「前々から考えていたことなんだが」
春休みが終わり、俺は留年せずに無事3年生になった。部活も佳境を迎え、ほとんどLINEを返せずにいて数日間学校の違う工藤と連絡を取っていない状態が続いていた。しかし、今日は部活が早く終わり、久しぶりに早く帰れることができた。
駅を降りたら学校の方へ進んでいる電車に乗っていた工藤とばったりと会った。
「おお!久しぶりじゃねえか!」
「おう!」
「てか、LINE返せよ」
「あー、すまんすまん」
俺らは駅の階段を下り、工藤は自転車を引いて駅から200m近くの俺の家まで亀みたいなスピードで駄弁ることにした。
俺らが中学3年生の頃、同じ委員会の委員長と副委員長だった俺らはどうすれば山積みの問題を解決できるのかということを考えるため、帰りながら委員長の工藤と話していた。その時も亀みたいなスピードで学校から距離があるのにも関わらず工藤はそこまで着いてきてくれた。学校から俺の家と学校から工藤の家までは同じぐらい遠い場所だが、俺の家と工藤の家は反対方向にあるため、工藤はよく「俺帰り道だけで5km近く歩いてるな〜」と話していた。彼は中学生の頃にやっていた部活内で「底なしの体力」と言われていた。彼も走ることは好きなようで高校に入って陸上部に入部した。しかし、底なしの体力は尽きてしまう出来事があったのだ。それは肺の病気と喘息を高校生から患うことになり、思うように走れていないらしい。それでも彼は必死に走り、県総体へ出場できるように努力している。
「最近どうよ?」
「ずっと走ってる」
「肺の方は大丈夫なのか?」
「まあ大丈夫かな。新しい治療してから良くなってきた」
「それは良かった」
「雄太郎の方はどうなの?部長としてやれてるか?」
「まあな。ぼちぼちやってるよ」
「人をまとめる立場になるって大変だろ?」
「確かにな」
「人数がいればいるほどそれぞれの意見がたくさん出てくる。それを全て聞くのは難しいが、なるべく聞くようにする。それを大まかに自分の中に落とし込んで最善策を練る。けど、部長は司会者じゃないから自分の意見もちゃんと持たなければバラバラになるから。意見を聞いた上で自分の意見を取り入れて方針を立ててれば自然とまとまるはずだから」
さすが問題が山積みだった委員会を変えた委員長の彼の意見だ。反論の言葉すら出てこなかった。
「さすがだな。その通りだな」
「高校ではリーダーシップなんて発揮せずにここまで来たけどな」
彼は理想の上司そのものだった。もし俺が彼と同じ職場で彼が勤めていた会社を辞めて自分で会社を興すなら、俺はもちろん彼に着いていくだろう。部下思いで融通の効く彼だが、やると決めたら失敗しても挑戦し続ける頑固さもあり、カラスは白いと言われていても黒と言える男でもある。
「お前をリーダーにしないのは勿体ねえよ。頼り甲斐なさそうだけど人を惹きつけてまとめる力はピカイチだからな」
「まあ、成績もあるんじゃないか?部長とかブロック長を決めるのは先輩だから。ヘナヘナしている後輩に後を任すことは出来ないだろうし」
「それは否定できねえな」
今日、彼に会ったのは偶然か必然か。部長として思い悩んでいることなど彼は知る由もない。だが何かヒントは見いだせたはずだ。
「なあ、前々から考えていたことなんだけど」
「ん?」
「俺、今の気持ちに申し訳ないと思っているんだよね」




