者』しまいには『何考えてるか分からない子』なんて言われる。
そりゃこう呼ばれるわけだ
『氷のような人だ』って。
「別に好きで言われてるわけじゃないし、っと、」
ブツブツ呟いてたのが聞かれたか気になるが
それどころではなくなった。
目的地の方から走ってきた同じ制服の男子が私にぶつかって尻もちをついていた。
「す、すすす、すいません!!」
謝る男子に手を伸ばそうとすると、パッと立ち上がり
私の顔を見れば
「ぁ……氷姫、さん…?」
…今なんて言った???
「は? あ、てか大丈夫? 擦りむいてるよ?」
しゃがんで擦りむいている膝を手当してやろうと思ったら
「大丈夫です!!」と一言いい歩きだそうとした、
が私が腕を掴んでそれを阻止した。
「あの、」
「あ、あの! 本当に大丈夫です。ぶつかってごめんなさい!」
そこまで顔を赤くして言われても、足を引きずってまで私とは逆の方向に行こうとする人をほっとくことは出来ない。
「静かに。ボーッとしてた私も悪いんです、手当ぐらいさせてください。」
男子をしゃがませいつも持参している家で冷やしておいた天然水で軽く洗い流し、綺麗なハンカチで抑えた。
「んっ…」
止血のために傷口を抑えているが痛むのか
声が小さく耳を掠めた
「ハンカチはいいから、学校でちゃんとしてもらってください」
擦り傷にしては止まらない血が、綺麗なハンカチを赤に染めていく。
これはまだ抑えとかないと……ハンカチ2枚とか持ってないしな……
「ありがとうございます。なんだか……氷姫さんって」
「待って待って……、その『氷姫』ってのはなんですか? 私そんなんじゃないし」
氷姫だなんて言われたことも無いし、あだ名にしては
趣味悪い。すると男子の口が開いた
「ごめんなさい。『氷姫』って言うのは、流唯さん、貴方のことです。」
……ん? いや、うん………
「わ、私の事だろうとは薄々気づいてたけど、そんな事じゃなくてどうしてそんなあだ名になったのかって話です」
この人……天然??
あと、なんて弱そうな子…………