二十四話 あなたじゃ駄目
廊下を走りながら向かってくる怪物を殴り飛ばす。
鉄を纏った拳。どうやってるかは意識してないけど、威力を莫大に上げていると共に身体への衝撃を緩和しているから殴っても平気。
これは昨日思いついた……というかなんとなくでやってた使い方。こっちの方が対処がしやすい。
城の中は案の定というか、怪物がうようよと湧いては私へ向かってくる。跳んで突入した瞬間一匹踏み潰したし。
どいつもこいつも別に苦労する相手ではない。けれど、確実に疲労は溜まっていく。
それが目的だろう。うん。
けれど私は、入ってからずっと全力で走り続けていた。
邪魔するのなら串刺しにしてぶっ飛ばしてぶった斬って、勢いを弱めることなく奥へ奥へと走り続ける。
もちろん向かうのは汐里の場所へ。
汐里の気配はずっと感じている。そこへ真っ直ぐ向かう。
疲れは感じる気がするけど、多分気のせい。
そんな気がするのは疲れるよりも汐里を取り戻す方が重要だから……かもしれない。
もう何十体も打ち倒した頃だろうか、私は急に開けた広場に出ていた。
汐里はこの先に……いる、けど?
でも、汐里の気配が近づいてきてもいる。
汐里が分裂した?……と思いかけたけれど、すぐに結論は出た。
汐里の話を思い出せばわかる事だ。
今まで、汐里から離れる事が無かったから気がつかなかったんだろう。
広場の前方、大きな階段からゆっくりと降りてくる影が一つ。
そしてその影に付随する者も、一つ。
「…………」
鉄の武装を解く。
どちらもよく知っている……人外だった。
「————こんにちは、実束さん。ちょっとぶりですね」
「そうだね、イベリス。生きてたんだ」
「いいえ、いいえ。確かに死にましたよ。でもそれは身体だけの話。心は死んでいませんから、素材があれば」
「ううん、そうじゃない。心もまとめて死んだと思ってた」
「……生きてますとも。私、まだ諦めていませんから」
「頑張るね。……それで、何の用かな」
「この先に進まれると少々面倒、との事なので止めに来ました。もちろん私は戦えませんので」
「わたしがきたってわけです」
イベリスの前に幽霊が降り立つ。
……ああ。似たような存在、だったっけね。今はそれは関係ないかもだけど……
それでもその佇まいには覚えがあった。
「さぁ、常さん。存分に遊んできてくださいね」
「うん。なんか、みつかおねえちゃんなら……よゆうでぶちのめせるきがするし!!」
一瞬で姿が消えたかと思ったら、私は胸に凄まじい衝撃を受けて、
常ちゃんの腕を掴んだ。
衝撃は胸の鉄が吸収し、足から生えて床に突き刺さった鉄の杭が私を支える。
吹っ飛びはしない。
「はれ?」
きっと常ちゃんは覚えていないだろう。少なくとも明確には覚えていないはず。
だけど、私は————
「……リベンジ。ぶちのめすのはこっちの方だ、さかづりとこ……!!」
————————————。
意識だけは残っている。
だけどそれ以外の一切は許されていない。
それが今の、自分の状況。
まぁ、当然の処遇。前回は行動を制限しなかった為に自分の手下を殺された上に逃げられたのだから。
多分、今はリベルタの側にいるんだとは思う。
本来なら意識さえあれば能力源を感知できるはずだけど、今はよく見えない。多分、広がる私の力を片っ端から吸収しているからだ。
だからか、リベルタの反応だけはわかる。
何も聞こえないし、何も感じない。リベルタがいる事だけがわかる。
実束たち、今はどうしているだろうか。
無茶してないといいのだけど。
私が何かできたらいいんだけど。
……何かしようしても、なんのとっかかりも感じない。
私に能力は無いのだから。
私はただ力を持っているだけの人間なのだから。
だから、このまま待つしかない。
悔しいけれど、このまま待つしかない。
考えると辛くなってくるから、静かに意識を閉じる。
今、この状態で夢を見るとかあるのだろうか。
あるとしたら……久し振りに、夢を見たい。
ゆっくりと。
————————————。
掴んだ瞬間、横殴りの蹴りで手は弾かれた。
だけどその時には私は全身を鉄で覆っていた。直後に雨のように連続で全身に衝撃が走る。
耳障り。だけど身体は防げてる。
「きれないー!ぶにゃってするー」
そんな声が聞こえる。そう、ただの鋼鉄にはしていない。
なんでそれで平気になるかは理解してないけど、鉄にある程度の柔らかさを混ぜて身を守っている。硬いスライム、みたいな。
隙間を探してかくまなく包丁が振るわれる、けれどこの鎧に継ぎ目は一切無い。
あの時とは違う。耐えられ
「どぉーり、やぁ!」
轟音。
「ふ…ぎっ……!!」
頭が激しく揺れる。
何をされた?音からして包丁じゃない。
設置面積が広くて、それでいて棒状のもので殴ったような……蹴りか!
