REPORT 8
_帰りの列車
「結局レポートってどこにあるんでしょうね。
見つからずじまいですし」
依頼を受けてから結構時間は経ったけど、相変わらず情報はなかった。
「いいや、そうでもない。
そもそも手がかりなんてのは残ってるはずがないんだ。
例の科学者はレポートを隠したかったから、レポートは隠されたんだ。手がかりなんて彼によって抹消されてるはずだよ。ただ一つ何かヒントを残してね」
「確信があるんですか?」
「そりゃあね。
どうして隠すことにしたんだろう?
隠すくらいなら消せばいい。跡形もないってことを知らしめてやればいいんだ。そしたら面倒な小競り合いとか、こんな依頼も生じずに済むし。
つまり形に残すっていうことはさ、あとからまたなんらかの形で使われるかも知れないってことを見越してるからなんだよ。だとしたら、完全に手がかりを消すはずもない。
この考えがあってたら、私たちが見てきたものの中に一つ不自然な点があるよね」
不自然?
特におかしなものはなかった気がする。科学者の孫に会って手紙を見せてもらったり、鉄道ジャックとか……
あるとすればあの手紙かな。
でもそれらしき記述のようなものもなかったし、もし暗号にでもされてたら困るぞ。全文覚えてる必要がある。
「手紙っていうのは正解だよ。
でも暗号とかじゃない。唯一手がかりと言えるのは、あの紙だよ。
そう、鉄道がプリントされてたでしょう?
身近にある紙を使ったから偶然なんて思うかも知れないけど、そもそも今の時代印刷技術は発達途中でね、複雑なものは刷れないんだ。サンロマンとかその他都市部ならある程度簡単なものは使われてるけどね。やっぱり高級品だよ。
そんなものを用意してまで書くってことはあのプリント自体に意味があるんだ。
つまりは鉄道。残念ながらそれ以上のヒントはなかった。けどここまで分かればあとは早いよ。
徹底的に列車を破壊してやればきっと中から出てくるはずだよ」
推理を披露し終えた猫屋敷さんはすっと目を閉じた。
言われてみれば、そうだとも思える。
時系列的にも空間的にもおかしいところはない。
鉄道の発明はレポート作成の後だし、列車の中なら簡単には破壊されないから見つからない。
納得は可能ってだけで、決して劇的なエンディングでも、緻密な論理構成からなる結論とも思いがたいけれども、それでも猫屋敷さんは答えを出したのだ。
そもそもの依頼に問題があるってところは否めないから、やはり猫屋敷さんはすごい人なのだろう。
猫屋敷さんの膝にそっと毛布をかけ、サンロマン中央部までの道のりを思った。
結局このあと、ありかがわかったらしいのならいいということで依頼は成功という扱いになった。
そしてもう1つ。
僕が、猫屋敷さん曰く『何とは言わないが何かを揉みしだいた件』で猫屋敷さんによる折檻を受けたこともここに記しておこう。
以上、『僕』によるレポートから抜粋
やっとラストです。
この後も続きます。ミステリーばかりになることもないと思います。
描きたいジャンルを書いていく感じで。