夢
夢を見た。
黒縁の壁掛け時計が示すのは午後一時。
窓をしめていても聞こえるほど煩く蝉が鳴いている。
台所へ向かい、白い冷蔵庫を開ける。
卵やアルミホイルに包まれた腕、天然水。
正直、充分な食料とは言い難い。
空腹は我慢しテレビをつける。
お昼のニュース番組が映る。
天気予報や最近起きた事件が報道されていた。
その時、インターホンは鳴った。
昨日と同じように。
心臓が動きを速める。
モニター越しに外を確認する。
その姿を見て安堵の息をつく。
おそらく新聞の集金だ。
彼には悪いが居留守を使わせてもらう。
バイクが走り去る音が聞こえるのを確認し、パソコンをつける。
ネットニュースでとある事件について調べることにした。
太陽光が真っ黒な部屋に反射して私を照らす。
ふと時計を見ると時刻は午後三時を過ぎていた。
少し休もうと席を立つと、今日二度目のインターホンが鳴った。
さっきの集金が戻ってくるにしては早すぎる。
願いを込めて、息を吐く。
モニターを見て、鼓動はより一層激しさを増した。
そこには二人の警察官が映っていた。
寝心地の悪さに目を覚ます。
シーツはぐっしょり濡れ、心臓は早鐘を打っている。
吐き気がするほど鮮明な夢。
頭痛とめまいに襲われ、透き通った黒い床に足をつき、台所へ向かう。
その途中で壁に掛けられた薄い赤色のTシャツが目に入る。
洗ってみたが、匂いも色も落ちていない。
余計に吐き気が増してきた。
冷蔵庫を開け、水を取り出すと同時に異臭が漏れ出した。
冷たい液体が熱い体内をゆっくりと流れていく。
心音も落ち着いたので、もう一度冷蔵庫を開ける。
血生臭さが鼻をつく。
その腕は既に腐敗が進行していた。
これも食べればあと五日は持つか……
そんなことを考えながら戸を閉める。
夢と同じような行動をとる自分に気色悪さを感じながらも、テレビをつける。
三日前に起きた猟奇殺人事件の犯人は未だ逃走を続けています。
また、遺体は未だ左足しか見つかっておりません。
ニュースキャスターの淡々とした声が黒い部屋の中に響く。
この生活をあと何日続けられるだろうか。
この生活をあと何日耐えればいいのだろうか。
矛盾する二つの想いが私の中で渦巻いている。
蝉は限られた時間を精一杯哭き続けた。
中学生のころ「原稿用紙自由に使って何か書けー」っていう授業があって、その時に作ったものです。物語を書くのはこの時が初めてで、なんとなく思い入れがあったので最初の投稿はこれにしました。
腕を冷蔵庫に入れるとか中学時代の僕は病んでたのか。笑
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