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白夜になくとき  作者: カオル
ナナ
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ナナ

「涼〜、りょう?りょうー!」


俺の体を、優しく揺する手。ナナの

手だ。俺は、夢の中なのかハッキリしないままその手を引き寄せナナの体を抱き寄せる。


ナナは、抵抗もせず抱き締められる。そして、俺の耳元でつぶやく。


「涼、ごめんなさい。」


「何が?」


「昨日、迷惑かけたでしょ?ごめんなさい。」


「ナナだから、いい。」


「涼、ありがとう。」


「ナナは、謝ることしてないよ。」


俺とナナの関係?不思議だよね(笑)


あれは、3年前の冬だった。俺とナナ、18歳の時


ナナは、今のクラブに入ったばかりのホステスだった。


俺は、行く当てもなくこの街のゴミ箱に埋もれていた。


そんな俺を拾ったのがナナだった。


「名前は?」


その時の俺は、世界全てが否定だった。


世間、大人、時間生きている全てのものが全て!


そんな俺に手を上したのがナナだったんだ。


捨てられ野良犬以下だった俺は、ナナの差し出した手を払いのけていた。


悲しそうに立ち去るナナを睨みつけてさえ居た。


でも、ナナはそんな俺を何日も一緒に行こうと手を差し伸べ続けてくれた。


いつか、野良犬だった俺もナナが現れるのを待つ様になっていた。


俺の人生の中で笑ってくれた人間だったんだ。


おれは、ある日ナナの手を取った。


まだ、売れてもないホステスだったナナの家は小さなアパートだった。


2人入るのがいっぱいなユニットバスに入れられた。


人前にさらす初めての裸の自分だった。


「女の子なんだね。男の子かと思った。」


ナナは、汚れきった俺をすみ積みまで洗ってくれた。


「男でも、女でも無い。」


「そうなんだ。行く所無いなら、ここに居ていいからね。」


そして、自分の小さな布団に入れ捨て犬を安心させるかの様に抱きしめて寝てくれた。


その時の俺は、そんなナナが不思議で仕方なかった。


俺が生きて来た世界と違い過ぎたから…


それからは、ずっとナナと居る。落ち着いて、ナナの紹介でBARzeroで働き始めた。


オーナーのジンさんは、この辺りの飲み屋の相談役的存在で俺の事情も新しいタイプだと笑った。


だから、今がある。




「ナナ、お腹空いたよ。」


俺の胸の中で、ナナがクスクス笑う。


「涼、さつきからお腹グーグー言ってるもん。心臓の音より大きい音だよ。」


「お腹空いたよ〜。」


俺は、ただこねる様に言いながらナナを抱きしめる。


「分かったから、今作るから」


ナナが俺の腕の中から、立ち上がる。


薄いナイトガウンから浮き出る女らしい曲線

マショマロの様に柔らかそうな胸。


俺には、全て無い物


細くスレンダーな手足、ほぼ無い胸女と言うより男に近い体。


ただ無いのは、男に有るものがが無いだけ


多分、俺が上半身裸でも女と思われないと思う。


ナナの様な女らしくなりたいと思った事も無いが男らしくなりたいとも思った事も無い。


ただ、今の俺が自然な自分なだけ


ここまで来るには、かなり辛い時代もあった。


それは、また今度話そう。


今は、美し過ぎるビーナスが美味しいご飯を作っている姿を見ていたい。


綺麗な物は好きだよ。


ナナは、綺麗だ容姿も心も


だから、ホステスと言う仕事で傷付くことも多いい。


男にも、傷付けられて生きて来た。


「涼、出来たよ。起きて」


「嫌だ。ナナが、食べさせて」


俺は、ナナに甘える。この家での俺の役割だ。


ナナは、満面の笑みで俺に微笑む。仕方ないなぁーと言わんばかりにだが、ナナはそんな時に幸せを感じている。


俺とナナとの、生活の暗黙のルール。


「ナナ、最近へんな男に絡まれてるんだって?」


ビックリした顔をするナナ。でも、それは一瞬てすぐに表情がこわばる。


「いつもの事だよ。」


そうは言ったが、そうじゃないって事がすぐに分かった。


俺の側から、離れるナナを引き戻し抱きしめる。


「俺が守るから。」


黙ったままのナナ。相当、ヤバイ事が分かる。


「ジム行って、店行くわぁ。」


俺は、いつもの様にスウェットに着替えて家を出た。




今までも欠かさずしていた事が、体を動かす事。


店の常連客だった、ボクシングジムのオーナーに誘われてこの所はボクシングをしている。


俺のしょうには合ってる。


ひとりで出来るからね。


レベル的には、女子オリンピックに出れるとか言われてるけど全く興味が無い。


ただ、無心に体を動かすと何も考えなくて良いから好きなだけ


3時間ほど、体を動かして店に出勤した。


「涼、ナナちゃん大丈夫かぁ。」


マサが、早速声を掛けて来た。


「おはよう。まぁ、いつものこと。」


「お前とナナちゃんって、Hするの?」


また始まったよ。俺は、マサにファイティングポーズを取る。


焦った顔のマサ。


「嘘です。冗談です。」


「仕事をしろ。」


笑いのあるいい店だ。


「ナナちゃん、ヤバイ奴な絡まれてるぞ。」


マサの顔が、マジになってる。マサは、情報ではピカイチだ。角の猫が、仔猫を産んだんだよって事から本当にヤバイ情報まで把握している。ちょっとした、情報屋だ。


「ヤバイってどの位?」


「Sクラスだな。ヤツは、ヤバイよ。組のボンボンなんだけど、人殺るのも平気な面してて実際幾つもオヤジがもみ消してるらしい。跡目には出来ない位、イカれてるよ。気に入った女は、手に入れなきゃ気がすまないが飽きるとどうなるか?あいつに気に入られて、この街で2度姿を見た女は居ないんだよね。ちょっと、七不思議化してるんだ。」



ずいぶん、ヤバイ奴そうだな。











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