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 2210年、火星への移住した人類。

 

人類は最新技術を注ぎ込み、千年以上の歳月を要するテラフォーミングをわずか六百年で成功させた。

 

2815年に第一次入植船団が、3020年には第二次入植船団が火星に到着し、これを記念して火星を『アルト』・地球を『タクト』と名称を変え、アルトとタクトは星間宇宙航行路により結ばれていた。


 3120年6月、事件が起きた。


 ある日を境にタクトとアルトの間での交信が全て途絶え、タクトからの宇宙船もその日を境に一切なくなり、更にタクトへの調査に向うためアルトから飛び立った調査船団から最後の交信と共に途絶えた。


 それから数日後、アルトの山中に一隻の宇宙船が不時着し、船体は酷く破損していたらしい。

 その宇宙船は、交信が途絶えたタクトからの脱出船らしく、TVでは連日その話題で持ちきりだった。


『タクトからの不時着船に乗っていたとされる搭乗員は全員死亡との政府から公式発表があり……』


 朝のニュース番組の司会者は、表情を変えず淡々と毎日同じ事を繰り返し、家で見ていた男性は呟いた。


「俺には関係ない話だ」


 そう言い放つとTVを消して家を出た。


 アルトには大小合わせて無数の都市が存在し、ここはその内の一つで最大規模を誇る学園都市「バルク」である。

 男性が通っているのは、グラド大学というバルク内で、一際大きい大学であり、男性はそこの情報電子学科の三年生であった。


 男性の名は、南部なんぶ 俊一しゅんいち

 黒色の短髪で、現在は一人暮らしをしており、家から大学まではエアカーで通学していたが、日々の生活に退屈していた。


 家も一人暮らし様の四階建てマンションで、そこの最上階に住んでいた。

 エアカーで向かう途中に車内ラジオをつけると、どこのラジオ番組でも不時着船の話題で持ちきりだった。


「はぁ……もう何週間前の話を未だにしているんだが」


 俊一は、溜息を吐くと大学の駐車場が見えてきた。

 駐車場に入り、空いている場所に停め、降りると後ろから声がかかった。


「俊。おはよう」

「酒井とヒデユキかぁ。おはよう」


 声をかけたのは、俊一と同じ学科の酒井とヒデユキだった。二人もエアカーで通学していたので、同じタイミングで駐車場に着いていた。


 一緒に講義室に向かい、ヒデユキは朝からやっているニュースについて話をしていた。


「不時着船に乗っていた全員が死んだって、タクトで何があったのかね~」

「……俺らには関係ないよ」

「確かに。でもここ最近はこの話題で持ちきりだぞ?」

「興味なし。実害がある訳でもないし、逆に見たい番組が特番で中止していい迷惑だよ」


 俊一は顔の横で右手をヒラヒラと動かすと、二人は苦笑いをした。


「俊らしいな」


 そう話しながら講義室に入ると、いつもいるメンバー付近の席に座ると、周りも不時着船の話を始め、俊一は鞄からUSBほどの長方形の形をした物を出し、蓋をスライドさせると、机上にはキーボードと上方には画面を映した。


 それは、USB型のノートパソコンであった。

 キーボードを操作して講義資料を見ていると、前に座っていた学友で、茶髪の長め髪に蒼い瞳が印象的なフラン・ヤンバックが声をかけてきた。


「なぁなぁ!見たこの動画!」

「なんの動画だよ?」


 フランは同じUSB型のノートパソコンを見せた。

 それはTVニュースや音楽動画など色々と見れる動画サイトだった。


「んで、そこのサイトでなんかあるの?」

「まぁ見てみな」


 エンターキーを押すと、画面には朝に家で見たTVニュースの放送だった。


「……ここ最近やっているニュースじゃんか。もう見飽きた」

「いや~この先がすごいんだよ」


 動画が進むにつれ、ある所で画面は切り替わり、映し出された画面は揺れてどうやら隠れて撮影した映像だった。

 映像には不時着した船とそれを取り囲む防護服をきた人達が映され、船のハッチも開かれており、そこには簡易タラップが取り付けられていた。


 カメラは船を撮影したり、その周りに立てられた白いテントや防護服を着て何かを調べている人物達を撮影していたその時、映像は簡易タラップを取り付けたハッチを急にズームし、そこから出てくる人を映した。


