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大学から家までの間には、いくつかの造林が多く見られた。これは自然保護の為、政府が進んで行っている行政の一つだ。
時刻は夕方で日も落ちかけていたが、夕陽で目を細めていた。
「眩しいなぁ……」
そう呟き、対向車から反射された夕陽に目を更に細めていると道路横にあった造林から人が飛び出してきた。
「!!」
俊一はエアカーのブレーキを思いっきり踏み、なんとか当たるギリギリで止まった。
「あっぶね~!!!いきなりなんだよ!!」
エアカーを降りて前へ駆け寄ると、飛び出してきた人は道路にうつ伏せに倒れており、俊一は内心あせっていた。
「当たったのか!!大丈夫ですか!!」
声をかけながら駆け寄り、うつ伏せに倒れている人を起こしみるとそれは少女だった。
「えっ、女の子?しかもなんだ、この服」
少女が着ていたのは、病院に入院する時に着る入院服のようなものだった。
「と・取りあえず、移動しないと……」
少女を抱きかかえるとエアカーの助席に乗せて、俊一は急いで運転席に戻りエアカーを路肩に寄せた。
「前はヘコんでいないから……衝突は免れたか……行き倒れか?取りあえず近くの病院に……」
そう思い車内に取り付けられたカーナビを操作していると、助席にいる少女は苦しそうに呻き声を上げた。
「うっ……いや……来ないで……助けて……」
「な・なんだ!」
俊一は驚き、少女に呼びかけた。
「おい!どうした!大丈夫か!」
少女の肩を軽く揺さぶると固く閉じていた目が薄らと開くと辺りを見渡した。
「こ・ここは……どこ?」
「エアカーの中だよ。君はいきなり道路に飛び出てきたんだよ?どこか怪我してないかい?病院行こうか?」
「病院…嫌だ……病院嫌だ!……助けて!!」
少女は涙を流しながら両手で頭を押さえ取り乱した。
その様子を見た俊一は、慌てて頭を押さえている両手の腕を掴んで言った。
「わ・判った!判ったから!病院には行かない!いいね?大丈夫だから。ね」
「……ほんと?」
「あぁ、本当だよ。病院には行かない」
その言葉に安心したのか少女は落ち着き、眠るように目を閉じて涙を流した。
「ふぅ……落ち着いたか。どうしたものか……」
俊一は、少女にシートベルトをさせながらもう一度を見た。
「ん~どこからか逃げて来たのか……にしても長い髪だなぁ。しかも赤い……ん?どこかで見たような……」
汚れた髪や顔を見ながら思い出せないまま、俊一はエアカーを発進させた。
俊一は約束した通り病院に行かずに悩んだ結果、自宅に運んだ。
少女を背負いなんとか自宅に入り、取りあえず寝室のベッドに寝せて布団を掛けると、俊一はリビングのソファに座った。
寝室とリビングは繋がっており、二つの部屋を区切るのは三枚の襖で閉じられるが、今は三枚とも右側にあった。
そして、リビングにはカーペットが敷かれており、玄関側にはダイニングキッチンがある。
ソファからベッドを見ると、少女は静かな寝息をたてて寝ていた。
「流石に汚れた服を脱がすのもマズイし……さて、どうしたものか……」
ベッドで寝ている少女を眺めながら呟くとソファの前にあるTVをつけた。
TVでは、未だに不時着船の特番をしておりチャンネルを変えても同じ事を放送していたが、ある番組では動画サイトの事を司会者が紹介していた。
その番組は、報道番組で大体の主婦層が見ている番組であり、司会者は動画サイトで流れた映像の事を伝えていた。
『……現在では、削除されましたが、我が番組では削除された映像を手に入れました』
画面は司会者からその話題の動画が切り替わった。
「ん?この映像って……」
映像は、不時着船から出てきた少女のUPから始まったが、俊一はその映像に釘付けになった。
それはフランに見せて貰った映像であり、今ベッドで寝ている少女でもあった。
もう一度ベッドを見ると寝ている少女の寝顔は、TVで映っている少女と同じであった。
「……不時着船から出てきた少女……だよな」
俊一の頭は混乱してきた。
番組では、司会者に切り替わり説明をした。
『この映像を撮影した方から匿名で番組に送って頂きました。不時着船からの生存者の話は未だに政府からは発表はありませんでしたが……』
と司会者が出ていた画面は、急に『しばらくお待ちください』のテロップにテレビのスピーカーからはピーと電子音が流れた。
数秒後、画面は切り替わると司会者が一枚の紙を見ながら話した。
『え~、番組の途中、映像に乱れがあり失礼しました。先ほどの映像について政府からコメントが入りました。『この映像は、ねつ造した可能性が極めて高く、調査をしてから政府から改めて発表いたしますので、映像に惑わされないでください』との事です。番組でもこれ以上の放送は致しません。では次のニュースに移りますが……』
司会者は何事もなかったように番組を進めた。
すぐさま携帯を取ると、俊一は電話をかけた。
「……もしもし、フラン?もう部活始まった?」
『いいや。体育館の格技室が急に使えなくてなさぁ。今はヤンの家に来ている』
「タイミングが良かった。六チャンでやっている番組をネットから落とせる?」
『お~今テレビで見ていた!録画してパソコンに取り込んだよ』
「それメールで送れるサイズ?」
『ん~ちょっと待ってよ……いや、無理だわ。明日に大学で渡すよ』
俊一は、もう一度ベッド見てから答えた。
「あ~いや……口は堅いよな?」
『いきなりなんだよ。そりゃ当り前だ』
「……ヤンは?」
『おいおい、何言い始めているんだよ。ヤンも口は堅いぞ。お前だって知っているだろ?……本当にどうした?なにかあったか?』
「一時間……いや、二時間後に俺の家に来れるか?二人で」
『ちょっと待ってよ』
フランは、ヤンに聞いているみたいで、直ぐに返答が来た。
『行くってよ。なしたんだ?』
「今は言えない。来たら説明するし判ると思う。あっ、女性物の着替えとお米や卵とか病気の時に食べれる優しい物を持ってきてくれる?こんな事を頼める奴はお前達しかいないんだ」
『……判った。二時間後に行く』
「すまん」
電話を切るとソファに置き、俊一は溜息をついた。
「はぁ……俺だけでは無理だよ……」
そういうと、ソファから立ち上がり、寝室の襖を閉めた。