ある監督の楽しみ
『上手くいかない時、そんな時あんたならどうする?』
配点・修理費用
暗室の中、根を張るかのように、暗く蠢く触手が複数の機械に張り付きその中心に鋭い牙が並んだ怪物が低く呻いた
「3カメ、シーン22のカット120、5カメ、シーン24ローアングルからのアップで彼女中心、天井カメ、シーン26取り替えのスロー合わせて6秒フラッシュバックで逮捕、護送をコミカルに中抜きその後に貼ッ付けちゃって」
監督自らが指示して全触手の感覚器をキャメラ(写神具)に繋ぎシーンの切り出しを一気に処理している。
初めて見た人間が見れば卒倒ものだろうが、仕事の疲労とこの街の日常に既に感覚は擦り切れていた
自分は指示された通りにフィルム(伝詞)を操作し監督に見せる
「…ん、出来たかな……テンポが悪いなフラッシュバック4秒に縮めて、護送は通常に戻して、これが終われば提出かな」
監督に言われ終わりが見えた事に喜びながら
自分の別撮りしたフィルムを思い出す
監督の携帯を鳴らし声を写す
[監督ゥ〜ちょっぴり愉しい愉悦MAXのフィルム見たいですか〜]
監督はメモに頭を悩ませながら
「なんだぁ、今度はどんなロクでも無いもん撮ってきたんだ?」
そんな疲れ気味の監督の乗りの良さに喜びながら声を写す
[後デェ〜食事に行きません〜か?監督!]
数分後鋭い歯を剥きだしながら広告の写真にそのフィルムが使われ
それなりの短編ヒット作となった
「いいもん見たぜぇ殺られ役、まさかそんな事にもサガ使ってたとはなぁラストの締めに使うか悩ましいだがなぁ……そうか、そんなに嫌かぁ…そこまで言われちゃ仕方ない10本ロハな…ふざけんな売り込むぞ…分かりゃ良いんだ、じゃ」