効果があると認識したのか、そこから包丁から蹴りに移行。
直接蹴られるよりかはマシだけど、着実に鎧の上からダメージを負わされている。砲弾でも撃ち込まれているような気分。
けれど、まだ。まだ耐えなきゃ。
「ぐ、ぇっ……!」
ひときわ大きい衝撃と轟音が脳を揺らす。首が折れそうになるのを鉄で支える。
もう少し……もう少し、限界まで耐える。
「づっ、う、がっ…!だ…っ」
「守ってばかりですね、実束さん。お仲間ですものね」
イベリスの声が聞こえる。心配してくれてるんだろうか。
「心配は無用っ…だよ、イベリス。わだっ…し、は!死ぬ気ない、から」
「でも、そのままだと一方的にやられてしまいますが」
「知ってぇ゛っ…るよ」
だから、動く。
打撃の間隔が若干広がったのを確認して、私は鎧の背中側を開いて飛び退いた。
直後空の鎧に蹴りが入り、辺りに激しい金属音が響いた。
「ひぇあっ!?……あれ?」
音で怯む常ちゃん。
私が抜け出したのをすぐに察知しただろう、鎧を乗り越えて私へ追撃をかけようとした…はずだ。
だけどそれは無理だ。
「あいたぁ!?」
常ちゃんが衝突し落下したのを目視した。
……鎧を乗り越えようとした常ちゃんの目の前に出現したのは、鉄格子。
「あたた…え?ん?あれれ、いつのまに」
その鉄格子は常ちゃんの周囲を既に取り囲んでいる。
鎧で時間を稼いでいる間に、糸のような鉄線で“骨組み”を形成していた。
そして、鎧に回していた鉄を鉄線へ送れば……鉄線は棒状にまで肥大化し、鉄格子となる。
正直今出せる量としてはかなりギリギリの運用。だけど、間に合った。
「常さん!」
「んーと、これへんにやわらかいやつだからきれないよー」
全力で斬られ続けたらわからない。
だけど、今の常ちゃんは少なからず消耗している。蹴りの威力が下がったのが証拠だ。
少なくとも、一瞬で抜け出すことはできないはず。
だから……これで。
「っ!」
押し潰した。
がごん、と音が響き、砂煙が舞い上がる。
「……い、づっ……」
事が済んだ後、痛みを自覚する。
全身が痛む。骨が折れたりしているだろうか。
だけど私は死んでない。
「……ほら。私は、死んでないよ。イベリス」
「そう、ですね。正直……驚きです」
「ですが」
床が一瞬揺れた、次の瞬間。
再び砂煙が舞い上がる。
「ぷはぁ!」
煙から射出されるように現れたのは……さかづりとこ。
「常さんもまだ、死んでいませんよ?」
イベリスが笑みを浮かべた。
……床から出てきたって事は、鉄格子に押し潰される前に床を掘って回避したんだろう。
あの状況下で最も破壊しやすいのは床だから。
「ちょっとびっくりしたけど、うん、もうひっかからないよ。あちこちとびまわってぶったぎるね!」
そう、同じ手にはもう引っかからない。
あれが最初で最後のチャンスだった。
だから。
「いいや、イベリス。とこちゃんはもう死んでるよ」
「えっ?」
鉄格子が少し細くなる。
その鉄の行き先は?
