09
「やあ、こうして会うのは久しぶりだね。」
そう言って【それ】は、人としてこの世に存在していない【それ】は、さっきまで私の影に居た【それ】は、私の目の前で、笑っていた。
時刻は20:00
「さて、答えを聞かせて貰おうか。時間はたっぷり有ったんだ。良い返事とはいかないまでも、しっかりとyesかnoかを答えてくれるんだろ?」
そう言って【それ】はまた笑う。とても不気味に、とても不意に。
「その前に確認しときたいんだけど」そう言った私の声はうわずっていた。私は緊張をしていた。私の影に、私の嘘に、私の【それ】に。
「あなたの存在とか、約束の内容のとか...」
そんなことを聞かれた【それ】は首をかしげた。不思議そうに、首をかしげた。
「また、同じことを話すのかい?1年前と同じことを、同じように話すのかい?」
「うん、ほら私達【人間】が感じる1年はとても長い時間なの、だから約束の内容に勘違いが生じない様にするために、ね。」
「なるほど、そしてそのついでに、僕の存在も確認したいと?」
私は緊張している。全部を見透かしているはずの【それ】の目に。【それ】の存在そのものに。
「まあ、いいよ。確かに時間が経ちすぎた。1年はさすがに長すぎた。それのせいで約束の内容が変わってしまったら不本意だし、これを機会に僕らのことを覚えてくれたら、僕はとてもうれしいよ。」
そう言って【それ】は、飛び上がる。机の上に着地する。まるでそこが舞台の様に。まるで【それ】が主役の舞台の様に。
「僕らは【虚住者】だ。君達人間の影に住み、君達人間の嘘を喰らう。決して表には出ず、決して悟られず、決して知られないはずの存在だ。」
そう言って【それ】は、また不気味に笑っていた。




