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第四話「ディアドル王国」

 身長約三メートル。正確にはわからない。

 驚くべきことに二歳から二歳半の間にはもう三メートルほどになっていたと思う。

 急激な成長だった。

 いや、もはや成長というより変異だった。

 そう表現するのが相応しいぐらいの変わりようだ。


 まず、特筆すべきが横への成長である。

 別に太ったというわけではない。

 単純に大きくなったのだ。主に肩幅が。

 具体的に言うと約二メートルぐらい。

 そうなると自然と身体の厚さも凄いことになっていて、胸板から背中までの厚さが大体一メートルぐらい。


 もはや人外である。


 手足なんかもサイズがとんでもないことになっていて、なんと片手のひらの中に成人男性の胴体がすっぽりと収まる。


 手に込める力を強くして良いのなら、ハンバーガーみたいな持ち方で成人男性三人はいける。


 ……中身がグロいことになりそうなので実際には出来なさそうだが。


 そんなわけで、デカくなり始めた当初は周囲にとても恐れられた。

 当初はというか、今も恐れられているかもしれない。


 ただ前に比べたら今はみんな大分慣れているのではないかと思う。

 半年前は遠巻きに眺めながらヒソヒソ話をされ、近くによると明らかに怯えられるという完全にバケモノ扱いだった。


 でも今は違う。

 挨拶をしたら返事が返ってくるし、近くに行っても怯えられることはない。


 剣術科の少年クラスにいたっては、俺をオーガやトロールなどの大きな人型モンスターに見立てて対戦するのが流行っているぐらいだ。


 ……あれ、どっちにしろバケモノ扱いなのか?


 まぁいい。


 身体が異常にデカくなり始めた頃は『このまま際限なく巨大化してしまうんじゃないか』と思い焦ったものだが、不幸中の幸いと言うべきか、半年前から身体の成長はほぼ止まっている。


 正直に言えば転生時に見たあの真紅の光に今の現状について文句のひとつも付けたいところだが……どこにいるかわからないからな。


 何回か夢の中で真紅の光を見た気がするので、もしかしたら俺の中に居たりするのかもしれないが、それはそれで目的がサッパリわからない。


 まぁそれはともかく、だ。


 そういった経緯をへて俺は三歳になり、しばらくしてから青年クラスへと移動することになった。


 通常、青年クラスへは身体が出来上がってくる十二歳前後で移るようだが、前回と同じく俺は特例ということで移動させてもらうことになった。

 もうどっからどう見ても少年じゃないし。


 それに、剣術の方が行き詰まっていたので早く実戦を経験したかったというのもある。

 現状を打開するなにかのヒントになるかもしれないからな。


 剣術を始めた最初の頃は『また通り魔に出会っても返り討ちに出来るレベル』を目指していたのだが、最近では強くなること自体が楽しくなってきた。


 ただ前より強くなったとは言っても、今のところはそのほとんどが体格の成長によるものなので素直には喜べないのだが……。


 話は戻って、青年クラスでは仕事場が大きな畑とその隣にある森となる。


 普段は森の入り口で木を切ったり、畑を管理して水をやったり害虫駆除や雑草取り、季節になったら収穫に種まきなど、まんま木こり&農家みたいなことをしている。


 ただ普通の木こりや農家と違うのは、たびたび森から出てくる魔物との戦闘があるということだ。


 明確な期間は決まってないようだが、頻度としては大体三日に一回ぐらいは団体さんで魔物が森から畑に向かって這い出てくるらしい。


 魔物が来る時は昼夜問わず来るそうなので畑には夜でも見張りが立っている。


 今までも幾度となく畑を荒らされていることから畑の収穫物目的だと考えられているが、人を襲って食べることもあるのでどちらにせよ油断は出来ないという。


 そんな魔物との戦闘シーンをちょうど青年クラスに入って初日に見学させてもらった。


 そして感想。


 魔物というかなんというか、完全に虫だった。


 全長五メートル以上ある巨大なダンゴ虫のような魔物に、同じく巨大なムカデのような魔物、人の頭並みにデカイ蚊のような魔物など、そんなのばっかりだった。


 あまりにもショッキングな光景だったので、青年クラスの指揮官(三十二歳男独身)に魔物とは何処の地域も虫型なのかと聞いてみたら、「虫型の魔物が出るのはここと北東の森だけだ」と言われた。


 実はここの畑の隣にある森より、その『北東の森』の方に虫型魔物が大量に湧くらしい。

 そして、この孤児院をこの国(ディアドル王国という)の軍が守ってくれないのも、そちらの『北東の森』へ戦力を回すので精一杯だからだそうだ。


 むしろ、十分に戦力として数えられる人材を孤児院からそちらの前線(北東の森)に送ったりしているらしいから、ある意味この孤児院はディアドル王国軍の養成施設みたいな役割をしていると言えるだろう。

 院長を筆頭として、やたら孤児院のスタッフに『元ディアドル王国軍』という肩書きの人が多いと思ったら、そういうことだったのだ。


 他にも必要知識として様々なことを教えられたが、そんなことよりも俺は早く実戦がしたかった。


 というわけで、青年クラスに来て日が浅い俺は本来まだまだ実戦に入ることは出来ないのだが、そこは指揮官に頼み込み、頼み込み、頼み込みまくり、最後には院長にお願いして、なんとか次の戦闘には参加させてもらう許可を得た。


 許可を得てから戦闘までの数日間はとても楽しみだった。

 少年クラスでは天才少年二人に対してずっと勝てなかった俺だが、魔物に対しては無双することが出来るような予感がしていたのだ。


 さぁ、とうとう、とうとう俺の活躍が始まる……!




 ――そして、実戦の時がやってきた。




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