「え」
常ちゃんの足が綺麗に切断された。
「……あれ…?」
断面からは煙のようなものが立ち昇り始める。
床を掘るのは予想してた。
高速化できると言ってもあの一瞬だ、そこへ意識が集中するのも予想した。
だから、鉄格子を閉じる前にこっそり常ちゃんの足へ糸を括り付けた。
油断させて、そして確実に目の前で切り裂く為に。
……ジャックの時の事を思い出す。
脇腹を裂かれた、それだけで常ちゃんは煙が流れ出て、消滅していた。
これだけで済んだ。
歩き出す。
「…………どうして、そんな容赦なく殺せるのですか。仲間を」
「別に。常ちゃんならともかく、とこちゃんには個人的な恨みがあった。ただそれだけだよ」
「…………」
汐里の気配…常ちゃんの気配が遠ざかっていく。
じきに消滅するだろう。汐里の元へ戻っていく……はず。
……じきに……
「……?」
なんだろう。
何かが変だ。
……あの煙のようなものは、力が可視化したものとして……気配は、汐里の力を感じているもので……
あれ。消滅する時って、そんな急にするものなの?
普通に考えて、身体を維持するだけの力がなくなって消滅するのだから……
……今、全く気配が弱まってないのはなんで?
振り返る。
常ちゃんは…変わらず、宙に浮かんでいる。
浮かんでいるけれど、煙は。
「え……?」
止まっている。
煙が途絶えている、じゃない。
切断された足から立ち昇る煙は、その形のまま、停止している。
「……へー…なるほど、なるほどー」
「どうして」
「ん?うん。ちょっとおもいついて、ためしたみたのです。はやくできるなら、おそくもできるんじゃないかなーって」
遅、く?
理解をしようとする。訳がわからない。
でも、それでも、その言葉の通りなら……切断面だけ遅くしている、としか解釈できない。
「やっぱり、できるっておもうことがたいせつなんだよね。えぇと、おねえちゃんのことばをかりるなら……“意識を夢に向ければ、そして自分にはできると信じれば。自分の中のなにかは思うまま”ってこと!」
……事態を理解して、外側の時間が急激に遅くなっていく。
今から鎧を?防いだ先がわからないし、そもそも準備ができていないから鎧が間に合わない。
武器で防ごうにも常ちゃんのスピードなら余裕で背中に回って斬ってくる。
何の準備も無しに戦って敵う相手じゃない。相手は人外で、私は所詮人間。
だから準備が必要だった。でも準備する暇がない。
常ちゃんの姿が消える。
疑問は投げかけるだけ時間の無駄。
あらゆる手は速度で封殺されて意味をなさない。
詰みだ。
けれど。その程度で諦めない。
そんなの、汐里を諦める理由になんかならない——!!
