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白夜になくとき  作者: カオル
ナナ
3/3

失心

いつもと、変わらない日々が続いていた。


俺は、BARzeroで相変わらず働いてマサにからかわられていた。


今日も、俺の事情も知った上の常連客に口説かれていた。


「涼ちゃん、今日ヒマ?」


有閑マダムと言う奴だ。


「お客様、今日はちょっと。」


「いつも、ちょっとじゃない。」


マサが乱入してくる。


「奥様、俺ならいつでもお付き合いしますよ。」


あんなに言ってないとでも言う様に、睨みつける客。


笑いそうになる。


そんな時、店のドアがけたたましく開き。


ナナの店の黒服が、息を切らして入って来た。


店が、一瞬騒ついた。


「涼さん、ナナさんが。」


マサが、ここではと黒服を休憩室に連れて行く。


オーナージンさんが、裏に行けと俺に合図する。


俺は、有閑マダムに失礼しますと会釈し裏に下がった。


休憩室に入ると、血相を変えた黒服が


「うちのオーナーが、涼さんに知らせに行けってナナさんが奴らに無理矢理車に乗せられて連れて行かれた。」


奴ら、容易に想像がついた。噂になってた奴らだ。


「マサ、奴らは何処にいる?」


「涼、マズイよ。」


「俺が行かなきゃ誰が行くんだよ。」


俺は、マサの胸ぐらを掴んだ。


「確か、サニーマンションの最上階の部屋だよ。」


俺は、店を飛び出した。


マサが、俺の名前を叫んでるのが聞こえたけど振り返らなかった。


サニーマンション最上階、セキュリティーのしっかりした高級マンション。


オートロックで中に入れない。いくら、呼び出しを押しても反応さえしやしない。


どうにも出来ない自分に、腹が立って仕方なかった。


そこに、常連客の有閑マダムがやって来た。


「涼ちゃん。」


「マダム。」


仕方ないわねとも、言わんばかりの笑顔で


「考えなしに動いてもダメな物はダメなものよ。」


俺は、何も言えなかった。


「私に任せなさい。」


えっ?


マダムが、オートロックの呼び出しを押して


「松坂よ。バカ息子に、松坂の叔母が来たと伝えなさい。」


オートロックが空いた。


「涼ちゃん、行くわよ。」


エレベーターの中で、マダムは重たい口を開く様に話してくれた。


ナナを拉致した男は、マダムの兄弟組織の息子。

マダムは、そう言う関係の人間だった。

噂には、聞いていたがここまでとは思ってもみなかったと


マダムには、息子が居なく小さい頃はその子を可愛がったんだと


こんな、曲がった男になるなんてとため息をついた。


「涼ちゃん、だけど私が出来るのは、あんたをあいつの前に連れて行く事だけよ。素人が、私達みたいな人間に盾突くのよ。スジとうせなきゃ彼女は取り返せないわよ。」


俺は、頷いた。


エレベーターの扉が開くと、もう下っぱらしき男が顔が見えない程頭を下げて待っていた。


「お待ちしていました。若がお待ちです。こちらへ。」


部屋に案内されて、中に入ると甘ったるい匂いが充満している。


マダムの顔が歪む


「窓開けな、あたしゃこの匂いが大っ嫌いなんだよ。」


薬の匂い。


「寒いですよー。叔母さん。」


呂律の回ってない男が、マダムに近ずいて来た。


「ケンジ、久しぶりだね。まー三下以下の男に成り下がったね。」


男の名は、ケンジと言うらしい。


「そんなー、叔母さんキツイなぁー遊びだよ。遊び。ところで、今日は何の用?ツバメちゃん見せに来たの?」


バカに仕切ってる物いいに、俺は我慢ならなかった。


「あたしの知り合いが、お前に用が有るから案内したんだよ。BARzeroの涼だよ。知ってるだろ。」


「オカマの涼だろ。女にチヤホヤされてる。」


俺は、ケンジの胸ぐらを鷲掴みにしていた。


「ナナを返せ。」


ケンジの下っぱが、俺を囲んでいた。


「知らないよ。ナナって誰だよ。」


ヘラヘラと、笑って答えるケンジ。


俺は、ケンジを殴った。ケンジは、数メートル飛んだ。


下っぱが、ケンジに駆け寄る。俺には、ナイフが突き立てられていた。


「殴ったなぁー。オカマの癖に殴ったなぁー。殺せ殺せ殺せ。」


「ナナを返せ。お前殺しても取り返す。」


「見苦しい。」


マダムから、喝が入った。


「ケンジ、お前男じゃないねー。情けない。けど、身内だからね。」


深くため息をついて


「涼、こっちに有るものを返せと言うなら代わりに何か落とし前付ける事は出来るのかい?」


男は、自分に突き立てられていたナイフを奪い。自分の左手を突き刺した。ナイフは見事に手のひらを突き抜け血が床に滴る。


「俺の左手だよ。なんなら、ここに置いて行こうか?ナナを返さないなら、次はケンジの

首にこのナイフが着き通るまで。」


マダムが、満面の笑みを浮かべる。


「ナナとやらを、返しな。いいねケンジ、次はお前の首だとよ。」


下っぱが、ナナを連れてきた。青白い顔、グッタリした体意識が無い。俺は、ナイフを抜きケンジに目掛けて投げた。ナイフは、丁度ケンジが転がってる床に突き刺さる。


ボタボタと落ちる血に構わずナナを抱き上げる。


「ケンジ、玉の無い女に負けるなんて終わりだよ。お前の代になるようなら、盃返すわね。」


「涼ちゃん、かえりましょ。」


俺は、マダムの後に着いて外に出た。ナナを抱きしめて


マダムの計らいで、内密に出来る医者に向かった。


ナナの意識が戻らない。薬を大量に使われたらしい。このまま、意識が戻らないかもしれないと医者に言われた。


俺の左手は、傷は残るが問題は無いと言われた。


「ナナ。」


俺は、ナナの手を握りしめていた。


もし、ナナが居なくなったら俺は1人になってしまうよ。


俺に、もう一度笑ってくれ。


夜が明ける頃、ナナの指が少し動いた。


ゆっくりと、開くマブタ


「ナナ?」







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