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強欲のイグナート  作者: 霧島樹


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第五十四話「相棒」

 


 コンマ一秒で『限界突破オーバードライブ』を掛けマッハで荒野を駆け抜ける。

 アニマの温存など知ったことか。

 相棒ハルバードの危機なのだ。

 取り返しがつかなくなってからでは遅いのだ。

 背後から俺を呼び止める声が聞こえるが気にしない。

 サクッと相棒ハルバードを取り戻してズバッと戻れば問題ないだろ。


「おぉおおぉおおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉ!!」


 俺の進行方向にいるスケルトンが次々と突進で打ち砕かれていく。

 誰も俺を止められやしない。

 一度は星になったかと思われた相棒ハルバードだが、このまま行けば猛烈な追い上げでなんとか着地点まで追跡することができそうだ。


 だがしかし、気になるのは黒馬にまたがった黒騎士の存在だ。

 相棒ハルバードを失った俺に対して襲ってくるならまだわかりやすいのだが、なんとこっちには一切興味を示さずひたすらに荒野を駆けているのだ。

 それも、俺と同じ方向に。

 凄まじいスピードで。


「おいおいおいおいまさかっ!」


 進行方向、相棒ハルバードが落ちるであろう予測地点の周囲には巨大な荒野蠕虫ウィルダネスワームが開けた穴が点在していた。

 スケルトンの大群を輸送して役割を終えたのか、荒野蠕虫ウィルダネスワームはもう存在しない。

 おそらく地下に潜ったのだろう。

 つまり、その巨大な穴は開けっ放しだ。

 今のままだったらその穴の少し手前に相棒ハルバードが落ちるだろうと予測されるのだが……。


「やめろぉおぉぉおぉおおぉおぉおおおぉおおぉおぉおぉぉぉおおぉおおぉおぉおぉぉお!!!!」


 俺は黒騎士の行動を予想して叫び声を上げた。

 だが俺の魂の叫びも虚しく、黒騎士は大剣を思い切り振りかぶり――


「うわあああぁああぁぁああぁああぁあああぁあぁ!!!?」


 ――相棒ハルバードを巨大な穴の中へダンクシュートした。


「~~~~~~っ!」


 もう言葉も出ない。

 俺は大剣を構える黒騎士に向かって走りながら全力の『ウィンド衝撃ショック』を放った。

 黒騎士は難なくそれを避けるが別にそんなことはどうでもいい。

 進行方向から退いてくれればそれでいいのだ。


 俺は今まで数多くの戦場を共に生き抜いてきた相棒ハルバードを助ける為に、そのまま巨大な穴の中へと飛び込んで行った。




「待ってろよ……相棒ハルバード……!」


 俺は風魔法を使って下方向へ加速しながら、巨大な穴の中を凄まじいスピードで落ちていく。

 このままいけばいくら思い切りダンクシュートされたとはいえ、相棒ハルバードに追いつけるはずだ。


「……おお!」


 視線の先にぐるぐると回転しながら落ちていく鈍色の無骨な相棒ハルバードを見つけた。

 今ほど暗闇の中でも目が見えることに感謝したことはない。

 すぐさま風魔法を駆使して相棒ハルバードの元へ飛び、その柄をキャッチする。

 そしてそのまますぐ刃先を穴の側面に突き立てた。

 ががががががが、としばらく岩の壁を削りながらなんとか止まることに成功。


「ふぅ……危なかった」


 この穴がどこまで続いているかはわからないが、底まで落ちたら相当な時間ロスになっていたはずだ。

 フィル、ディナス、スラシュの三人が黒騎士とスケルトンの大群に負けるとは思わないが、背後を守りながらという条件がついている以上、通常の戦いとは別だと思った方がいい。


 今すぐ戻らねば。

 そう思い風魔法を使って巨大穴を脱出しようとしたその時。

 地響きと共に上から大量のスケルトンが降ってきた。


「うおっ、邪魔だなぁおい!」


 咄嗟に『大気エアーウォール』で直撃を避ける。

 いや、別に硬化のアニマで体中覆ってるから痛くも痒くもないんだが、なんとなく。

 わざわざスケルトンに当たられたくないし。

 なんてことを考えていたら、いつの間にか大きくなっていた地響きがひときわ大きく鳴り響き、


「――おおおぉぉ!?」


 俺は突如として現れた更なる暗闇に壁ごと飲み込まれ、そのまま地下へと急速に落下していった。




 ◯




「ったく、どこだよここはっ」


 俺は洞窟の中で宙に火の玉を浮かばせ、辺りを照らしながら走っていた。


 あの後。


 ちょっとした混乱を経て荒野蠕虫ウィルダネスワームに壁ごと飲み込まれたことを悟った俺は、取り戻した相棒ハルバードを使って内側から腹を斬り開き脱出した。

 そこまではよかったのだが、どうやら辺りの地盤が緩かったようで荒野蠕虫ウィルダネスワームが暴れた瞬間周りの土が崩れ始め、気がついたらここ、地下の洞窟に落ちていたというわけだ。


 ……間が悪いったらありゃしねぇ。


 今は自分の方向感覚を信じてさっき俺が落ちてきた直下型の穴を目指して進んでいるが、もしこれで地上に繋がる穴に辿りつけなかったら力技でなんとかするしか方法はない。

 だがそうなると時間もアニマも相当に消費してしまうだろう。

 できればそれは避けたい。


「お……? ビンゴか!」


 何度か目の曲がり角、その先を進んだところに大きな空洞が見受けられた。


「よっしゃ、あとは飛んで帰るだ……け……?」


 喜び勇んで飛び込んだその先に待ち受けていたもの。

 それは。


「グジュル……グジュル……」


 巨大なタコの頭に、人型の胴体がついた全長五十メートルは超えるであろう怪物だった。







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