一瞬だけ、白い軌跡が見えたような……気がした。
「………………………」
音は何もなかった。
私はまっすぐと目の前の光景を見つめていた。
「…………ずるいよみつかおねえちゃん。そんなことできたんだ」
「……あなたの……汐里の言う通りにしただけだよ。できると信じれば、思うままって」
「そっか。そうだよね。わたしがあんなことできたんだから、みつかおねえちゃんもこんなことできるよね、きっと」
包丁は確かに振るわれて、私の首を両断しようとしていた。
だけど、首に触れた瞬間、私は……包丁を、鉄を操作して持ち手から常ちゃんを貫いた。
そこから針山のように全身を貫く。
もう、ここまで損害が大きいと遅くしても自分が行動できなくなるだけだ。
「こんどこそ、みつかおねえちゃんのかちだよ。りべんじ?だっけ。せいこうだよ」
「…………。本当に、覚えてないの?」
「なーんにも。わたしはしらないよ。そういうことになってるんだもの。だから、しらないよ」
「……そっか」
「それじゃ、ばいばい。つぎはきっちりころすね」
その言葉と同時に、常ちゃんは霧散した。
あの時と同じように。
「…………」
振り返れば、イベリスは驚愕、と言わんばかりの顔でこちらを見ていた。
「……ほんとうに……驚き、ました。まさか、常さんを倒してしまうなんて」
今度こそ歩く。
イベリスの後方、汐里の元へ向かう階段へ。
「……私は戦う気ないよ。イベリス、あなたも大切な人だもの。……私を止める?」
イベリスは柔らかく笑う。
「…………いいえ、いいえ。何度も言ってる通り、私は戦えませんから。常さんが倒されてしまった以上、もう私には何もできません」
「それに……悔しい、ですが。汐里さんにとっての幸せはきっと、実束さんと共にいることでしょうから……私の役割は終わりました」
横へ引いて、階段を手で指し示した。
「どうか、汐里さんをお願いします。……これは私の個人的な願いです」
「…………」
それを聞いて、私はイベリスの横を通って、階段へ足をかける。
「ごぶっ」
そして後ろで肉が貫かれる音、あと血を吐く声がした。
「…………な、ん……で……」
足を止めて振り返る。
そこには複数の鉄に貫かれたイベリス。
その手から離れて床へ落ちる拳銃があった。
「……実束、さん。あなた、わたくしのこと、一番好きなんじゃ…ないんですか……?どうして……そんな、冷静な顔で…こんなこと……できるんですか……」
「……確かに、今私はあなたが一番好きみたい。大好き」
「でもね、汐里は好きとか嫌いとかじゃないんだよ」
「え……?」
拳銃を鉄の足で踏み潰しながら、イベリスへ歩み寄る。
「汐里は私にとって、汐里なの。好きだからとか大好きだからとかじゃなくて、汐里だから、なの。大好きな人とか汐里と比べたらどうでもいい」
串刺しにされて力なく手を下ろすイベリスとまっすぐ目を合わせる。
「あの時はまだ対策ができてなかった。心の整理の仕方がわからなかった。汐里への気持ちの定義がよく分かってなかった。でも、もう汐里は友達とか恋人とか家族とかそんなじゃなくて、汐里だってわかってる。もう“最愛の人”は傷つけない理由にはならない。……あなたは、自分を汐里と認識させるべきだった」
「そんなこと……できません。私は、汐里さんじゃない。大好きな人に、なりたいわけじゃない」
「そうだろうね。だから、お前は最初から詰んでたんだ」
「…………」
言いたいことは言った。
もう行こうと思った……けど、イベリスの目はまだ死んでいなかった。
何もできやしない。それは明らか。
でも私の足を止めるには十分な目だった。
「……そうですね。最初から、私は駄目でした」
足元に散らばる拳銃の残骸を見ながら、イベリスは話す。
「私は戦えないと嘘をつき、戦わないと嘘をつき、汐里さんの為の行動よりも私の役割を優先した。……不意討ちもこの通り失敗ですしね」
「————でも」
顔を上げた。
「汐里さんへの想いは、嘘じゃありません。あなたに語った個人的な願いも本当です。今、死ぬほど悔しいんですよ?もうすぐ死にますが」
「それでも……私は、まだ諦めてない!」
「……」
もうこれ以上は聞く必要がないと判断した。
踵を返して、階段を登る。
「今回はこんな結果でしたが、次こそは私の願いを優先させてみせます!リベルタ様に設定された恋だとしても、中身が全く無い空っぽの気持ちだとしても、私は汐里さんが好きなんです!嘘の恋なら本物にしてみせる!空っぽなら今から中身を作ってみせる!」
「いつか、いつか————設定上の物じゃない、本物の気持ちを汐里さんに抱かせてみせ」
声が途絶えた。
「…………」
ちょっとだけ振り返ると、誰かがいた場所には空気に溶けて消えていく煙、誰かを貫いていた鉄だけが残されていた。
……イベリスの言葉が頭の中で反響する。
中身のない恋。
私とイベリス、違う点はどのくらいあるだろうか?