 防護服の人に支えられながらある少女が映し出されていた。

 カメラはその少女の顔を映した。少女は赤色で長い髪、顔や宇宙服は煤だらけになり眼は虚ろで不時着時の衝撃が伺えた。


 簡易タラップを降りる少女を映していたが、急に動画は途切れて終わった。


「何これ?TVでは放送された?」


 俊一が聞くと、フランは首を横に振った。


「いいや。これをUPした人が隠し撮りしたやつで、不時着してニュースでやり始めた時に流れ始めた。しかもこの動画は削除されてサイトにはないんだよ」

「落したのか」

「そ!ちょうどサイトを見ていた時で、すぐ落とした。それから数時間後に削除されてね~。マジでラッキーだったよ。んで、データいる?」

「ん……一応もらうかなぁ」

「いつもの共有フォルダに入れておくぞ。パスは覚えているだろ?」

「もちろん」


 そう言うとフランは、パソコンを操作して共有フォルダを開いた。


「しかし、なんでこの映像を流さないのかね~」


 フランがそう言うと俊一は興味なさそうに言った。


「タクトとの交信が途絶えた後だから慎重になっているんでないの。まぁ俺には関係ないけどね」

「うわぁ、興味なしかよ」

「興味ない。だって俺らには関係なし話だ」

「まぁそうだな。俺らには関係ない話か」


 二人は笑いながら話していた。


「なに?なに?なんか面白い話?」


 そういうと話に割り込んで来たのは、酒井だった。


「酒井か。この動画を見ていたんだよ」

「えっ、どれどれ?」


 フランはもう一度見せると、酒井は笑いながら言った。


「うわっ、この子可愛いじゃない?なにドラマ?」

「いや、ドラマでなくて、動画サイトで流れた不時着船の動画」

「ふ~ん、けどTVでは見たことないよ」


 酒井の言葉に俊一は笑いながら言った。


「どうせ、作り物だよ。ネタ映像だろ」

「多分なぁ~」


 フランと俊一はまた笑いだすと、酒井も笑いながら言った。


「けど、マジこの子可愛いわぁ~。タイプだもん」

「……絶対、年下だぞ?」

「年下いいじゃん。なぁ俊」

「俺に振るな」


 二人の会話にツッコミを入れると、講義室に教授が入ってきた。

 それぞれ席に着くと、小声でフランが話しかけてきた。


「……俊、あの動画作りものではないぞ」

「どうして?確証は?」

「特撮や合成にある“映像のブレ”がないんだわ。しかもあの調査していた奴らの防護服。あれに政府のマークも入っている」

「……また調べたのか」


 フランの趣味はネットサーフィンだが、時々その趣味の範囲を超える時があったが、それは気分が乗った時と面白いと思った時だけだ。


「まぁ少しだけね」

「程々にしとけよ。厄介事はごめんだ」


 俊一の言葉に頷くと講義が始まり、二人の会話は終わった。

 その日の抗議は何事もなく終り、放課後になると皆はバラバラと帰って行く中、フランは俊一を引きとめた。


「俊!もう帰るのか?」

「ん?あぁ特に予定もないし」

「家まで送って~」

「……部活終わるまで待つのはイヤ」


 フランは空手部に所属しており、そこでは主将も務めている。


「ケチ。あっ部活に出ないで帰る手もあるか」

「……俺はアイツに殴られたくない」


 俊一は、スッとフランの後ろを指すとそこには、指をコキコキと鳴らしている女子がいた。


「あ~ら、フラン君。俊ちゃんに何を頼んでいるのかな?」

「え~と……どこから聞いていたのでしょうか……ヤン」

「初めから。もう一度聞いてみようかぁ」


 指を鳴らしながらフランに迫っているのは、ヤン・ミーフェイだった。

 ヤンは、グラド大学の生物工学科の三年生の同級生で、黒髪のセミロングに黒い瞳、今は獲物を狙うかのように目を細めていた。


「こ・これから部活行こうかなぁ~ってね。まさか帰るなんてしないよ」

「ふ~ん……いつも練習メニュープラス三セット追加か私の組み手相手、どっちがいい?」

「あ……お相手致します」


 フランは手で謝るポーズをしながら頭を下げた。


「仲がいいこと」


 俊一は苦笑いでその光景をみていると、ヤンは笑いながら言った。


「ごめんね、俊ちゃん。この馬鹿が変な事頼んで」

「いやいいよ。彼女に怯えているフランを見られたし」

「ヒド」


 フランとヤンは同じ空手部でありカップルでもあった。

 軽く話して二人と別れた俊一は、大学内の駐車場に向かいエアカーに乗ると音楽を掛け、すぐに発進した。


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