「まあ、何とか」
「多分、寝不足だね。疲れで貧血が起こったみたいだからね〜」
意識が戻った頃には保健室だった。後から来た後輩が俺が倒れているのを発見し保健室へ運ばれたらしい。養護教諭が部室の前まで来て、ただの貧血だったこと、この時期に倒れている人は睡眠不足ということから幸い救急車沙汰にならずに済んだ。
顧問は俺が倒れたことによって部活を中止にして部員を帰らせたらしい。
「1人で帰れる?もう身体の調子は良くなった?」
「まあ、何とか」
「よし、じゃあ顧問の先生には私が伝えておくから。荷物はベッドの横にあるからね」
俺はリュックを背負って保健室を出た。
玄関へ向かっている途中、顧問にたまたま出会った。
「桂馬、大丈夫だったか?」
「はい、何とか」
まだ手が痺れており上手く物を握れそうもなかった。
「テスト期間中でもちゃんと寝ろよ」
「これから気をつけます」
俺はふと部室での怒号が頭に過った。あの声は金山と富澤だろう。
「先生、ちょっと相談なんですが」
「どうした?」
「最近、部活内でギクシャクしていて、特になかなか家の用事で部活に参加できてない金山が来ると富澤といつも言い合いをしているんですよ。部長の自分はどうすればいいのか分からなくていつも何も出来てないのですが、こういう時ってどうすればいいんですか?」
俺は膝が震えながらも顧問に今の気持ちをぶつけてみた。顧問が最後の砦だった。
「それは部長であるお前がしっかりしなければならないんじゃないか?」
「えっ?」
「金山が来ると富澤と言い合いになっているのは部長であるお前自身が金山を受け入れようとする気持ちがなくてそういう雰囲気になってしまったんだろ?ならお前が何とかしなきゃじゃないのか?」
冷酷で心に鋭い氷が突き刺さるような気持ちになった。
「何にでも先生任せって小学生じゃないんだからさ。自分で何か考えてよ。じゃあ、先生忙しいからこれで」
相談した俺が馬鹿だった。自分で何も考えずに顧問に相談したのがいけなかった。「本当にダメな部長だな」そう呟いて下駄箱を開けてブーツを取り出した。しかしブーツを冷たい床に落としてしまった。
数日ほど部活のことについて考えていたが何も思い浮かばず、ずっと無の境地にいるようだった。とても仏教チックで自分で宗教作っているのかって思ったがそれ以外の言葉では表せなかった。激しい川の流れによって地面が削られていくように俺の体も蝕まれているようだ。でも理沙も工藤も弱音を吐かずに毎日努力をしているんだ。弱音を言っているのは自分だけかもしれない。
また今日も鉛のような重い身体を起こす。ただでさえ暗い視界がもっとおかしくなって暫く何も見えなかった。頭痛と吐き気が俺を襲う。その後に手足の痺れに気付く。果たしてここは現実世界なのだろうか。自分だけ地獄にいるような感覚がした。もういっそのこと地獄に行きたいよ。だって苦しんでいる人が俺以外にも沢山いるのだから。
雪は積もる。それと同じように不安も積もる。生き地獄とはこのことだ。




