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リコちゃんと話をしてわかったことはあまりにも当たり前のことだった。彼女が感じた違和感というのは【価値観の不自然な一致】についてだった。彼女曰く、「30人以上の人間が同じ画用紙の同じ場所に同じ絵を同じ色で描いたことが気持ち悪い」ということだった。しかしそれはあまりにも...あまりにも当たり前な現象だと思った。そもそも自分の価値観をしっかりと持つことが出来るのはいつ頃からなのだろう。現在20歳の私ですら周りの価値観に影響されるというのに、それを子供に、ましてや小学生に求めるのは無理な話ではないのだろうか。それに「同じ絵を同じ色」と言っても、それは【太陽の絵】に限った話であるのだから、仕方ないことだと私は思う。
そんなことを考えても彼女は今はもう私の隣には居ない。10分くらい前に私達は離れたのだ。私は今、自分の家から割と近い商店街に来ている。今日の夕飯の材料の買い出しである。今晩は肉じゃがにしようかな...。夕暮れ時の商店街はとても懐かしい匂いに包まれていた。ていうか実際に臭っていた。お肉屋さんのコロッケの臭いだった。「よし、今晩はコロッケにしよう。」そう思いお肉屋さんに足を向けるまさにその時、私は呼び止められた。
「あれ?マジメちゃんじゃないか~」という懐かしい声で。
私のことをそう呼ぶ人はおそらく彼だけだろう。【胡散臭い】とか【怪しい】とかを当てはめるのではなく、ただ一文字【不】という言葉を最初に当てはめたくなる人物。
私は彼を見る。彼を観る。彼を視る。
「やめてくれないか、そんなにじろじろ見るのは、さすがの僕も照れちゃうじゃないか。」
25歳の彼はそう言った。左手にコロッケの袋、右手にコロッケの単体を持って、彼は確かにそう言った。




