REPORT 4
先行きが見えず不安になりますが完結はします。
本当ですよ?
次の日僕たちは科学者の生家を訪ねた。
家は大きいが、東部大陸では農家なら普通のサイズだという。
故郷とは違うらしい文化をまた学んだ瞬間だった。
「はじめまして、所長孫です。
今日は祖父のことでいらっしゃったとか」
所長孫と名乗ったのは15歳の男の子だった。
随分としっかりしているようだ。
「そうだよ。
そのおじいさんは今はどこで何をしているのかな?」
と猫屋敷さんが仕事モードに入る。
猫屋敷さんの東部では珍しい黒髪に、所長孫も少し目が引かれたようだがすぐに視線を戻した。
「祖父はここにはいませんよ」
「ということは町の外に今は住んでるのかな?」
「いえ、そういうことではなく。祖父はもう亡くなっているのです」
「そうだね、知ってる」
所長孫は訝しげな顔をした。
「……ではなぜそのような質問を?」
「君が信用に値する情報源か確かめるためだよ」
こう言ったのは猫屋敷さんではなく、僕。
猫屋敷さんに彼を試すように伝えたのが僕なのだ。
「言っておくけどね、僕にありきたりな嘘は通じないと思った方がいい。嘘をつく時の顔を僕はほぼ確実に判別できる。
さっき自己紹介した時に君は若干汗をかいていたよね。加えて、目を合わせようとしたら僕の両目の真ん中に視線を合わせようとしていた。これは東亜列島の心理学問では相手に隠したいこと、嘘をつく意思があることを指している。
改めて言っておくよ、僕たちに嘘は通じない。
ありのままを正直に言った方がいい。
お互いの時間の節約のためにもね」
「……。
そうですか、わかりました。
それでは正直に話しましょう。
さあ、なんでも聞いてください」
また猫屋敷さんのターンに戻る。
「それじゃあ、聞こう。
君は、おじいさんのレポートのことを知っているかい?
すごく重要なものなんだよ」
「……はい。存在は知っていますが、その詳しい内容は知りません。その場所も。
祖父が残した手紙を亡くなった父から受け継いだのですが、それを読んで初めて知ったのです」
嘘はついていないようだ。
彼の振る舞いに不自然な点はなかった。
「そっか。
ちなみにその手紙ってまだあるかな?」
「はい。必要なら持って来ましょう」
彼に持って来てもらった手紙には鉄道の絵がプリントされていて、その上に達筆な字でレポートの存在のことを書いていた。
「おじいさんは、レポートの隠し場所に自信があるみたいだね」
猫屋敷さんが言った。
「そうみたいです。
これから先政府関係者にレポートを出せと言われるかもしれないが、心配はするな。この手紙を出せばもう関わらないせ済むだろうって書いてますけど、僕たちにはいい迷惑ですよ」
所長孫は顔を歪めてそう言った。
_宿屋
「どうしましょうか」
「どうしようね。隠し場所はわからなかったし、最初にあたりはつけておいたんだけど、その確信も得られなかったよ。
明日もう一度聞きに行くか、ここはもう出てまた別の場所をあたりに行くかだね」
そんな感じで打ち合わせをして、そのまま眠りについた。
翌朝には鉄道に乗って、またさらに東部に向かうことになったのだが、きっと色々狂ってしまったのはその鉄道が原因だったのだ。
よくある、たとえそれが国家機密のレポートであったとしても、「探し物」の依頼は、逃亡兵の活躍するような戦争末期にふさわしいものになったのだ。