「何でLINE返してくれないの?」
工藤との通話を終えてベッドで横になって白い天井を見つめた。白い天井には工藤のこと、理沙のこと、自分の身体のこと、将来のことが映し出された。
果たして俺は工藤のように理沙を愛せるのか、俺は高校を卒業したら何をしたいのか、このおかしくなってしまった身体はどうなってしまうのか。実は周りが付き合い始めて焦って理沙にしたような気がしてきた。生徒会で活躍している彼女とテニス部の部長をしている2人は自分の中でもお似合いだと思っている。誰でもこういう悩みは抱えるはずだが自分の悩みは重すぎないか?いや、そんな事はないはずだ。工藤だって理沙だって自分と同じような状況だったりするのに、勉強が出来るのに、自分だけ出来ない事はないはずだ。もっとテニス部の部長として、高校生として勉強ももっとやらなければならない。そんなふうに考えていた。
そういえば何度も思うが、工藤の彼女は美人だった。あの時に彼女を疑った俺が馬鹿だった。彼の未来は明るいはずだ。模試も上手くいったみたいで陸上も怪我をしてしまい走ることは出来ないものの自分が出来る最大限のトレーニングを毎日続けているらしい。「俺は今幸せだよ」通話の最中に言っていた。盛者必衰という言葉があるが彼の今の状況を考えたらそんな言葉は全く思いも浮かばなかった。
彼が幸せだったのはとても喜ばしいこと。
でも何故か心の底から喜べなかった。虫唾が走るのだ。どうして自分はこんなにも不幸せなんだろう。彼は何も悪くないのに彼に対してイライラしてきた。憎ささえも感じてしまっていた。
ああ、そんな事を思っている自分が馬鹿なんだ。俺は夢の中へ入り込んでこの報われない現実世界から離れたかった。
「雄太郎、朝だよ!」
母親の甲高い声で目を覚ました。雲と雲の間から貴重な日光が刺しており、それが部屋の窓を通して俺の顔に当たった。頭痛と吐き気と手足に痺れが俺を同時に襲った。今日は月曜日。1番大嫌いな曜日だ。いっそこのまま眠りについて金曜日の夜まで目を覚ましたくなかった。
重たい身体を起こしてスマホを取ってホーム画面を見た。「今度、一緒にデートしよう」彼女の理沙からだった。そんな気分は全くせず考えたくもなかったから俺は無視をして階段を降りた。
その日の朝、家から最寄り駅から2駅先の駅に電車が到着したとき同じ車両に理沙が乗ってきた。
「おはよ」
「おはよ」
俺は相も変わらず理沙を前にしてTwitterを見ていた。
「ねぇ」
「どうしたの?」
「何でLINE返してくれないの?」
「あ!ごめん!」
「もう、最近多くない?いつも未読無視されてる気がするんだけど」
「まだ空いてる日が分からないから分かったら返そうかと思ってたの」
「ていうことは行けるんだよね?」
「ああ、まあ」
「やった!!空いてる日が分かったら教えてね!」
本当のことを言えば身体が動いてくれないから唯一部活と学校が休みの日曜日ぐらいはずっと寝ていたかった。でも俺は無理をしなければいけないという気持ちに駆られて「分かったよ。今日の部活に予定表が配られるから教えるね」と返事をした。
そして俺は理沙と一緒に温かかった電車から出た。