1 成り立ちを語る時。
写真が飾られている。壁の、コックボードにメモがちりばめられた、その右下にそれは在った。大切にしているのだろう、態々薄い保護の役目を果たすコーティングがされてあった。つるつるとした表面の、何か植物性の樹脂で施されたそれ。そんなに大事にとってあるくせに、まるでわざと真ん中には置かなかったようなその写真。見る人が見れば憤るだろう、又は、笑い話にもなるだろう情景だった。
その写真には、とあるギルドの創設メンバーが肩を並べて写っている。
ギルドマスター、サブリーダー、医務長に、武闘家。同じ年代かつ付き合いが長い四人の周りに、幾分かばらつきのある数人が四人を囲っている。
彼ら創設メンバーはよく、虚を突かれたような顔をされるという。こんな人数でよく創めようなんざ思ったもんだと。足りないもんが多過ぎてやってられないだろうと。
だが揃って、大真面目な表情でもって全員が口を揃えるのだとか。
だよな?そう思うよな?本当、と。
そんなモン、ハナから判ってた。まぁ1回や2回軽く死ねるなとカレコレ何べん思ったか。もう二度と戻りたくない過去ナンバーワン。
口々に言う中で、なおグサリと刺さる冷めた声を聞くという。
と言うか、今も昔も自分は反対してましたけどね、と。
あれだけ言ったのに……足りてなかった……進言したのにねぇ?……と留まる事を知らない口撃にギルマスと一部のメンバーがしてやられていた。かなり苦労させられたのだろう、腹癒せにぐさぐさと串刺しにしていった声は、溜息を吐いてこうも言っていたという。
焦ってたんだ、らしくもないと。そう呆れ果てていた。
彼を知る者はどこか、感慨深げにそれを見遣るのだという。
二十年前──世界は危機に瀕していた。
世界は、12のギルドによって均衡を保っていた。均衡維持組織として12個、個々が各々に地域、分野、種族の総括を行っていた。
様々な種族が、ギルドに信頼を寄せていた。ヒーローだったのだ、困っていたら助けてくれる、格好いいヒーロー。
永きに渡り代を経て、世界を護ってきたその存在は、脅かされ、崩れ去ろうとしていたのである。
噂が流れた。
『内一つ、要は壊れ、11となるらしい』と。
どの、やいつ、とは誰も言わなかった。情報が出回らなかったのだ。不自然に途切れたそれに、ああ本当なのだと妙な予感を誰もが感じていた。
何かが変わった。動かずにはいられないと、何かが、変わったのだ。
──して、こんな輩が現れる。
次の『12番目』は誰になる?座につく長はいったい誰だと。
我こそは、我こそは、
粗探しに勤しむチンピラと、道場破りだと燻ってた二番手と、旨い汁は吸えないかと裏をかぎ回る小物から資産家まで。
醜い醜い、そんな時代で。
これは、それから約、九年後の話。一向に晴れない空の下、第二の変化から始まる話───