数字の魔力
あ、まただ・・・
香奈恵は時計を見てため息をつく
朝の 8:15分
子供達を「いってらっしゃい」と送り
洗濯機をまわし
洗い物をすまし
自分のためにコーヒーを煎れ
ソファーに座って今日の予定を確かめようと
なんとなく
時計をみたら
朝の 8:15分。
いつからだろう・・・?
自分のことを一番愛してくれた元カレの誕生日と同じ
815という数字がやたら目につくようになったのは・・
元カレとはタイミングが合わなくて
別れてしまったけど・・
その後知り合った旦那と結婚し
二人の子供に恵まれ
自分たち家族を一生懸命大切にしてくれる
とっても真面目で優しい旦那と
自分に瓜二つの愛しい子供たち
元カレが恋しいと思うような要素なんて
今の香奈恵の人生にはない
でも・・・
必ず毎日・・・
朝の 8:15分
そして
夜の 8:15分
車の運転中たまたま信号待ちで
前の車のナンバーを見たら
815 ・・
牛肉を買ったら
値段が 815円 ・・
自分はどこかおかしいのだろうか?
815を見るたび
彼のことを思い出してしまう
どうしても・・
どうしても・・
でも、どうして・・?
その数字はまるで魔力があるかのように
香奈恵を縛って離さなかった ・・
まるで
数字に身体をがんじがらめにされているようで
でも、不思議と居心地が悪かったわけではなかった
そんな毎日を送っていたある日・・
ちょっと遠くにあるショッピングモールにある
最近開店したという評判の良いコーヒー豆店に足を伸ばした
「あれ?もしかして香奈恵??」
振り返ると昔の友人がいた
「久しぶり〜!久しぶり過ぎてなんか恥ずかしいね!ちょっとお茶しようよ!」
彼女は強引に香奈恵をスタバに連れ込み
昔香奈恵が愛飲していたキャラメルマキアートをこれまた勝手にオーダーした
彼女はこのショッピングモールの違う店舗で働いていて
旦那さんとの間にひとり息子がいて・・
働いていると学校のPTAがちょっと大変だけど・・
などなど
他愛もない世間話と近況報告に花が咲く・・
フト彼女が香奈恵の元カレの話をしだし
香奈恵はドキっと目を伏せる・・
「旦那がさー、仕事関係で付き合いがあってさー」
彼女は続ける
「だからあのニュースには本当に驚いたよ」
「ニュース?」
「え?香奈恵・・・もしかして・・しらないの?」
・・・??
訝しげな顔をしていると
彼女は続けた
「アイツ、亡くなったのよ・・」
香奈恵の頭は真っ白になった・・
「事故でね・・」
彼女のコトバが木霊のように反響する・・
「亡くなった・・・?」
香奈恵は全てが分かった気がした・・・
だからなのね・・
私に会いに来てくれてたのね・・・
その日の夜
8時15分
子供たちの声がリビングから聞こえる中
香奈恵は台所で隠れるように時計を握りしめ・・
一分間元カレのことを想いながら
ひとり 泣いた・・
ちょっと哀しいお話ですが、葉琉日は気に入っています^^;
数字ってある意味逃げられない魔力がありますよね
今日はとてもあたたかい日ですね
素敵な一日をお送り下さい
frm葉琉日
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