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ある役者のサガ

『刺されるのと刺されたフリ、辛いのはどちら?』

配点.出血量

2011/1/1

記念すべき祝日だ、こんな日は仕事なんて辞めて

家族と一緒に過ごすものだ、自分には居ないが…

まあ、そんな平和で貴重な1日である筈なのに何故

現実から遊離してるかの様に独り言を話しているかと言えば

それ以外にする事が無いからだ

要するに死んだのである

何処にでも有る様な路地裏、日常の喧騒から遠ざかり暗がりのなか

普段と異なる静けさに猫すら身じろいでいる

薄暗い路地裏、1人の死を中心として様々な人が集まっている、カタギに見えない人、親友、恋人、影の薄い人、濃い人、その他野次馬、皆一様に呆然としている


「そんな、どうして…」

今日は茶色のウェーブのかかる髪を振り乱し

集団の壁を押しのけ彼女が私(死体)を抱き上げる

映画のワンシーンの様に小雨が涙の様に降り始めるなか、

慎ましいながらもハッキリとラインの出た胸が私(死体)に当たっている

感覚がないのを悔やみながらも寝転がり

パンツを眺めながらどうしてまたこうなったのか思い出していた。


今は泣く子すら演技と謳われる演劇街都・上海、

この街は全てが舞台であり役者でありセットである。多くの脚本家、演出家、役者の日常すら撮影中の作品で作品の世界が常に作られている

街の作品は各国の都市に配給され世界中に観られ楽しましている

私もその役者の1人であり、主役を張ったことは無いが無名な訳ではない

ある一部で知られている程度の者だ

今日はデートの約束が午前11:00にあるからこそ張り切ってお気に入りの衣装に着替え、直前までデートプランや大事な台詞を練習し、ラストを飾る花束とプレゼントを黒の鞄に隠し今日は絶対に失敗しないと心に刻み付け、待ち合わせ場所に向かう。


息を切らし、汗を軽く流しながら走る

待ち合わせの公園の周囲は仕事休みのランチをする人や初々しく会話する学生達、散歩をする老夫婦の微笑ましい姿が見られる

しかし、私は相手の彼女を探し回り焦っていた、既に約束から30分ほど過ぎている

まるで主人を見失った子犬の様にデートの失敗と彼女の噂に危惧しながらも

探し回っていると

公園の木の上から子猫を抱えた彼女が降りてきた


「ごめんなさい、子猫が木から降りられなくなったみたいだから助けてたの」

私は彼女の天然さと木登りで汚れたらしい服装に苦笑いしながら


「良いさ、僕が間違えたかと思ったよ無事で何よりそれより服が汚れている、何処かで買い物でもしようか!」

ぎこちなく、それでいて青臭い笑みでデートに向かう何とかなる

そこまでは良かった


何故か彼女が道を間違え見失い、持っていた鞄が何処かで銃火器とハイになるビタミン剤に中身が入れ替わり、密売人と警察に間違えられ追いかけられ、危ないアッチの人が薬を奪還しに銃撃戦になるとは…

私は普段と違い奇跡的に無傷で銃撃戦の大通りから路地裏に逃げ込んだ

今回はまだ無傷だ、まだやり直せる、まだ青春モノに修正が出来るはずだ

そのためにもはぐれた彼女を見つけ出さなければ…

自身のサガを恨みながらも落ち着こうと奥の路地裏に曲がると彼女がいた


「こんな所に居たんだ、探したよハn

声を掛け、肩に手を置く、彼女の前にゴリラの様なチンピラとネズミ顏のチンピラに銃とナイフを突きつけられて居るのに気付かずに…

暗転と共に訪れる衝撃と止めの死に、私はまた自分のサガから逃げれなかったことを呪った



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