私だってこの気持ちの源泉は説明できない。
何か明確なきっかけがあったわけでもない。
それでも最初から汐里には何となく惹かれていたし、どうでもいいものが跋扈しているこの世の中で汐里だけは何故か特別だった。
……奇妙な関係だとは思う。
普通ではない。私も汐里も平均と比べると普通ではないし、二人の間の関係も普通じゃない。
イベリスはずっと諦めないだろう。
私も諦めはしない。
イベリスは自分の感情の理由を説明できないだろう。
私もなんでこうなのか説明できない。
それでもイベリスは汐里が好きと言える。
それでも私は汐里が好き。
それは……
「………………ああ、確かに似てるかも」
何もなくなった空間を見るのをやめて、また登り始める。
「けれど。“恋”に拘ってるようなら、私と汐里を引き離せないよ」
独り言。
だけれどどこかで聞いているだろうイベリスへ、宣言する。
「あなたじゃ駄目」
鉄の槍が消えて、広場から誰かの痕跡は消えて無くなった。
————————————。
…………?
誰かが来た、気がする。
それは私だけど、私じゃないような気がする誰か。
「ただいま、おねえちゃん」
……常ちゃん?
「そうだよ、わたしだよ。ここであうのははじめてだねー。ゆめなんかずっとみれなかったものね」
今までどうしてたの?
「みつかおねえちゃんとあそんでた。みごとにまけちゃいました」
……イベリスに変なことされたんだね。
「そうそう。うまいことけしかけられちゃった。でもみつかおねえちゃんちゃんとかったんだよ」
そっか……実束はやっぱりすごいね。
「ねー」
……常ちゃん。
「なにー?」
私さ……このままここで待ってることしかできないのかな。
「のうりょくがないっていわれたんでしょ?それはたしかにまちがってないし、どうこうはできないんじゃない?……そうじぶんでおもってるでしょ」
…………そうだね、思ってる。
力はあっても、能力が無いんじゃ、ただ利用されるだけしか——
————待って、常ちゃん。
「んー?」
なんで……私が思ってること、わかるの?私の力でできてるから?
それなら……
「“素の状態の私の考えてる事もわかるんじゃないか”……みたいなー?」
…………。
「うん、わかるよ。……というか私、厳密に言うと“栄吊常”じゃないしね」
えっ?
「こんなキチガイな訳ないよ、流石に。でも仮説は大体正解」
えっと……。
「肉体が滅んでも精神は力の強さによってそこそこ存在を保つ。元々歪んでた栄吊常は、生前からかなりの量を力を持ってたんだろうね。死んでも結構な間消滅せずに適当に辺りを漂っていた」
「そこで偶然なのか引き寄せられたのか、ともかく出会ったのが睦月汐里。膨大な力。その中に飛び込んだ精神は、無意識に自分の形を求めた」
「だから適当に作ってあげたは良いんだけど、消えかけの精神じゃ実体化しても人みたいに動くには至らない。“栄吊常”はもう死にかけだったんだよ」
「なので、再現した。精神の中に記憶の情報はある。能力の情報もある。設計図はあるんだから、その通りに作ればいい。……そうして完成したのが出会ったばかりの頃の常。この時点で汐里の力、いや汐里の影響を受けて若干生前とは性格が変わってる。プロトタイプ、試作型と名付けましょう」
「で、しばらく好きにさせてたは良いんだけど、そしたら一回問題起こしちゃってね。あなたは全く覚えていないはずだけど。うーん、熱いちゅーでした」
え、ちゅ……ちゅー?
「そんなわけで再び改良改良。ここまではこっちもオートでやってたんだけど、そのままじゃまずいって事で直接手を加えました。……直接手を加えたというか、今も加えているというか。つまりは、オートから若干セミオートに切り替えました」
「制御しなきゃいけないなら、まぁ私が直接動かした方がいいかなと。それが一番安心だしね。キャラを動かすのはいつもやってるから簡単にできるしね」
…………じゃあ、あなたは……
「ん。わかった?なら一つ目の種明かしね」
声の様子が変わる。変わっていく。
知ってるけど知らない声。
もっとも聞いているはずだけど、知らない声。
それは————
「思ってる事がわかるも何も、私はあなただよ。栄吊常のふりをした、あなたが忘れたあなた」
————自分の、声。
————————————。




