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6

 三人はご飯を食べた時の様に座り、ヤンとフランが買ってきたジュースをコップに注ぎ、テーブルに置いた。


「さて、灯華から聞いた話をそのまま言うよ」


 灯華から聞いたまま二人話すと、二人は唖然とした。


「マジで?」

「本当に?ウソでもないんだよね。灯ちゃんが言っている事だし」

「あ~二人がそう言うのも判る。けど、これは現実なんだよ」


 俊一の言葉に二人はそれぞれの考えを口にした。


「けど、なんでタクトでそんな実験を?一世紀前なまだしも今なら宇宙でもできるよね?」

「そ。しかも政府や軍内部でも混乱起こっているし、報道規制やら脱出船を打ち落としている。何かあるけど……」


 三人は考え込んでいたが、フランは一つ思い出した。


「なぁ、灯華ちゃんが持っていたカード。あれの事は聞いたの?」

「泣き終わりぐらいにね。色々判ったよ」


 ジャージのポケットからカードを出してテーブルに置き、カードを撫でるとホログラムが映し出された。


「うわぁ!なにこれ?」

「超薄型のホログラフィー機。しかもパスワード付き」


 ヤンの問いにフランが答えた。


「パスワードは解けたの?」

「あぁ、音声は灯華だった。お父さんに言われた暗証番号を言ったら開いた。今は見られる状況にしてある」

「中身はなに?」


 ヤンが乗り出してホログラムを見た。


「まぁ、慌てない。よく見ていてよ」


 カードを数回撫でると、ホログラムに映し出されていた画像が変わり、一つの二重らせん状の図が映し出された。


「なんだ?これ?」


 フランが不思議そうに見ているとヤンが答えた。


「この二重らせん……DNAの立体構造!」

「正解。さすが生物工学の生徒」

「これは基本だよ」


 俊一の言葉にヤンはブイと指を立てた。


「流石にこれが何か分からないよな?」

「うん。これで終わりではないよね?」

「まぁ見てて」


 カードを一回押すと画像はアニメーションへと変わった。

 二重らせんの一部と外から入ってきた一つのらせんと合わさった瞬間、二重らせんは赤くなり『DANGER』と『Risk.FOUR』と出ていた。


 次に、何かの塩基配列図と英文での説明が出ていた。


「これはどう思う?」

「……ヤン。そのDNAは判らないけど、この英文は大体理解出来た」

「そっか、フーちゃんも英語は判るもんね。俊ちゃん、これは本当なんだよね?」


 二人が振り向くと、俊一は頷いた。


「うん。灯華の説明とこの英文を見て納得した」

「……確かにこれは学生の私でも衝撃だよ」

「灯華の説明だと、この病原菌は元々自然界にある無害なバクテリアの一種らしい。ただその新型爆弾に積まれていた細菌の影響で突然変異、かなり強力な悪性の病原菌に変異するらしい。更にはアルト独自の菌も含まれている。その説明がこの英文だって。感染から発症までおよそ四日から六日。症状は嘔吐・高熱の発熱・頭痛・悪寒が初期段階で、その後は吐血や内臓などの臓器の機能低下・免疫低下など色々と引き起こして死亡。ワクチンや一時的な血清などを投与しない限り、死亡率60~90%と非常に高い感染症との事だ」

「ひどいな……しかも危険度はレベル4?ヤン、このレベルは……」

「感染症では一番の危険な分類だよ。エボラウィルスや天然痘ウィルスなどと同じ分類……ワクチンとかはないの?」

「灯華のお父さんが事前にこの事を予期して、一時的ではあるけど抗体ワクチンを開発したらしいが、圧倒的に数量が足りず完璧な抗体ワクチンを作るにはアルトでの精製が必要らしい」

「タクトでの精製は駄目なんか?」


 フランの言葉に、ヤンが呟いた。


「その英文、ローマ字で『カイブ』って書いてない??」


 俊一とフランは英文を見ると、何回かローマ字で記載されている事に気付き、頷いた。


「カイブっていうのが、元々アルトが火星と呼ばれていた頃からある独自の菌で特に害は無くて、今も空気中や土中にもある特有の菌だよ」

「そうか!だから不時着船に病原菌のサンプル、それを一時的に抑える抗体のワクチンを積んでいたのか!アルトでカイブを使用して完全ワクチンを精製するために!」


 俊一とヤンの話に今まで考えていたフランが思いついたように言った。


「う~!!そんなことがあったなんて……」

「これは俺らだけで動くのはキツイ」


 ヤンは頭を抱え、フランは深く溜息をついたが、俊一は一つの考えを言った。


「確かに俺ら大学生にはキツイ話だけど……出来る事はある。大学にミッドという名の先生がいるのを知っている?」

「ん?ミッド?誰だ?」

「ミッドって……もしかしてミッド・ルーシェ教授?」

「そう。フランは知らないのか?」

「知らないなぁ」


 首を横に振るフランにヤンが説明した。


「ミッド・ルーシェ教授は、グラド大学内の変人として有名なんだよね」

「変人?」


 フランは首を傾げると、ヤンは苦笑いしながら続けた。


「まず、あの人の研究内容が不明なのと……滅多に院生を取らないの。今は居るのは院生が二人いるだけって聞いているし、しかも講義も難しくて履修している人見たことないなぁ~」

「ヤンは取らないの?」

「うん。大半が部活中だし……前にフーちゃんに話したよ」

「記憶ない……」

「バカ」


 二人の会話に俊一は溜め息をつきながらカードを叩いた。


「はぁ~……次にこの写真を見て」


 ホログラムに出てきたのは、白衣を着た人達の集合写真であり、大半は男性であったが、三名程女性がまじっていた。


「ほら、この白衣のポケットに手を入れてタバコを吸っている人」

「うん?」


 二人が写真をマジマジと見ていると、ヤンが驚いた。


「あっ、これミッド教授!」

「正解。どの人か判らないけど灯華の父親もいる。そして教授の隣にいるロングヘアーの人が灯華の母親だって」

「マジで!」

「確かに……この女性、綺麗な赤髪だし何処となく灯ちゃんに似ている……」

「灯華の両親と教授は知り合いなんだよ。これを見過ごす訳には行かない」

「いい手掛かりだけど……明日は休日だよ?」

「そうなんだよ。休みが明けるまで待つか……」


 手掛かりを掴んだが、会えるか分からずに二人が唸っていると、ヤンが笑いながら言った。


「あ~その点なら大丈夫。ミッド教授は研究所に必ずいるから」

「えっ?どうして?」


 俊一が聞くとヤンが言った。


「大学の校舎から離れた場所に、研究所兼自宅みたいな建物があるから必ずあの教授ならいるよ」


 俊一とフランは顔を見合わせた。


「よし!明日、大学に行こう!二人ともいい?」

「もちろん!」

「私もOKだよ!行くなら午後からが一番いいかもね」


 頷きながら、寝室を覗くとベッドで灯華はグッスリと寝ていた。


「明日からの準備とこれからの事を話し合っておくか」


 三人は朝方まで準備と話し合いを続けた。

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